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食糧調達と足りない味

 

「コレ、カエルじゃないか、カエル!」



 トルミエと言う生物を見にきた。

 そこにいたのは約一メートルほどのカエルだった。

 そう、排水沼に棲むカエルであった。

 ああ、もう。確かに近所だよ。近所!


「おう。こいつらから採取した体液をろ過槽にかければミルクが、そして、それを煮沸醗酵させればチーズができるぞ。専用の醗酵器もあるが費用がかかるな」


 軽々と抱えられたカエルはひと鳴きした後観念したかのように身体を弛緩させてほのかに白が勝つ桜色の液体をじわりじわりと滲み出させていた。


「コレ、これを採取すんだよ」


 おっさんがいい笑顔でその液体を掬い上げる。

 いや、まて。それは自己保身のための毒とか言わないか!?


「ろ過槽を通せば濃厚な風味と甘さがウリのミルクだ」

「毒性は?」

「ろ過槽通せば……」

 おっさんはろ過槽の必要性を推す。それってつまりはそういうことだろう。

「毒ってことじゃないかぁあああ!」


 からから笑って喉ごし良くカッと腹で熱くなる刺激が堪らんとか言われてもヤバいモノにしか聞こえないって!

 危ない危ない危ない!

 そして、大鍋にたっぷり満たされた毒液。


「おっさん、ウチ、ろ過槽ないよね?」


「ないな!」


 爽やかに言い放つおっさんを殴ったら手が痛かった。地獄に堕ちろ!



 加熱すると多少毒性は抜けるらしい。

 その加熱法は直火ではなく、魔力加熱だった。

 なんか今月は魔力強化月間かよ!

 いわゆる灰汁に毒成分は集まるからそれをキレイに掬いとっていく。その間も魔力加熱は続ける。

 キツい。そう、コレがまたキツい。

 だって粉砕機に魔力を叩き込むのは力いっぱい全力一点集中。もふもふ聖域は自分を中心に放射状に気絶するまでだし、精密性はあまり必要じゃない。だから、一定の温度を伝え続けるように魔力調整するってキツい。

 昼前にはじめた灰汁取り加熱は夕暮れぐらいにようやくおっさんから合格が出た。疲れた。

 ちょっとでも毒が残っているのはイヤだしね。

 カッと熱くなるミルクなぞミルクと認めない。心狭くて結構だ!

 聞くところによるとろ過槽なら指定フィルター入れて流し込むだけだとか。

 技術の加護を金の力で手に入れたい!

 資金のメド?


 そんなものは、ない!


「あと一晩かけて自然冷却すれば口にできるぞ」


 そう言って差し出されるまずい飲み物。強制魔力回復ー!

 ひと息ついて冷蔵庫から肉のかたまりを引っ張り出す。

 野うさぎの肉だ。血抜きして内臓抜いて蜂蜜に漬け込んで三日目ぐらいの肉。

 薄くカットするか、厚めにカットするか悩ましい。


「よし。小娘!」

 カチンとこない訳でもないがそう呼んでくる。

「こいつと一緒に焼こう!」


 おっさんの手のひらにのっていたのはフクロウ樹にたわわに実っていたフクロウの実だった。


 焼くの!?


 皮を剥かれ輪切りにされていく果実の実は鮮やかな黄色。フクロウっぽさはなくただの果実で少し安堵する。熱したフライパンに輪切りフクロウの実をおっさんが落としていく。

 覗き込めば、フライパンの底にひたりと溜まった黄色い液体……フクロウの実は熱に溶けていた。

 結局、薄切りには厚く、厚切りステーキというには薄い半端な厚みに切った野うさぎ蜂蜜漬けをフライパンに落とす。


 ジュウッと油のハネる音がした。


「油!?」


「フクロウ樹のこの実は油っぽいな。加熱に固体を保ってられないせいかして粉砕機は通せないみたいだぞ」


 おっさんなに試してんの!


 少量の塩。水気を飛ばされ砕かれた香草。食べられるとわかっているきのこ(粉末)。

 すべてフライパンに振り落とす。

 贅沢は尽きず、サラダ欲しいとか根菜食べたいとか欲求が湧きあがる。あと、魚類の煮つけ食べたい。醤油も味噌もないと思うけどさ。人魚っぽい上司様も居たかな。魚とれるか調べなきゃいけないか。水場は川も湖もあるしね。いるんじゃないかとは思うんだ。美味しいかどうかは別にして。


 夕暮れ間近だし、今日は無理。

 明日は水場を確認していきたい。わかりやすい場所からはじめよう。


 今日はもう、昼と晩ごはんを兼ねた焼き肉を食べたらみんなにブラッシングタイムだ!



「……塩味が、足りなかった?」


 なにか一味も二味も足りない出来栄えだった。


「もしかして、胡椒?」


 塩の有無は料理にかなり影響する。岩塩を入手できてる分、マシというか、食生活は改善されてはいる。

 でも、私が成長した場所は飽食の国だ。

 一般的な消費者は特に苦労することなく舌に刺激を覚えていく。基本的な調味料に化学調味料。

 朝焼いたピザもどきで肉を巻いて、やっぱり物足りない。

 確かにジャンクフードっぽい味のものも冷蔵庫には入っている。リア充上司様の庭に実った花や実だ。

 スパイスたっぷりのアップルパイやミートパイはまるでひまわりのように咲いていた。(ちなみにものすごく美味しい)

 見上げた樹上に咲く花は薄くスライスされたポテトの素揚げ。

 アレで根菜食べたい欲求が出てきたんだよね。


 ああ、遠い目になっちゃう。


 ちらっとおっさんを見ると掬いとった灰汁を肉に混ぜて食っていた。


 毒を刺激利用だと!?



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