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トイレとガールズトークのススメ

 早朝にトイレ穴の最終仕上げをしているとなんか気が遠くなりそうで、へばる。

 この坂を勢いよく滑れば崖下転落死亡コース一直線だ。しかも沼に沈んでしまう。転落死は嫌だ。

 トイレ穴(未使用)から落ちて死亡なんて言われ続ける不名誉だけは断固受けたくない!

 でも、落下トラップは定番だよねー。

 足元トラップと頭上からのトラップとってね。

 注意力、集中力を向け続けるってこの世界の人にとってどこまでができて当たり前なんだろう?

 基本的な洞窟ルート作ってからサビ猫ちゃんに参考情報聞こう……やっぱり有料かなぁ。

 小麦ちゃんの食用粉買い上げてくれたら少しはマシだよね。品質悪いらしいけど。

 蔓を土壁に仕込んで蜘蛛の巣のような網もどきを張る。袋が一気に流れ落ちないようにの対策だ。

 袋自体ボロく脆いのですぐ破れていくこともあるが破れてしまうまではそこに留めるためだ。

 うまく固定できない。

 汗を拭うために顔を上げるとそこに生物がいた。


『それではすぐ抜け落ちてしまいますよ。こう留めた方が良いですよ』


 この世界の虫は問答無用でバレーボールサイズなのかぁあああ!?






 穴掘りはして貰えるらしい。おっさん、働くの好きらしいから。ガンガン働け。(料金内で)

 ならばと、丸太小屋の脇に仕切りをつけて穴を掘ってもらった。

 一メートルぐらいはまっすぐで、その先は緩やかな坂をもっては数十メートル下って崖の壁面に抜けている。一応、階段のような人の下りれる整備用の通路が細い穴の周りを巡っている。

 その正体は屋外だが屋根付きのトイレである。

 トイレである。そう、トイレである。大事なことなので繰り返すがトイレである!

 その辺で軽く穴掘ってやって埋めるを繰り返していた日々。辛かった。

 辛かったよ。「興味はない。気にしないぞ」と背後を通られたり、「生ごみを埋めようと思ってな」と、埋めたばかりを掘り返されたりするあの屈辱の日々にオサラバだ。

 もちろん、垂れ流し穴ではない!

 リア充上司様の助言に従い構築するのだから!

 フクロウ樹から採取した蔦と大きめの袋を数メートルごとに仕込む。中には小麦ちゃんの非食用粉に土、光源がなくてもいいという植物の種。囲炉裏から出た灰。いろんな廃物処理も兼ねている。

 最終的には外に落ちていく。

 混ざりあってよい肥料として崖下の沼に落ちる仕組み。

 うん。

 結局垂れ流し穴な気もするけど、そのまま落ちる訳じゃないし。壁があるって大事。おっさんもリア充上司様もその辺りの気配り皆無で無関心だけどそこはもう人として個人としてオープンではいられないんだ!

 日に一回、一袋かふた袋非食用粉の袋を投入せねばならないとしても改善なのだ!

「あー、お風呂が欲しいって言うのは贅沢なんだろうなぁ」

 システムキッチンはあるからお湯で濡らした布で体を拭くことはできるが、やっぱりお風呂は恋しい。

 食器事情やトイレ事情が改善したせいで「ない」と言う不都合を今まで以上に感じてるんだろうなと思う。

 不便だ。確かにこの生活は不便なんだ。

 携帯もネットもない。情報がない。当たり前も違う。

 フクロウだって袋だって同じ樹になる。

 常識が役に立たない。だって、蚤はバレーボールくらいあるし、しあわせキャット小麦ちゃんは大型観光バスぐらいのサイズなのにまだ仔猫だって言うし。

 一匹がてのひらからあふれる野ねずみをおっさんは幼獣って言ってたし。

 ああ、もうなんだか「ないな」って印象な現実。

 むしろ夢より夢っぽく、どこまでが夢見てるのかって気分にかられる。

 でも、今、この時間は何よりも現実で不便さも便利さも理不尽さももふもふハッピーも夢じゃないんだ。

 穴を掘ればてのひらと腰が痛い。

 小麦ちゃんのブラッシングは超肉体労働で背筋ひきつるし腕がだるくなる。蚤退治だって怖くない訳じゃない。必要だから作業だと思ってる。

 今、目の前には。

 がつりと足の一本で蔦を土に打ち込む生物。それはスパイダー。


 涼しげな甘い声でやんわりかけられた発生源はスパイダー。


 よし。現実を受け入れよう。

「ありがとうございます」

「こうですか?」『あ。もう少し』と言う会話をへて、全てお任せしました。

 蜘蛛の人はノンカンさんとおっしゃる若い雌蜘蛛さんで新しいテリトリーを求めて彷徨ってらっしゃったそうです。バレーボール大の若い雌蜘蛛さんです。

 女子会話ができるって大事ですよね。とお互いにテンションあがりました。

 雑談としてトラップを考えていると伝えると居住許可と引き換えに協力を申し出てくださった下心は協調可能です。ギブアンドテイク大事。意思疏通できるって言うことも大事だし。


『あまり荒事は得意ではありませんけれど、お役に立てれば幸いですわ』


 可愛いらしく笑いをにじませた声にほっこりする。



『あぁ。お食事も豊富ですわ。月に一度野ねずみかフクロウをたべれるのならとても、ええ。とても贅沢ですわ』

 梟達(アウリーグリーム)野鼠(チャッキー)、生き延びてー。

「えっと、とりあえず、数の多い方でよろしく」

『はい。領主様がお困りになることはよろしくありませんものね』

 声と仕草がかわいいと思い始めてる私は本当は動転中かもしれない。


 もちろん、落ち着いてるから!


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