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給料日と諸々雑務①リア充側近様のお話

 


 二十個入れられる収納袋に『小麦粉(食肉)』星三つマーク入りを五袋、『味付き塩(肉汁)』を四つ。『味付き塩(香草)』を四つ。『お湯に溶かすスープ(野ねずみ干し肉入り)』を九つ。『小麦粉』以外はもったいないほど小袋だ。

 小麦粉は二袋はリア充上司様に提出味付き塩もひとつづつ提出。あとはクイック・クックに見せてウケを狙うのだ!

 ついでに食器調理器具分けてくれないかと企んでみている。無理かなぁ。


 結論を言おう!

 調理器具セットゲット!

 半端物食器詰め合わせゲット!

 おっさんが物欲しそうに見ていた酒樽(中身入り)ゲット!

 バラサイズ容器八点セットゲット!

 香草種子詰め合わせパックゲット!

 あと縮小収納キットをもらった。

 実際袋の口より大きい物は縮小収納キット(容量は個体で十個まで)に入れて持ち運べる。

 つまり荷物のサイズを先々デカくできるのだ!


 それにしても半日の本拠地滞在は濃くも有意義なモノだった。


 おっさんに連れられて高速移動。

 途中記憶が飛んで気がついたらリア充上司様のそばにいたリア充側近様が私を見ていた。

「大丈夫ですか?」

 頷く私についてくるように言って彼女の執務室に通された。

 ちょっと緊張する。

 座り心地のよいソファーを勧められ、座ったところにお茶を差し出され、お茶菓子もトレイに並べられた。どれも美味しそうだ。


 うん。しあわせー。


「報告書を確認させていただきました。生活の方はどうにかやっていけそうですね?」

「はい」

「なによりです。ところで、確認させてもらってもよろしいでしょうか?」

 なにを?

「帰りたくはありませんか?」

 え?

「自分がいたであろう世界に帰りたくはないのですか?」

「帰ることができるんですか?」

 繰り返された言葉にようやく意味が頭に入ってきた。そんな可能性、考えていなかった。

 ピリッとした苛立ちが心の底から滲み出してくる。

 リア充側近様は小さく笑う。それが余計にカンに障る。


「主人様はおっしゃらなかったのですね。失礼いたしました。不要な問いのようです。途中で役割り放棄されては困りますから、失礼ながら確認を」


 帰れる?

 小麦ちゃんや他のもふもふたちやノンカンさんと別れて?

 ううーん。

 ないなー。

 どっちかって言うと帰ってほしいとか思ってんじゃないだろうかと邪推してしまうなー。


「本来は直属上司であるあぎゃさんの元に御給金を受け取りに行く。もしくは自動振り込み。それが正しいスタイルです。ですが、あぎゃさんでは意思疎通が難しく、あぎゃさんの事務用側近であるひよさんも現在橋復旧に向けて部隊編成及び諸雑務に追われていますので代行説明をさせていただきます。そうですね。来月もこちらにいらしてくださいね」


 にこりと微笑まれて頷く。

 ひよさん?

 あぎゃさんがリア獣上司様ってわかるけど、ひよさん?

 なに?

 そのネーミングセンスは!?

 笑っちゃいけない系!?


「では、やりとりの基本の流れからですね。まずは挨拶。そして、報告書と提出物の提出。今回は鳴き粉とお塩ですね。確かに受け取りました」


 リア充側近様、大丈夫ですかと問うようににこり。

 大丈夫です。私、ついていってます。まだ。


「では、お給料の十万ですね。今月からは相談しながらご自身で管理していってみてくださいね」


 カードが一枚渡された。本当クレジットカードサイズのカードだ。

 十二万六千円。

 デジタルで数字が出ていた。

 あれ?

 四万残ってなかった?

「食費と諸事務費は引かれてますからね」

 あ。おっさん経費か。

「それでは、こちらの交換カードについて説明しますね」

 交換カード?

 差し出されたのは五枚のカード。全部同じ柄で色だ。

 黒地に金縁取りで烏が刻印されている。

 派手だ。


「あぎゃさんの領に属しているという証明カードでもあります」

 リア獣上司様の形とこの絵は違うんだけど?

「そのカードをもって、この本拠地内で物資の交換を行います。主人様の支配地は広く、人材もまた幅広くおります」



 しばらく、リア充上司様最高であるのです系の賛美が続いた。



 要約すると余った特産品を交換しましょう。対価が思いつかないならカードで。ってことらしい。

 カードはリア充上司様が給料日に給料と一緒に一人五枚プラスアルファで配っているらしい。実際はそういう雑務はリア充側近様が受け持ってるようだけど。無論貰えるのは領主クラスか本拠地勤務でらしい。というわけで一応領主な私ももらえた。


「衣料品や武器、意外な出品物もありますよ。食品系は原料より、調理済み食材や酒類が人気ですから、新規で参入するのは難しいかも知れません」

 新人が持ってきたものを捌くことは難易度が高いらしい。うん。しかたないね。


「ところで」

 ん?

「この侵入者用ルートについてなのですが」

 あれ?

 ダメだった?

 いや、うん。難易度低すぎだとは思うけど。まだ色々とうん。足りなくて。

「これではあぎゃさんの部隊の方々が防衛に入り込むのも窮屈ですよね?」

 あ?

「もちろん、気疲れさせるためにはなかなか有効だとは思いますが、距離が短いですね。ここだけが入り口というのは良いと思います。あぎゃさんの部隊なら上から飛び降りて橋付近に部隊を急降下させてせん滅する事も可能でしょうし」


 初手としては悪くないが、難有り指摘でした。

 だって、リア獣上司様ちっちゃいんだもん!

 つい参考サイズが小さくもなるよね!?


 短いということに対しては側近様は笑って「吊り橋がこの通路の五倍あるんですよ?」と最初の狭い道二十メートルを指した。

 強度の設定もあるので一気に雪崩れ込んでくることはないとか、諸々説明を詰め込まれた。あとでまとめ本をくれた側近様マジ出来た人だ。

 入り口の上に飛び降りに適したスペース開けよう。

 上にルート取るか下にルート取るかはまだ悩んでるんだけどね。


「来月は適性試験も行いますから、こちらの魔法入門書と野草、魔獣の入門書をどうぞ」


 え?

 側近様はにこりと三冊の本と一通の封書をまとめてから私の袋に滑り入れた。

 テキセイシケン?

 魔法?



「それでは、クイック・クック。彼女のお世話をしてあげてくださいね」


「はい」



 いつの間に来てたんだ!?





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