欲望と迷宮と食
初期投資にシステムバスを突っ込むかどうかそれが問題だ。
カタログにはシステムバスはシステムキッチンと同じく五十万と書かれている。セット内容はシャワー完備のお風呂とトイレ。洗面台スペースに洗濯機付きらしい。……欲しい。
「却下に決まっているでしょう。桶を使ってお湯を入れるお風呂でも作ればいいでしょう?」
ピヨット君にざっくり切り捨てられた。声に出てたか。ちくしょう。
マグレッチェの祝福撲滅作戦にはウチのノンカンさんも精力的に動いてる。
実際、自分の子供らの戦力低下に密接だから当然らしい。
『はじまりの洞窟』
コレが吊り橋を渡ってすぐの迷宮の名前として書類提出された。
普通に人が侵入できる部分は狭くギリギリ。大規模戦闘は花園でなければ望めない。が!
がである。花園では基本戦闘して欲しくないよなって思うんだよねー。というわけで二階部分に大広間っていうか、ぶち抜き空間を作って外からの侵入も可能にした。
その二階部、大広間の奥から下り階段と蛇行する道を五キロばかりの地点に迷宮内部を乱数で結ぶ移動陣を持つ部屋を四つ。飛ぶ先は宝箱の部屋。入り口。大広間。落とし穴の中。花園。第三迷宮。
宝箱の部屋の宝箱には街のそばにとぶ移動陣を。
入り口は帰るもまだ探求するも自由な選択肢。本部からの増援は間違いなくいて難易度は高まってるだろうけどね。
大広間は、大型な増援が戦えるスペースを意識してるし、少し前に通った場所になる。
落とし穴の中は毒液を分泌するカエルのすみかだし、上までの高さは十メートルで壁には刃物が仕込んである。脱出路としての水路は準備してあるけれど、水路の物理ルートで第三迷宮にたどり着ける可能性は低いと考えてる。水路にながされて第三迷宮コースに入れなかった場合、谷へと川下り一直線だ。よっぽどじゃなきゃ水死かなぁ?
こっちの人の体力上限ってわからないし。
花園はプティパちゃんの聖地だ。
大地蜂や野ねずみ、野うさぎ、ノンカンさんのハッピーゾーンを目指している。二日に一回ここにもふもふ聖域をつくっているのが最近の日常でもある。
ここにいるもふもふ、野ねずみ野うさぎを狩るのは難しいぞ!
プティパちゃんから蜜の実をもぐくらいなら見逃しで、攻撃性を出せばブチのめす仕様だ。
適当に侵入者本人達から魔力を吸収し、プティパちゃんの意思で街そばまでの転移陣を発動させる。食料収穫できる上に送り出し機能付き!
第三迷宮は自宅(本拠地)の地下に第二迷宮というか、地下花園を造った順番のせいで三番の名を持つだけでコース的には第二迷宮である。ルートは水路と転移陣(第三迷宮から第一迷宮にも飛べる)のみだ(現在)。
第三迷宮はぶち抜き視界阻害無し(ただし現在)の広域戦闘ゾーンだ。本部直通の転移陣ひとつめはここの高層位置に設定している。だいたい四階ぐらいの位置だ。
侵入から三十分でこの位置に辿りつくことは難しいはずだから本部からの増援がまず待ち構えられる位置となる。第一迷宮に空路到着侵入者掃討って展開の方が想像しやすいけどね。
第三迷宮には成獣の野ねずみとノンカンさんの子供らが今のところ住んでいる。生えている植物層が大地蜂に適しているとは言えない為に大地蜂は連れてこれていないのだ。
もう少し、防衛力を強化していかないといけない使命感だけは芽生えている。具体的には変態撲滅。
でも、防衛力の事と産物増産を同時に考えるってめんどくさい。
なにはなくても蜂蜜増産していきたい。あとカエルミルク……抵抗は現物を忘れればなんとかなる。いや、きっと牛とかヤギの存在を忘れればいいのかな?
食感的にはマグレッチェの祝福がジャガイモっぽくて本当は育てたいんだけど、特性がなー。薄切り芋のフライ食べたい。ポテサラとか。
……たまご。たまごが食べたい。
無精卵希望だぁあああああ!
「魚卵かカエルのですか?」
ピヨット君に言われて真顔で「違う」と宣言した。それは違うのだよ。ピヨット君。望むものはどちらかといえば鳥類のたまごだ。鳥類の。私はさりげなくピヨット君から視線を逸らした。
「マクベアーさんの住まいで花を育てて、大地蜂飼育を考えているんですがよろしいでしょうか?」
「いいよ」
自分のたてている計画に夢中なのか、私の行動は追求されなかった。
「大ガエルを高魔力に育てたいんですよね」
管理して高魔力所持に育てていけるらしい。マクベアーで花を育ててその花で大地蜂を育ててその蜜の多分に含んだ水で大ガエルを育てるらしい。
大地蜂はマクベアーのごはんにもなるらしい。
花と蜂だけでマクベアーのごはん足りるんだろうか?って思っていたら、普通に他のごはんもあげていいらしい。
「そう言えば、その目的は?」
「甘めの美味しいクリームが採れるんですよ」
うん。
食は大事だ。
「ところで、マクベアーさんの存在意義ってなんだとお思いでしょうか?」
マクベアー?
それはもちろん、もふもふ要員兼運動仲間?
まだまだお子様だし。
なんか、残念なモノを見る目で見つめられた。
「あぎゃ様はたぶん、第一迷宮の戦闘隊長要員のおつもりですよ?」
は?
怪我したら危ないじゃん!