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食料種増計画と人員増月間

 リア充側近様によると人員増強は私が受け入れることができるのならかまわないけれど、それぞれに対価は必要だと言われた。

 具体的には住む場所と飢えない環境である。

 あとはそれぞれが求めている欲求を満たすこと。


「例えばですね、平和すぎる場所ですと好戦的な方には不満が募り、静かに過ごしたい方は騒々しい環境は不満でしょう?」


 納得できます、現在は平和ですが。


「あと二月で吊り橋が復旧します。間はあくでしょうが戦う機会は確実にありますよ。それに好戦的な方はひとしく強い方がいるなら敵であろうが味方だろうが勝負あるのみですよ」

「リア充上司様に……?」

「叩きのめします。主人様のお目にとまる前に」


 朗らかに即答だった。


「あぎゃさんもおられますしね」


 ニッコリ笑顔が底知れなかった。その背後でリア充上司様がなにか言いたげに手を動かしてはいたが結局なにも言いはしないままだった。


「まずはクイック・クックさんの紹介でよろしいのでは? 彼女の交友範囲はピヨットさんより広いですから」



 そんな会話を月の報告会でした数日後というか、クイック・クックが予定表を作った翌日に『魚人隊』『ヴィガ隊』『コウセツ』という札が増えていた。動き早いよ。クイック・クック。

 ヴィガ隊はわかる。

 コウセツは顔見知りの金物職人見習いだったはずだ。メインカラー赤の雪男。リア充上司様の所の倉庫番とうざったい感じで恋人未満幼なじみ以上の関係性の。

『コウセツ』の横には『工房建設』(場所選び)という妙に長い札が掛かっていた。

『魚人隊』の横には『見回り』『訓練』『採取』である。

『ヴィガ隊』の横には『罰掃除』『見回り』『訓練』とあってなにがあったんだろうと思う。


「ちゃんとノンカンさんと相談した予定表ですよ。子蜘蛛隊と野ねずみ隊は把握しきれないので」


 答えてくれたのはピヨット君だった。

 確かにノンカンさん呼んだらすぐきてくれるしね。


「魚人隊ってなぁに?」

「ワタシの同輩で妹分たち。暇してるって言うからこき使おうかと。漁やカエルの世話得意だし」

「こき使うんだ」

「誰の縄張りでもない繁殖地に入りこめる機会の対価としては充分」


 繁殖地?


 理解不能な顔で見つめているとこの場所はありがたいわとクイック・クックがにんまり笑う。


 クイック・クックの種族である魚人族(遊水種とも呼ばれるらしい。早い話が人魚族)は生殖能力のない大多数と五十から百に一人生まれる生殖可能個体によるムレらしい。

 他種族から優良な雄を選ぶらしい。

 そしてその雄から子供たちの成長栄養をとるらしい。つまり、その雄に狩りをさせるか、捕食するかの二択だと聞いてちょっと血の気が引いた。蜘蛛夫人も同様でしょとクイック・クックは楽しげだ。そうだったのか。


「魔王様の領域内においては栄養足りてるけどね。あんまり甘えていると弱体化するし、マズイの。やっぱりほどほどに飢餓状態は必要だね」


 生存環境における切磋琢磨は強さ維持向上に必要だから彼女らの食事は考えず、どちらかと言えば払わせる方向だからと語りながらマシュポゥの核の炒め揚げと赤みの謎肉の焼き物を差し出してくるクイック・クックがいた。

 ちなみに一口大カット。


「川魚の肉は嫌い?」


 魚。

 あの谷底を流れる川の魚?

 こんなに赤身だっけ?


「はじめて食べたから」

「ああ、川底で藻を食べているから釣り具とかでは釣れないからか。嫌いじゃないといいんだけど」


 ぱちりとメタリックシルバーの瞳が瞬く。理解して興味は味への感想だけになったらしい。じっとみられる。

 魚と思えなかっただけで甘みのある焼き物は美味しかった。


「うん。おいしい」

「蜜酒に一晩漬けて塩をまぶして焼いた単純なやつだけど喜ばれると嬉しいわ!」


 嬉しそうに笑うクイック・クックに私も笑顔になった。



「えー、たまごが食べたい? ワタシらの産卵期って冬だから、ちょっと待っててくれる?」


 人魚のたまごが食べたいワケじゃないんだぁああああ!

 食べたいもの何かあると聞かれてついぽろっとこぼしてしまったらそんな回答が返ってきて慌てるハメになった。


「人魚のたまごやポルトガッシュが不満ならアカツキドリのたまごならちょうどいいかも?」


 クイック・クックが「(人魚のたまご)いいの?」と不思議そうにしながら代案をくれた。

 アカツキドリは北部に生息する鳥で夜が明ける頃に鳴く飛ばない鳥らしい。体毛は保護色で季節ごとに抜け変わるとか、雑食だとか、タマゴを二日に一度産むとか教えてくれた。

 それってニワトリっぽくない?

 期待していいかな?

 ポルトガッシュはたまごっぽいけど、同時にとってもうさんくさい。

 ……まさか、128円のたまごのなれの果てだったりするのかな?


「気になるなら北の姫に交換依頼出してみるのもいいかもよ」

「でも、生存環境ってあるでしょ?」

「大丈夫。アカツキドリは適応力高いから」


 交換依頼は物を譲ってもらう必要な対価だ。こちらに払えるものは少ない。

 でも、いけるのなら欲しい。


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