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湯たんぽと臨時癒しのサビ猫ちゃん

 マグロちゃんはお持ち帰りいたしました。

 ホナミ氏にはごねられたし、ちょっぴりマグロちゃんも気にはなってたみたいだったけど、名前をバカにされたと認識した途端距離をあけた。

 でもな。

 マグロって名前にあり得ない発言は私的には納得だったりする。納得っていうか、同意ね。マグロちゃんはそれでもそれが不満だったらしい。マグロちゃんはマグロって名前が好きなんだねって聞いたらにっこおっと笑ってくれたのでホナミ氏がショックを受けていていい気味である。(その隙にホナミ氏を撒いた)

 おっさんが言うには数人は隔離状態で生き残りがいるが長くはないだろうって、マグレッチェの祝福の駆除が進められているからと。

 自由に逃げれるのならともかく隔離されているのはそれすら禁じられているからだと。そのまま生き延びることを禁じられているのだと。

 ああ、嫌だなと思うけれど、私は正義の味方ではないし、じんわりと見捨てる罪悪感を感じながら同じベッドに眠るマグロちゃんを抱きしめる。

 連れてきて、ほんとうによかったのかどうかはわからない。

 マグロちゃんはマグレッチェの祝福以外食べれるから大丈夫だけど、マグレッチェの祝福を食べれないと体に悪いとかないのかなとも思う。

 他の物を食べることができるなら問題ないと言われたけどね。

 でも、帰りたかった家族から引き離したのも事実で、死しか待ってなくても一緒が良かったんじゃないかと気にかかるんだ。

 子供の体温は温かくその鼓動に私は眠りに落ちる。




「おはようございます。街に行ってらしたそうですね。物価チェックしましたか?」

 朝日課終えて朝ごはん終えた頃にサビ猫ちゃんがやってきました。超眼福です!

 って物価チェックしてない。

「小麦粉はやはりそこそこの値段がつきましたよ。まだまだ人脈が薄いので少々経費がかかりましたが悪くないとっかかりになったと思います。年間提供量の算出はまだ無理ですよね」

 ツラツラと営業会話が続きます。

 無理です。

 まだこの地に来て二カ月過ごしてないのに年間計画は立てられません!

 困り気味な様子を察してくれたらしいサビ猫ちゃんはピクンとヒゲを揺らしてかわいいです。

 ああ。悩殺される。街に行った情報を得てすぐにきてくれる行動力も素敵。

「今年はやはりサンプル品と思って、こちらも人脈構築、販売先構築に力を入れていきますね」

 サッと渡されたカタログ。なんか表示価格下がってない?

「安定供給を求めての先行投資ですね。お客さんへの期待値の高さですとも!」と続けられた。やん。嬉しい。

「商品価値はあるんだ」

 確かに食料に価値はあるって聞いたけど、クイック・クックやピヨット君からはいい評価は出ていない。

 サビ猫ちゃんの評価との差がイマイチわからない。

 いや、サビ猫ちゃんも品質価値に対しては評価厳しかったっけ?

「ありますとも! なぜ、そんな疑問を……。ああ! わかりました! 魔王領は揺れぬ肥沃な大地を誇ります。それ以外の地は強いものがいなければ土地が安定せず、食料の安定供給を行うことが難しいのですよ。魔王領からすれば、劣悪な食料であれ、外においては価値が高いのです!」

 うーんと確かにそう言ってたかも?

「ケットシー商会なら一定の安定供給源くらいあるでしょうに」

 ピヨット君に言われて、サビ猫ちゃんは頷きつつにこりと笑う。にこやかな会話なんだけどなー。


「既存の在庫の仕入れ先と販売先はすでに決まっているんですよ。しかし、食料はあらゆるところで不足し求められます。我らケットシー商会では顧客厳選が厳しく扱う商品の種類も限られます」

 あれ?

 カタログ充実しているよね?

「お客さんにお見せしているそのカタログには専門的なこだわりの品はほとんど掲載されていません。あくまで生活必需品、そして必要雑貨、少しの娯楽物で少々」

「システムキッチンにシステムバス!?」

 必需品だと!?

 いや必要だけど!

「異界からのお客さん達には高人気商品ですからね。あと、エネルギー変換キット」

 にっこりと至福時間。

 もーふーりーたーいー。

「計算だけはされてまして、あの小麦に関してはあの品質、あの量で十万となりました。次の収穫時期がいつ頃になるのか、もう少し安定供給の可能性が見えれば多少は変動があるのですが、まだ、先の話ですね」

 まだ、二カ月目だからね!

 本来、そんな予測が立てられるのは三年目以降じゃないかな!

 うーんと現金としてカード入金して貰うよりシステムキッチンの分割払いに回してもらっとこう!

 その提案は受け入れられた。

 面倒な経理の一部分はサビ猫ちゃんに押し付けときたい部分もあるしね。

 多少、私にマイナスがあるとしてもサビ猫ちゃんが通ってきてくれる限りメンタルマイナスは存在しない!

「街では少々騒ぎになってましたね。森に無差別の転移陣がいくつか展開されていると」

 ポーンと飛んじゃう転移陣を少し道から外れた場所に仕込んだのだ。

 あのホナミだけが特別ではないと示すために。

 あと、本部の戦闘狂(バトルジャンキー)のために。

 それぞれ一回こっきりの使い捨て陣だけどね。

 マグレッチェの祝福撲滅の為に森に入った街人が数人ポーンと飛ばされているらしい。

「憤慨している住人がやはり多いですね」

 そう言いつつ、サビ猫ちゃんは苦笑いだ。

 陣を敷いたのはリア充上司様の勢力範囲でのみ発動する簡易陣。逆転移陣ではないことをありがたがるべきだとピヨット君は設置時に言っていたな。いや感謝するのは無理じゃねって思ってたんだけど、第三者的にはそっちなんだなぁと感じる。

 勢力的にリア充上司様よりなのも大きそうだけどね。

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