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ネーミングセンスとこれからと

 レタス君は有能だった。

 誰よりも早く起きてお掃除したり雑用を探したり、起きたら綺麗に掃除された廊下に出ることになって正直びっくりした。


「おはよございまし」


 聞き慣れればノンカンさんたちのような思念声じゃなくてちゃんと聞き取れる言葉だった。ちょっと訛ってるけど。


「おはよう。レタス君」


「お手伝いしまし!」


 きらんと綺麗なキッチン。お手伝い?

 首を捻って何がいいか考えながら魔力を叩き込む日課にむかう。

 レタス君もうきうきしてるのかとても軽い足取りでついてくる。

 粉と化した袋詰め品の分類運搬はアウリーとグリームが管理してるしラベルはマグロちゃんが作ってる。

 カエルの体液分離は体液集めの作業は確かにある程度必要だろうけど、ヴィガ達がやってるし。作業を作るには事業拡大が必要?

 ううん。まだ早い。まず、私自身がやるべき作業の把握が終わって居ない。



 どうしてこうなった?

 朝食準備をレタス君と一緒にしてたんだよ。

 レタス君は蜜やワームの扱いも手馴れていた。

 調理器具が大量にあることにも食材が多いことにも驚いていたようだった。器具が多いことに「すごいでしね」となんとなくうっとりしてるとわかる声をあげていた。

 なんでかマグロちゃんとレタス君はとても仲が悪かった。

 一方的にマグロちゃんが嫌いオーラを出してるとも言う。レタス君は仲良くしようとしてるしね。


「できる作業がかぶるからでは?」


 本をめくりながらピヨット君が指摘する。仲裁する気はないのがわかる無関心っぷりだ。

 二人とも子供だしなぁ。


「かぶってるかなぁ? レタス君はマクベアーとの運動にも耐えれるけど、マグロちゃんはぶっ飛ばされたら死にそうだしなぁ」


 きゅっと拳を握るマグロちゃんがキュートだけど、危ないからね。無理な運動よくない。

 マグロちゃんは基本非力だけど細々とした雑務や事務系が得意だし、なにより外見が可愛らしいし、思いついてやっている発想を見ていると癒されるんだよね。朝早いのちょっと苦手なのもかわいい。

 レタス君はシャキシャキ動く。几帳面で綺麗好きで体力もあってめはしもきく。

 ただ、それって環境がつくった強迫観念とかだとしたら、それは少しでも緩めてあげたい。

 二人ともロリコン勇者がらみだっていう嫌な気分を伴う起因は私も早く忘れたい。


「あーん。獣面人かぁ」


 おっさんが入ってきて怪しい鍋に具材を追加している。


「違うって、聞いているけど?」

「あ? 獣面人なんてのはおおまかな分類だぞ。もっと大きく分ければ獣人でひとまとめだな」

 細々と種族差があるのは当然だと続けられた。

 獣面人が獣人と分けて呼ばれる理由の一つが魔力行使の有無になるらしい。なにそれと呟けば、おっさんは一例とばかりに続けてくれた。

「獣人は基本魔力を肉体強化以外に使えないからな。獣面人は魔力行使の方向性が強化以外にもむくんだ。鍛えたら色々できる可能性があるぞ」

 おっさんは意外と物知りだと思う。「長く生きてるからな」とヘラで鍋をかき混ぜる。

「小娘も随分表情が表に出るようになったな。いいことだが、気をつけることだ」

 その言葉にきゅっと心が冷える。

 気を許して緩めて傷つくのを警告されたようで。


「つけこんでくる奴はそういう隙を見逃してくれはしない。甘えれると理解すれば、ひよっこなどは予算を自分の趣味につぎ込むさ」


 おっさんの視線を辿ればその先にいたのは読書中のピヨット君。


「ピヨット君!?」

「してませんよ! 程度は弁えてます」


 あたり前のように否定は早かった。

 ん?

 ピヨット君の突っ走り(巨大魔法陣とか)は結構助かってるから「予算内ならいいと思うよ?」って答えとくしかないよね。

 誰かは裏切るものだけど、今が楽しければいいじゃないと言いきかせる。

 もふもふとここにいるために演じている好意であっても好きだという好意の一面を向けてくれているのだから。

 ぎゅーっとマグロちゃんが抱きついてきた。ふわふわくせっ毛がくすぐったい。

 心淋しいと察して見上げてくる姿に小動物ぽいなと思う。


「マグロちゃん大好き」


 ふわふわくせっ毛に顔を埋める。



 マクベアーはレタス君を気に入ったのか、私に対するより明らかに激しい勢いで戯れる。

 準備体操しながら私はこの差はなんだと悩む。

 ごはんをしっかり食べて、よく働くレタス君にこの仕打ちはキツくないかとも思うけど、おっさんがきっちり疲れさせてよく眠れる状態をつくった方がいいと言ってきたのだ。つまりこの後、おっさんとの運動である。念入れてほぐしておけとか言われた。私も参加が前提だった。

 マクベアーとピンクちゃんチームとレタス君と私チーム。絶対的に不利だった。

 ケモノ強し!


「随分、体力ついたじゃねーか」

 にやにやとからかう調子のリア充上司様だ。

 なんでいるんだろう?

「ああ、ゼンラウと契約期間と内容の相談にな。前任のアホウも復活して、一応の方向性も確定し、基礎となるルートもできているだろ?」

 言われれば、そうだった。

「生産力が上がれば迷宮を住処にしたい連中も出てくるだろうし、勝手に入り込む奴らもいるだろうから、そのあたりへの対策と方針も考えていく必要が出てくる。決めるのは嬢ちゃんだが、実行する初動はあぎゃとゼンラウでって可能性が高いからな。やっぱり生態系の調整に邪魔すぎる奴らはウザいしな」

 目的地までの単純なルートは出来てるのでここからは拡張作業になる。大きく変えず時間をかけるならおっさんがいなくてもヴィガ達が掘り進めるすらありなのだ。

 その場合、できる道は大きいものは厳しそうだけど。なにしろ加工工作を得意としてそうなガドウィンのオジサマ方もいつまでいてどこまでしてくれるのかはわからない。

 キチッとした居住区をもっと奥に作りたいとは言ってたけどね。狙いは温泉だと思う。

 そうか。ゼンラウっておっさんの名前だ。




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