過剰反応とマグレッチェ。お風呂欲しい
橋向こうの散策結果はピヨット君が不愉快げ。
「どうしたの?」
「マグレッチェの負の遺産です。これでこちら側の魔獣達がやたらと弱いのがわかりました。こちらで狩った魔獣はあまり食用比率を高めないようにしてくださいね」
ぶちぶちとツル植物を引きちぎり手もとで燃やしていく。ピヨット君が過激だ!
『魔力を流し込めば自壊しますし、橋そば二キロにはまだ来てませんよ』
ノンカンさんの言葉にもピヨット君はイラッとした表情を見せた。
「マグレッチェの負の遺産の無駄に強い繁殖力は魔種の敵です!」
ノンカンさんもそうねと柔らかくかわしながらツル植物に魔力を流し込んでいる。
「魔種の敵なんだ」
「ええ。食せば体内の魔力を分解し、弱体化させるんです。普通は食べれば、強くなりますが、コレは違います。世界を維持するものに魔力があるのに最終世界維持魔力をも分解し、世界崩壊を目指したのが『花祝の姫王』と呼ばれる魔王マグレッチェです!」
ハナホギノキオウ。
ちなみにうちのリア充上司様は『黒風の魔王』と言う通り名らしい。通り名は複数あったりして『道化庭師』と呼ばれたりするとか。うん。魔王っぽくないね!
花祝の姫王は魔種すら、生きるもの全てを滅ぼそうとした魔王で、魔族他勢力の魔王にも憎まれているらしい。魔王様達にその感覚があるかはわかりませが。という注釈付きで。
「負の遺産をなくすのって難しいの?」
それだけ多く嫌われてるのなら、しかも見つけ次第焼却するくらいだし。なぜなくなっていないのだろうか?
『領主様、大地は揺れ、たやすく沈みますわ。人は安定している土地で土を耕すことが叶いません。それが叶うのは魔王が活動する停滞期なのです』
「ええ。マグレッチェは人の心を掴んだ魔王と言えるでしょうね。魔王として立つことで大地を停滞期へと導き、食用に足る繁殖力の強い植物を人に与え、その植物がある事でそれを食べる獣が増え、またその獣を食べる獣も増える。その上、魔力を分解する性質ゆえに魔獣達は弱体化してゆくのですから」
ノンカンさんとピヨット君が説明してくれる。
繁殖力過多で、即食用で、世界情勢は田畑を作ってもいつ地震や水没するかわからない。うっわ。農耕発達する余地低くね?
しかも、この世界タルトやパイの花や猫の抜け毛が食用だったりオカシイもんね。
カエルの体液がバニラ風味のクリームやチーズになるのを想像しながら生きろってまず無理。
マグレッチェの負の遺産みたいにつるのコブが、根っこが、葉やツルの部分が食用に最適と言われた方が受け入れやすい。
『黒風の領は変り地として有名ですわ。あまり、あたり前とは思われない方がよろしいですわ』
ノンカンさんから一言いただきました。
そうだよねー。
実は下の道に人の気配があります。
初遭遇する街の人って感じでちょっと興奮してたんだけどね。
「ピヨット君、アレ、ポーンとやっちゃえる?」
街の人(成人男性)をポーンと南方本部付近の森(飛ばし設定位置がそこらしい)に飛ばした結果、小汚いちびっ子をゲットしました。
橋向こうからこちら側に連れ帰った辺りで血を吐いたり、熱を出しはじめたりしてパニックしました。
子供虐待反対って気分で動いたけど、コレって虐待したの私ってこと?
マグレッチェの民ですから魔力濃度に反応して死にかけたんだって言われてさすがの私も反省した。
連れ帰りはピヨット君的に反対だったんだなぁ。
言ってくれないとわかんないし、意識ないお子様を置きざるのは良心が咎めたんだよね。ノンカンさんも止めなかったし。
で、「小汚いから」とおっさんが子供を池に突っ込んだのを誰も止められなかった。
「おっさん!?」
マグレッチェの民だからか!?
「いや、小汚ねぇし、たかだか魔力濃度酔いの反応だし、部屋に持って入って寝かすつもりだろう? 洗っとかねぇと臭いとれないぞ?」
部屋をダメにする気は、ないな。
「お前らも移った臭い染みつく前に落としとけよ」
え?
臭くなるのはいやぁあああ!
「前は、簡単だったが、今回も簡単か?」
おっさんが子供を見つめながら、そんなことを言っていた。
少し、恐かったのでおっさんから子供を奪っておいた。
早くシステムバスをサビ猫ちゃんから買える資金が欲しい!!