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温泉と虫と日常欲望

 温泉。

 温泉って単語は魅力的。

 だってお風呂は準備するの大変だから。(いくら疲労回復不純物除去に有効でもワーム風呂は勘弁して欲しいし)システムバス欲しい。

 マクベアーを後で洗おう。



 空姫蜂用の巣箱用に木屑とワームを入れた木箱を軒先に吊るす。木箱は木箱の中に木箱があるという多重構造だ。

 第二夫人の説明によるとワームが食いつぶさないようにらしい。

 ワームって食欲旺盛さが思った以上な気がしてる。

「金属容器は?」

 金属はあまり食べないようだから。

「柔らかな木屑や燃えカスの方を好みはしますけど、ワームは金属も食べますよ?」

 え?

 金属も食べるの!?

「はい。不純物を取り除き、金属としての質を上げるため専門で育てられているワームもいると聞きますよ。お酒作りに向いたワームもいるように」

 ワーム、奥が深い!

「本当は育った植物のウロや枝の隙間に巣を置くのがいいんですよ。空姫蜂は高い場所を好むので」

 花がないけど、大丈夫なのだろうか?

 そんな表情で軒先の木箱を見上げていると第二夫人が説明を足してくれた。

「しばらくはワームを食べて巣を組み上げていくんです。飛ぶようになる頃には薬草や香草が花をつけそうですし、いざとなれば蜜果を与えてしのがせます」

 空姫蜂の幼虫はワームたちも食べるので飢えることはないだろうとのこと。ワーム自体も餌が豊富でワームで満ち満ちていない現状は大繁殖期らしいが、繁殖がある程度進めば落ち着くのが普通らしい。

 ワームだらけの世界……。うげってしてると「見えていないだけでいるものは多いですよ」と教えられた。うん。

 確かに見えるものよりいろいろ見えないものが多いのは確かかも知れない。

「吊り橋守りの嬢ちゃんが箱は食い破ってくれるなと頼んでおけばいい」

 洞窟外部から持ってきたのであろう苗木を抱えたガドヴィンのオジサマの一人がそんなことを言った。

 そんなことでいいのかと驚く私を横にオレンジ色の小さな花をつけた苗木を数本植えていく。

「こいつは筒木(つつぼく)つってな、空姫蜂が好んで巣を張る」

 筒のような実に卵を産みつけたワームを一匹放り込んでその中で幼虫を育てるのだとか。巣立った後の蜜液が良い酒らしい。その果実自体はワームと幼虫に食われてこそいるが、全部を食われてしまうわけでもないので問題はないと聞かされた。

 筒木はリア充上司様のオリジナル植物らしい。

 あー。

 うん。おかしいよね。普通ないよね。ってぼやくと第二夫人が力強く頷いていた。

「空姫蜂は樹木の花を好み、大地蜂は野草の花を好み、水切蜂は毒を好むんですよ」

 好む食の差で三種の蜂は共存できるらしい。

 空姫蜂の幼虫がワームを食べた残骸が酒に変化することは第二夫人の知識にもあったらしい。巣にできた酒玉を濾過して酒を作るという認識であったらしい。

「よっと。嬢ちゃんはここの主人だ。生き物は進んで反抗しようとは思わんもんだ。まっ、蜘蛛の姐さんが対処してそうだがな」

 グイグイと体をそらして腰を伸ばすガドヴィンのオジサマ。おなかがぽぅんとまるい。

 ガドヴィンのオジサマ方はお酒好き甘い菓子好きでいくらでも飲み食いするけれど、別に数ヶ月飲み食いしなくても平気でもあると自分で言っている。こっそり食べてそう。

 他のオジサマ方はそれぞれに地質調査中らしい。

 適度にワームとマシュポゥを減らしたり、おっさんが開通させた本部へのルートに追い込んだりしているらしい。

 はじまりの迷宮と第三迷宮を繋ぐのは水路と魔方陣。この水路はいくらか迷宮内を走り、地下に落ちていく。

 第三迷宮は言うなれば火山口の内部だ。外側から見たこの山は植物溢れる緑の山。

 そのせいか、所々から水が泌みだし細い滝が水路に合流していく。

 水があり、ひらけた空からの光が丈の低い草や苔がようやく馴染みはじめていたのだ。オジサマ方が来るまでは。

 生い茂る植物や、どこから沸いたのかわからない大岩などで一気に視界が悪くなっていた。(マシュポゥは大量に視認できる)

 聞けば、「表から拾って来た」と返された。

 視界が悪くなっていたり、場所を分断する岩があっても侵入者と大きめの魔獣が戦いをするには十分な広さはあるらしい。適度に場所は分断されていないと被害が大きく修繕が遅くなるから、適度に分断らしい。本部へのルートはより地下に進む通路かららしい。

 迷宮移動の魔方陣出口より直上数十メートルに第二夫人の住む居住スペースがある。

 魔方陣部屋から一歩出たら落下でもいいんだけど、侵入者が上を目指す可能性を減らすには下へ行きやすい状況をってことでガドヴィンのオジサマ方二人が並んで歩いても問題なさそうな階段を組んである。夜にはヴィガ達が足を伸ばして来て草を刈っていってるらしい。後で確認しに行こう。

 一度、入り口から本部までコース確認しておいた方がいいかも知れない。

「嬢ちゃんが行くんなら来月あたりにしとけ。溶岩が溢れてる場所と毒ガスが噴いた場所があるからな」

 オジサマの忠告に作ったおっさん無事なのすげぇって思った。


「温泉場作るぞー。温泉で宴会じゃーい」


 オジサマ方の盛り上がりは理解できた。


 温泉で美味しいモノを!




 ……温泉卵。



 食べたい。



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