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花園と戯れ

 ヴィガ達が草を刈っていると聞いて、どうしているのかと思ったのだ。なんのためかよくわからなくて。

 はじまりの迷宮の二階部広間から転移陣へ向かう途中にある横穴に足を進める。蟻の巣というか、細い通路が多くあって迷いそうだ。なんとか他の通路より広がった横穴をくねりくねりと進むとヴィガが道案内に現れ、先導してくれた。ついでに灯りもつけてくれた。

 驚きの拡張っぷりだ。ぎゃあぎゃあ解説されても残念ながら言葉がわからない。ノンカンさんについてきてもらうべきだったろうか?

 ひとつふたつ回転扉を経由して通された少し大きめの部屋でヴィガ達が数人、草を編んだ敷物の上で寝入っていた。

 休憩組だろう。

 一人が鍋を見ながら採ってきたのであろう蔓を伸ばし、長さや太さで選り分けをしていて、別のヴィガ達がその選り分けられたものを使って籠を編んだり、網を編んだりしていた。居住区が生活の匂いにあふれていた。

 馴染んだ分業が当たり前だからこその技術か。

 作業中の一人が手招いて、それはもう得意げに輪を見せてくれた。

 ただ、蔓を編んで輪にしただけの単純なものだ。

 それを半分土に埋めて、どうするのかと見ていると。

 ダダッと短距離走ってわざわざその輪に足をとられた。

 すると前方部分が数センチ落ちた。

 で、ヴィガはもちろん大袈裟に転んで見せつけてきた。ドヤ顔で。

 うん。これ、きっと痛いわ。

 足を痛める可能性もあるし。

 輪に足をとられて、紐が引かれると仕掛けが動いて落とし穴へ落ちる仕掛けだろうか?

 うん。


「きっと効果的!」


 褒めるとヴィガ達がぎゃっぎゃっと喜びの声をあげる。いつの間にか寝てたヤツも起きてきていた。

 ん?

 ヴィガ達が二人増えてる。

 他より小さな個体なので見極めがつきやすかった。


 子供?




 部屋に戻ってピヨット君とマグロちゃんの二人と食事する。

 マシュポゥ核の粉末に水を加えて練りあげたものをフライパンで焼いた料理だ。使うのは白マシュポゥ。マグロちゃんに強過ぎる魔力食材は体調不良を引き起こすので白マシュポゥで慣らしつつ、おやつに小麦ちゃん粉と蜜果の薄焼きとか、野うさぎジャーキーとかを食べていてもらってる。

 会話は私が一方的に話しかけているけれど頷き返してくれるしピヨット君は 書類不備を言ってくる。

 食事中は書類ネタ持ち出すな。

 ワームやヴィガの能力すごいと称えればピヨット君が「基礎能力でしょ」と言いそうな表情を浮かべた。

 異世界住人な私は知らないんだよ。

 あと、第二夫人とピヨット君じゃ微妙に常識の偏りを感じるし。

 情報弱者辛い。


「私の戦闘能力ってどのくらいなんだろう?」

「ピヨットの方がまだちょっと強いですしねぇ」


 ピヨット君、ナチュラルに上から目線だな。というか、ひよ様にピヨットも鍛えろって言われてたの知ってるんだけどな。

 食事の後はマクベアーを連れて第三迷宮に行く。(というか、もどってきた?)ピンクちゃんも一緒についてきた。

 マグロちゃんはお留守番で小麦ちゃん粉とマシュポゥ粉とをふるって混ぜて料理の下準備というお仕事を任命してある。あと、ラベル書き。

 ピヨット君は書類事務作業とラベルの種類整理とお手本書きとマグロちゃんの様子見を任せてみた。仕事多過ぎませんかと言いつつもいってらっしゃいと送り出してくれた。

 もうちょっとマグロちゃんに魔力が馴染んだら一緒に温泉目指すんだよ!

 無論、ピヨット君は荷物持ちだとも荷物持ち。


 ぅうん。ピンクちゃんふこふこピンクのぬいぬいプチ熊天使。ハピネス!


 少なくともマクベアーサイズの生き物が問題なく動ける環境って大事だと思ったからチェック用に連れてきたんだよね。って、朝より植物の丈、高くなってない?

 成長早すぎない?

 第三迷宮のパティカちゃん疲れ果ててない?

 私のそんな心配をよそに陽射しが差し込む場所にひっそり佇むパティカちゃんの本体は綺麗なグリーンに輝いている。元気そうでホッとしてたら……マクベアーとピンクちゃんはそんな中で上に下に所狭しと暴れ回っていた。

 なんでだ。おまえら。

 パティカちゃんの本体は無事だけど、何本も木が叩き折られ、踏み倒された。水路の縁も何箇所か破壊された。

 上に行き過ぎんなよ。第二夫人怪我させたら怒るからね。


『元気、ですわね』


 ノンカンさんの囁きにいいのだろうかと首を傾げると、


『多少の刺激があった方が森は強く育ちますわ』


 と問題がないと後押しされた。

 ならいいか。


『折れた樹々も肥料になりますしよいことです』


 戦闘があれば森は戦闘を記憶し、成長の方向を自ら変えていく。と。「え?」って思ったけど、プティパちゃんといい、パティカちゃんといい、ちゃんと人格のある存在が森を管理しているんだった。


『こちらの花園はガドヴィン様達が色々表から持ち込んでいるようですね。はじまりの迷宮の方は変化をつけるためにも最小限でワームとマシュポゥの往来が増えただけですが』


 ノンカンさんによると、ガドヴィンのオジサマの一人が嬉々として石だたみを貼り付けているらしい。階段と二階部広間に。

 そう言えばそうだった。床が比較的たいらだったと思った!


 背後で大きな風が鳴いた。




 振り返りたくない。




『マクベアーさん。修行が足りませんわね』


 ノンカンさんの発言で勝者は判明した。

 いつのまにか周囲ではガドヴィンのオジサマ方が朗らかに「元気でなにより」と笑いながら酒をかっくらっていた。


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