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はじめよう防衛準備と上司様来訪

 

「よっ」

 リア充上司様がリア獣連れて超軽い感じでやってきた。

「鳴き粉が得れたらしいな」

 鳴き粉?

「前任者はここ食糧地帯を築いてみせると言い放って三年目で事故ったからなぁ」

 事故った……。

 話を聞いていくと『鳴き粉』とは簡単に言うと小麦粉だった。

 粉砕機じゃなくて実は製粉機が正しかったりするのかも知れない。

 そして、上質な『鳴き粉』は鳴くらしい。

「鳴く食材なんて使いにくい!」

「見習いには人気だぞ? 揚げる時なんかは適温で鳴くし、引き揚げ時にも鳴くし。美味いし」

 厨房に立ち入り禁止を食らっているらしい上司様の説明だ。多めつまみ食いも機材破壊も私には関係のない話だ。私のキッチンにさえ入らなきゃそれでいい。

 今回提出分の質はイマイチだったらしいが今後月ふた袋、現状か現状以上の品質で提出するようにと言いつけられた。メリットは給料アップやボーナスではなく、保存袋入り弁当十セットだった。調理場の見習いさんたちの作った『鳴き粉』メニューである。

 つまり、提出する粉の質が上がればお弁当の品質もアップという話か。それはやる気が上がる。

「キッチンがあるなら自炊か?」

 クッと絶句する。

 キッチンがある。キッチンはある。ただし、鍋はおっさん所有のひとつ。この鍋はキッチンに作りつけられている囲炉裏に設置されていて得体の知れない肉汁が常に煮立っている(味は悪くない)。包丁は武器セットの中にあった小さめのナイフ。そう、食器も調理器具もないのである。

 コンロやオーブンはあっても皿もボールもオタマもしゃもじもヘラもないのである。

 数本の菜箸もどきや串しかない。あと使い捨ての葉っぱ皿。おたまが欲しい。

 水分補給は上司様のところから貰った果物が尽きる前にサビ猫ちゃんからシステムキッチンゲットで飲み水確保。ただし、コップがない。

 一応井戸はあるけど、生水はこわいからそっちは掃除洗濯にしか使ってない。

「調理器具と食器が欲しいです」

 主におたまと皿とコップ。

「商人通って来るだろ。そいつから買え」

 上司様はそんなことを言いつつ、木製のマグカップとスープ皿を出してくれた。上司様お手製のペアで。

 おっさんとペアかよ!

 おたまもくれ!

 その辺の木切れで手早くヘラとおたまを作ってくれた上司様まじ神。





 吊り橋予定地から対岸を見る。

 遠すぎて鬱蒼とした森があるとしかわからない。

「向こう側からは橋の真ん中あたりになる位置くらいで霧と言うか観察阻害が入るから領内の情報は常に実際に見た人による伝聞だけになる」

 おっさんが解説してくれる。

「急にヤル気出したなぁ」

「だって上司の役には立ちたいじゃない!」

 もちろんリア充上司様じゃなくてリア獣上司様のためなら!

 なにげなく連れていたリア獣である肩乗りもふもふを「おまえの直属上司」と紹介された時の衝撃!

 上司様の肩でもふもふがぐりんと頭を回す。ぶるんとうさぎのように長く大きな耳が揺れる。かわいい。

 なーでーまーわーしたいー。

「あ、コイツ、おまえの直属の上司な。紹介しておこうと思ってなー」

 上司様の言葉が自分を指しているとわかっているようで呼ばれた。っとばかりに嬉しそうにそのもふが反応する。うぁあああ。かわいい。

 ん?

 今、なんて言った?

 小麦ちゃんにつく(バレーボールサイズ)より毛皮でふた回りおおきいかどうかのもふもふ生物だ。

 超かわいい。

「おまえが回した侵入者対応はコイツがヤるから、あんまり心配しなくて良いぞ。そのまま食糧地帯目指せばいい。それもやり方だ」

 メシは美味いがいい。と上司様は頷いている。

 そこは同意。しかしプチもふに戦闘苦労をかける?

 好みじゃない。

 それは好みじゃない。

「橋渡ってすぐに転移陣準備するか?いいぞ」

 話が勝手に進みかけてる。

 肩のりプチもふもヤル気を示しているのかブンブンと前足を素振りしていてかわいい。

 白い残像は爪らしい。

 それでも!

「周囲散策しきれてないんでそれから考えます!」

「まぁ、橋完成するまで六カ月あるしな。商会にボラれて破産すんなよ」

 そう言いながら、フクロウ樹用の肥料セットをくれた。他にもいくつか非食用粉砕屑の使い方も参考程度に教わった。

 アンデッドで警備員とかって呟けば、「ウチアンデッド系すくねーんだよ。モフれねーし」と返ってきた。

 上司様、同志だった!?

 いや、うん。

 こうなると少しは真面目にやるかってなるじゃない?

 この橋のたもと(予定地)には小麦ちゃんが連れてきてくれた。

 小麦ちゃんの首元にへばりついてびゅっびゅーんとひとっ飛びだった。

 まぁ、そうでなければ降りるだけで二日。森を抜けるのに三日くらいかかりそうだけどね。

 ありがとう。小麦ちゃん!

 撫でてやれば、ぐるぐると喉のなる振動が愛おしい。

 蚤をついばんでたフクロウたちも一緒だ。

「さぁ。はじめようか!」

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