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もふもふマフラーとダンジョンマスター

 迷宮管理にふわふわもふもふなマフラーをリア充上司様から貰い受けた。

 ふわふわもふもふマフラーは夢の中で意思疎通を図ってくる謎存在。なんていうか、謎存在なんて今更感が強い。

 ふわふわもふもふマフラーは夢の中では二人の少女。ダンジョンコアとダンジョンマスターだと彼女らは名乗った。見た目ふわふわもふもふマフラーだけど、身につけていても別に暑さは増すことのない心地よさ。最高か。

 リア充上司様は『ダンコア持ちダンマスは魔物達の多くに嫌われるからなぁ』と言っていて魔王城に置くことを周囲(具体例はリア充側近様だと思う)に渋られたらしい。つまり、現行の部下には嫌がられる確率が高く困っていたところ私が喜んで手を出したようだった。

 小動物を拾って面倒を見るとは思えない子供に『捨てて来なさい』というのと似た感じだろうか?

 表情に出てたのかリア充上司様は笑っていた。

 それとなくピヨット君にダンマスってなに? と聞けば露骨に嫌そうな顔をした。


「迷宮主の意ですね。広義で言えば貴女もダンマスのうちに入ります。が、どこで聞いたのかは知りませんが、貴女の言うダンマスはごく限られた種族としてのダンマスなんでしょうね」

 誰からって、言われれば。

「魔王様がね」


 リア充上司様が言ってたんだよ。

 納得したのかピヨット君は情報がいりますか? と立ち上がりかける。


「どうして嫌われてるのか知るには資料見たほうがいい感じ?」

「見ても理解できるかは別ですね」


 嫌うのは感覚感情的部分が多いのだと教えてくれる。「存在自体は有益なんですよ。管理できていれば」その上でやはり好きになれないのだと。

 夢の中で意思疎通した彼女らは無力そうで友好的そうな少女達だった。

 明らかに理解できてない私にピヨット君が苦笑する。


「迷宮は迷宮主の城であり、命です。迷宮を生きる生命はその血肉。すでにある迷宮にダンマスが巣食うというのはいわゆる寄生であり、元々のいるものが反発するのは縄張り問題もあるんですよ。ダンマスはコアを使い、中に存在するものを支配するので」


 聞いていけばその支配は思考行動進化すべてに及ぶこともあると理解できて、なんとなく嫌悪されるのがわかった。

 先にダンマスがいて、そこに入るならある種の納得理解があり、後からダンマスが来て侵食していくなら拒否反応は当然だし、そう説明されれば恐怖心も理解できた気がする。

 ふこりとマフラーが揺れた気がした。



「いいんだよ。私がいいんだって言ったんだから」


「どうかしましたか?」


 ピヨット君が説明図説をこちらに差し出しながらうかがうような視線をくれる。情報は足りましたか。と無言で問われていると感じる。


「なんでもない。ありがとう。ピヨット君はダンマスコワイ?」

「……そう、ですね。意思操作される可能性があるとわかっている分危機性を感じます」


 考えをまとめるかのように沈黙を挟みながらピヨット君は言う。でも、コワイとは言わない。


「ですが、ええ。ですが、あなたが決めたのなら受け入れるでしょう。すんなりすべてがうまく流れるとはお約束できませんけれど」




 私がいいって言ってんだし、いいんだよ。

 ここに居てもいいのかと不安そうな少女達。

 意思疎通はできなくても彼女たちには私とピヨット君の会話は届いてる。不安だから、私を夢に招いたんだろう。

 夢の中でのお茶会は新鮮だけど、馴染みある懐かしいものがたくさん再現されていた。湯呑み茶碗や漆塗りのお菓子箱、お手玉に花蝋燭。ガラスのインク壺に転がるガラスペン。造花の入った鳥籠に鈴を包んだ紐細工お尻がひんやりする金属のチェア。

 懐かし過ぎて泣きたくなる。


「失った物の再現は得意なの。嫌なら言ってね」


 嫌か。

 嫌だよ。

 失ったと突きつけられるのは。


「ねぇ、これなぁに?」


 ダンマスと名乗った少女の後ろからダンジョンコアと紹介された少女がそっと造花を指差す。


「きれいでしょ」


 この光景は嫌いではないのだ。

 だから、一緒に新しいしあわせをつくろう。


「ここは私達の居場所。出て行きたいならともかく、居たいんならリア充上司様に言われない限り追い出したりもしない」


 きっとリア充上司様はそんなこと言わない。

 コアの少女に造花を差し出せば、パッとダンマスの背後に隠れてしまった。


「アレは偽物だからもらっても大丈夫」

「ホント?」


 まだ怯えられてるなぁ。


「おなかすいたよ」




 どちらの声だろう?

 その言葉を認識したのをさいごに夢が遠のいた。

「小娘。おまえはアホウか」


 目覚めればおっさんに罵倒された。

 すんなり起きれず、目眩が酷い。


「魔力欠乏症だ。コイツが食っちまったんだろうさ」


 おっさんの手にはもふもふふこふこマフラー。つまりダンマスちゃん。

 そういえば、おなかすいたって言ってたっけ?


「魔力喰いをそばに置く危険性を」

「今さら」

 説教がきそうだったから遮った。

 そう。今さらなんだよね。

 自分で叩き込んでいたのと急激に吸収されるでは確かに違うけれど、今後は対策を考慮するだけだ。コアちゃんに怯えられても困る。

 ただ、魔力の受渡しについては話し合いが必要になるなと言うことか。

 私はおっさんからマフラーを取り返し、身につけた。

 ……ん?



「乙女の寝室ーーー!!」


 おっさんの『ヘッ』って表情が憎たらしいい!

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