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しあわせとトラウマとズタ袋(生)

『それでね。コレが新しい機材だよ。カエル体液を毒性と食用に分け、尚且つ、簡易加工が可能なんだよ。プティミーア!』


「魔力は?」


『稼働動力として魔力は必要だからね。加工物から一割から二割の魔力は減るかな』


 安定稼働、素材保有魔力が向上すれば問題はないし、解説のズタ袋が力を取り戻せば調整できるらしい。


『もちろんだとも。プティミーア! 命の奇跡をもって不可能なことなどないんだよ!』


 不可能なことなど山ほどあるからと言うツッコミは大人しく沈黙する。




 ズタ袋氏は、私の前にここで吊り橋守りとして着任してた前任者である。

 粉砕機に落ちて死んだんじゃないのかよってツッコミたい。と言うか、ツッコミどころしかない前任者である。リア充上司様も力いっぱいつっこんでたし踏み躙ってた。


 はじまりの迷宮の二階でのお弁当タイムに私はズタ袋氏のファーム(小麦ちゃんたちのおうち)に招かれた。

 もふもふもふもふに今、私は包まれている!!


 至福時間!


 お弁当を食べている最中に黒い風が吹きこんできたと思ったらすくい上げられて運ばれたのだ。

 ごうごうと強い風の音。

 私は黒い風……黒い毛皮にしがみつく。

 連れ込まれた先は明るく広い庭園でたくさんのけだものが寛いでいた。

 軽い衝撃で黒い毛皮から弾き出された私がみた光景は小麦ちゃんと黒猫の乱闘だった。

『なぁん』

 ハラハラ見ていれば頭を白猫に舐められた。

 ブラッシングタイムは至福の時間。

 この子も小麦ちゃんサイズだ。兄弟かな?

 ブラッシングしながら小麦ちゃんのおうちに来たことに改めて感動する。


 うわあああぁああ。

 もふもふがブラッシング待ちしてるよー!

 ひとしきり身悶えしてたらフクロウと目があった。

 アウリー、グリームとは別個体だ。

 それでもやる行動は変わらないらしくブラッシングで抜けた毛をざかざか袋に詰めていく。もしかしたらこの子の動きの方が洗練されて機能的かもしれない。

 ザッと見回すとやはりあった。庭の若木の一部がフクロウ樹のようだ。

 サプライズハピネス!

 ところでここどこ?

 視界の端に異物が見えた。

 ズタ袋が鈍い動きで近づいてくる。

 ぞわりと背筋を走り抜ける悪寒。


『やあ!』


 妙に朗らかなズタ袋は猫たちに踏み倒されもみくちゃにされ見えなくなった。


「あんたたち、ばっちぃからやめようね」


 猫たちはにゃあんと、そうまるで『聞いてないけどわかった』と言ってるかのようなよいお返事をした。

 うっわ!

 かわいい!

 超かわいい!

 ああ。大好きだ!

 あんまりのニャンコ達の誘惑にメロメロにほだされ考えを放棄した私がイロイロ怒られる結末を忘れさえしなければ良かったのかも知れない。

 いや、だって、にゃんこたちがもふたちが超かわいいんだよ!?


「呼び出されて捜索するはめになった俺様の労力も考えろ」

「ひよ経由で報告受けたから来てみたが、もふランドだな!」


 おっさんに何故かリア充上司様まで居た。

 リア充上司様がざっくりとズタ袋を踏んで小声で何か言ってるが、こっちには聞こえてこない。不審だ。


「嬢ちゃん、コレは一応、なんでか、超残念な事実だが、ここの前任者だ」


 くるりとこっちを向いたリア充上司様がそんなことを言った。今、踏み躙っているソレが?


「ああ、もちろんここの担当者は嬢ちゃんだからな!」


 あ。そうか、前任者がいたら解任も可能性があったんだ。

 あ、なんかブチって聞こえた。耳塞ぎたい。


「ここのもふもふどもは農産品らしい。いや、まじコレは理解不能だね。俺みたくお菓子がなる木やパイの咲く花を創り出すより異常だろう」

「いや、どっちもどっちだろ? 毛玉の抜け毛が穀物ってーのもおかしいが、砂糖玉の実をつける木をそのまま全部飴に変えてなおかつ生きてるキャンディゴースト生成するのもおかしいっつーの。ふつーじゃねぇからな。小娘」


 砂糖玉の実はおかしくないんだ?


「砂糖玉の実は宝石の樹ってぇものが普通にあるから納得できるが、菓子や料理が直接できるのはおかしいだろう?魔法で作り出した一代限りならともかく」

「は! インチキ生体ヒドラが何言ってるんだか」

「インチキ言うな」

「宝石の木に寄生されても気がつかん鈍さだろうが!」

「アレは余剰魔力の結晶化に過ぎん!」


 私からすれば、もふもふちゃんたち以外全部インチキであってほしいくらいだ。


 ぎゃーぎゃーとリア充上司様とおっさんが戯れるのを見つつ、ズタ袋に注目する。ズタ袋の裂け目からうねりと覗くのは、ワームだろうか。そして、硬質そうな細い棒状のものには関節が見える。

 地味に近くにいた。

 そこで一旦記憶が途切れている。



 そんな出会いがあり、今がある。

 リア充上司様が帰る時に(私が気がつくまでいて作り置きの食品を食い漁っていた)「コレ置いていくけど、何かあれば報告しろよ。ウチのが焼却処分の機会狙ってるから」と言った上で、ズタ袋にもちゃんと報告連絡相談しろよと言い聞かせていた。


『さぁ。プティミーア。理不尽は去った。よく互いを理解しよう』


 ズタ袋はマグロちゃんに塩をかけられて悶える。

 解説が得意なズタ袋の中身は大量のワーム。

 いきなり、大量のワームに襲われたらトラウマになるよね?


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