表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/83

おしゃべりにゃんことキビシイ商売


「味付きの塩ですか」


 味付き塩を見たサビ猫ちゃんの反応はイマイチだった。

「悪くはないのですが、これはもう少し特別感を出してからでないと商品販売は難しいかと思います。難点のひとつは運搬ですね。コストと中身が折り合わないんです」

 申し訳なさそうなサビ猫ちゃんに「いい。いい」と私は手を振って見せる。大地蜂の蜜に関してもネックは容器にかかるコストだった。

 小麦ちゃんの食用粉は品質低めだけど、物量はある。加工した甘パリを口にしたサビ猫ちゃんは「これなら商品になると思います!」と言ってくれた。

 品質の低さを気にしてると言えば、サビ猫ちゃんは髭をピクピク動かして悪い笑顔。

 やだ。かわいい。悶え殺す気?

「加工可能で誤魔化し可能ですし、食糧危機に陥っている集落はいくらでもありますからね。量のある食品は捌きやすいんです。量が有れば取り合いに巻き込まれることも少ないですしね」

 少ないものは少ないもので食道楽や好事家に売るらしいが、それには品質が低すぎるらしい。

 少ないなら品質は高くと望まれた。うん。理解はできる。

 ローンの五万を支払ってから、二万のブラッシングブラシを購入。いつかは十万の高級ブラシ!

 一番品質の低い粉を全部買い取ってもらう。ただし、支払いは一部以外は来月払い。ケットシー商会本部で査定金額をつけてもらうらしい。

「申し訳ありませんが食品流通はまだまだ勉強中でして」

 交渉先によってはツテの有無があるなしとかもあるのでと濁された。わからなくもない。


「侵略予定してる人たちはどうしてここに来ようとしてるの?」

「この辺りの土地が安定し、食料豊富だからですね」

 サビ猫ちゃんは野ねずみの毛皮を検品しながら答えてくれた。

 この世界は地震が多く、安心して作物を育てられる場所が限られているそうだ。

 だから、安定している土地は貴重でそこから得られる土地の富、つまり食料を安定して得ることができる環境は喉から手が出るほど欲しいわけらしい。

 リア充上司様やその側近様方のおかげで広範囲安定してるらしい。

「むこうとしても敵わないのはわかっているんでしょうけど、挑戦せずにはいられないんでしょうね。一応、相手が魔王領となりますと攻めることに躊躇が減る人々は多いですから」

 ハイリスクローリターンなんですが不満を内に溜めさせないためかもしれませんし、舐めてるだけかもしれません。と続けられた。

 理由はいきなり戦闘力無茶な差を突きつけてきたりしないリア充上司様の方針に関わることらしい。

 場所によってはいきなり問答無用で強敵が現れ、国ごと石化させてしまうとかも有りらしい。怖いわ!

 そう。

 リア充上司様は魔王様だ。

 ただのチャラ男ではない権力を持っている。

 倉庫の受け付けで部下たちと博打に興じてるただのダメンズではなくて、人類の敵とか言われちゃいそうな魔王職のお人だ。

 趣味は木彫り彫刻と園芸。……なんで魔王やってるんだろう?


 リア充上司様は自領を守ってはいるけれど、侵略予定の人達の集落は本当に境界ギリギリにあるらしく、現在でも侵入していることはいるらしい。

 野草や食用の狩りに。いわゆる黙認状態だ。と言うか、攻めてくるならウェルカム状態みたいだしなぁ。

「ただ、彼らが住まいを領内に築くことはできないんですよね」

 領内は影響力の範囲内という事らしく、侵入者とは当然敵性存在なので範囲内に入って来ただけで実はダメージを食らうらしい。

 回復魔法の効力が落ちるとか、疲労が溜まりやすいとか、生命力が削られるとかだとか。

 吊り橋を目指す人とはそれぐらいのダメージをものともしない人たちという事らしい。それでも、出せる能力は落ちていくらしいけど。

 確かに休めない場所に町をつくる利点って難しそう。だから、休めるダメージを受けない場所に集落はある。

「安定して狩りができるあの土地はそれだけで価値があるんですが、欲求は際限ありませんからね」

 橋むこうにいるのは野ねずみ野うさぎイノシシ、それと石喰いとガゼラと呼ばれる妖精だとか。

 魔獣入門書に全部書いてあったよ。

 魔獣入門っていうより、コレ動物図鑑だわ。

 石喰いとガゼラは魔物っぽいけど。

 情報を貰いつつ、今回も試供品をいろいろもらった。

 調味料セットと料理壷という壷が今回のお試し品だ。

 塩が、意外とがっつり塊だった。使うときにナイフで削るものらしい。

「今回の小麦粉の販売でシステムキッチン代をカバーできてしまうと他の商人に専任を奪われてしまうかもしれませんね」

 サビ猫ちゃんがそんなかわいいことを言うから。「えー。人見知りだから困るよ」

 と言いながら一番近所の集落で売っているという服を二セット購入した。上下と外套帽子付きだ。

 それに最終本気で欲しいブラッシングブラシは桁が違う事実をサビ猫ちゃんはまだ気がついていないようだ。

「そうですか?」

「うん」

「そうですか。じゃあ、次はお風呂なんていかがでしょう。他にもいろいろ準備できるよう勉強を続けますね。次回は設置罠と装備のカタログ、そうですね、料理指南書も持って来ますから、ご期待を!」




「あの、カタログのこの本……」

「あっ、薄い本シリーズですか。ちょっと割り高ですがコアな方には人気ですよ。図解がわかりやすいとか」

「こ、コア?」

「あー。性癖編や技術編などは実にマニアックだと評判です。そうですね。料理指南書が数種類の料理レシピが載っているとしたら薄い本に載っているレシピは一品。材料ひとつひとつ手順ひとつひとつの図解がされていたりするんです」

 サビ猫ちゃんから薄い本二冊購入しました。

『はじめての魔力』と『はじめての異世界散歩』を!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ