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新人事務員と最初が肝心なマッド

「ポーンとヤっちゃいましょう」

 にこにこと青い髪に赤を散らした男の子が過激なことを言う。

 彼はピヨット君。

 ひよ様の長男だとの事。

「迷うことはありません。初動で転移陣に引っ掛けて吹っ飛ばせばイイんですよ。本部のヤンチャもオモチャが来て満足。こちらも内部侵入を抑えられてハッピー。もらした侵入者くらいなら物量と現迷宮の住人でなんとかなるでしょうし、掃討部隊もそのうちに着くでしょうからね」

 にっこにこで言われてそれでいいかとも思うんだけど、だけど。確認!

「いきなり強いのくるようにならない!?」

「最初の冬はもちますし、強化する時間はあります。イイですか」

 ちらちらと人に準じた指が振られる。

 ピヨット君は背に翼を持つ天使形状で翼魔獣、ヒトとのハーフになるらしい。

「本部に飛ばされた侵入者が生きて彼ら自身の拠点に帰ることのできる幸運は僅か。次々とより高度な戦力を投入する余裕が彼らにあるかどうかでしょうね」

 ふふんと鼻で笑って見せるピヨット君は自信満々だ。

「範囲陣で引っ掛けて吹っ飛ばせば楽しいですよ!」

「デメリットは?」

「使用のために事前魔力充填が必要ですね!」

「ほほう」

「もちろん、一日に一回なんて使用回数より稼働後は侵入者がいる限り一時間に一度発動が理想的です!」

「発動魔力は?」

「自然蓄積分と侵入者からの搾取で一度目の発動におおよそ三十分かかるというところでしょうか。つまりさそいこんでブッ飛ばすトラップなのです。という訳で」

 という訳で?

「サクッと範囲陣を敷いて魔力充填しましょう!」

 フクロウ樹の袋を丸めたものでピヨット君の頭をボールがわりにしてみたよ。

「なにするんですか!?」

「他にも充填物があるし、魔法は特訓中なの。今、充填物が増えると私、たぶん、許容量オーバーなの。主に思考容量的に」

「わかりました。ではとりあえずこのピヨットが転移陣を仕込みましょう」

 いや、待て。解決してないだろ。ゴリ押しか?

 ひよ様の長男でもモフ成分よりヒト成分の多いピヨット君の存在価値はおっさんより勝る程度だからな。

「時々、吊り橋守り様には領主として、つまりこの地の管理者として補充充填はしていただきたいですが、ノンカン女史やチャッキー氏方に魔力充填を手伝っていただきます。まぁ発動した時に転移に巻き込まれにくくもなりますしね」

「どうやって?」

「女史は魔力を織ることができるので、陣にその糸を借り、仔蜘蛛を生け贄にすればいいだけです。チャッキー氏方も術の基点に牙や爪、頭骨を提供を定期的にですね……」

「え」

「彼らも魔力は所持してるワケです。ただ空間に関する干渉力は異界からの迷い客である貴女が一番効率が良いんですよ。出来るだけ早く陣を仕込んでおけば彼らに協力も求め易いでしょう。彼らの注ぐ魔力ではおそらく一回使用可能にするのに一月から二月かかるでしょうし。ただ、まだ数ヶ月有りますからね。そのあたりは女史に相談しますね」

「そっか。私だけがしなきゃいけないワケじゃないんだ……」

 ピヨット君の眼差しがなんだか変わった気がするんだけど、なんでだ?

「全部、自分で出来ないと不安を覚えるタチですか?」

 私は慌てて頭を左右に振る。

 そんなこと思ってない。

「まぁ、ほぼ一人開始ですし、もう一人おられたと言ってもあの方は部外者としての作業者ですから、わからないでもないです。自身で知っておくことも大事でしょう。ですが、使える部下は使ってこそですよ」

 あの方、って視線の先はおっさん。

 部外者なのか。そうなのか。リア獣上司様の部下でもなければ、リア充上司様の部下という訳でもないってことか。ナニモノ?

「ですから、まず、魔力強化、魔法法則学習、周囲の環境情報をノンカン女史に収集依頼を出す。貴女がしなくてはいけない魔力充填を行う。そして、もふもふを満喫する。というプランでいかがでしょうか?」

「リア獣上司様による戦闘訓練対策も予定に入れてください」

「それは、……死ねますね!」

 軽やかに笑ったピヨット君はおっさんに寝床を造れとせっついていた。

 拠点はここなんだから客間や部下用のスペースを用意しろとせっついている。

「おい、間取りに希望はあるか。小娘」

 無理な間取り描いて渡してやろうか。というか、確認とってくれてありがとうおっさん。

「必要となる部屋は考慮に入れるべきです。広間と客間、客室、訓練室事務室、資料室は分野わけしたいくらいですよね。せめて内部仕切り。道具の手入れ部屋も必要でしょうね」

 ピヨット君……。

「貴様、実はのっとりにきたかぁああああ!?」

「まーさーかー。所持資料がこれ以上増えたら処分されるのでよい置き場は求めてましたが、吊り橋守り様にもしっかり利点はあるんですからいいじゃないですかー」

 ウチは物置か!

「ちゃんと事務雑務もいたしますよ?」

 こてんと傾げられても騙されないからなー。

「実際、このピヨット戦闘力皆無ですからねー。脳筋戦闘狂メインの本部は居難いんですよ。しかも、ここでなら頑張ればブリュガノーが食べれるんですよ! その上、理想の資料室ややってみたい術式や魔方陣試し放題! こんなおいしい勤務地はありません」

 待て。正直すぎるから、ちょっと待て。ピヨット君よ。

「お給料は?」

 いらないって言われてもおかしくない気もするけどね。好き勝手やる野心がいっぱいだ。

「月二匹ぐらいブリュガノーが食べられれば余裕で高給です」

 うっとり言うピヨット君に私とおっさんは微妙に距離をとっていた。


 ピヨット君、可愛いのに残念枠か。


「あと、魔方陣とか実験は許可確認をとるよーに。転移陣もノンカンさんから話し通ってからの決定ね!」

「えー。ココはポーンとヤっちゃいましょうよー」


 ポーンとじゃ、ないの!


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