マクベアーと周辺散策
ほぼ半月近く訓練を受け相手を続けてくれているマクベアー。
ごはんをあげているのもあってようやく懐いてきてくれている気もする。
クイック・クックに引き渡さなかったのもあるのかも知れないけど。って思うとクスリと微笑ましい思いにかられる。
「食べられるのはやっぱりイヤだよねー」
マクベアーの仕切りは半分屋根付きで元のサイズよりふた回り広がった。
それでも仕切りを壊すことが難しいとは思わないんだけど、一度脱走して以来大人しくなったんだよなぁ。
がけっぷちでお尻ペッタンしてプルプルしてた姿が忘れられない。
まあ、マクベアーの体の幅よりは細い階段は半分風化気味で一部ロッククライミング能力が必要なんじゃないかとも思う。
「ぐるっとこうだからね。突進しちゃダメだよ」
マクベアーの体毛は小麦ちゃんと比べることも出来ないくらい違う。
だって基準が違い過ぎる。
小麦ちゃんは長毛のふわふわさらさら。長いところなんて私の身長すらこえそうだし。
マクベアーは体のわりに短毛。チクチクする毛先は肌を貫きそうだ。手を当てれば手首がかろうじて埋まるくらい。これはこれで愛おしい。
それに、たぶん、意気揚々と木登りしたがおりれなくなって泣きじゃくるタイプなんだってわかれば、うん。ただでさえほだされてるのに超萌える。
振り返れば、茂みや高い木々。白い道の先に丸太小屋。小屋の手前にマクベアーの仕切り。それをおなかに敷いて日向ぼっこ中の小麦ちゃん。やだ。超かわいい。小麦ちゃんも狭いとこ好き?
でも小麦ちゃんには狭すぎて入れないよねっ。
ああ。本当に思考力溶ける!
マクベアーをぽふぽふ撫でて家の周りを歩く。
家の周りと言うより敷地の外周かな。
小麦ちゃんの抜け毛とフクロウ樹から採った袋で作った採集袋に生えてるキノコを摘んでは入れていく。
香りの良い葉も位置を覚えておけばあとで採りに来れる。茶色いのとか、黄色いのとかピンクの水玉模様とかありえないキノコもあるけど、一応採っておく。おっさんが触るだけでやばいのはたぶんないと言ってたし。
だからって言っても食べられるかどうかは別。しかし、しかしだよ!
私には粉砕機という秘密兵器がある。
色々謎構造なんだけどね。たぶん、蚤も食用と非食用が出てるからフクロウたちは分別したいらしいが、認めない。蚤は食用と認めない。繰り返すが蚤は食用と認めない。
悲しそうなフクロウ達への妥協案として『蚤』ラベルと『蚤EX』ラベルを作っておいた。何が『EX』かは謎だしどっちが食用かも不明だ。ふと、気がついたんだけど、フクロウたちって書いた文字の意味もわかってるんだよね。食用と非食用の私の区別も把握しているみたいだし。漢字でもひらがなでも気にせず貼ってるけど、まったく違う言葉を書くとぐりんっと頭を回して私を見てくるんだよね。超かわいい。
食べられるけど、毒って愉快な展開はないと信じてる。
まぁ。万が一にも有毒なら毒な時点で食用に適してないよ!
キノコラベルにはキノコの外観を頑張って写生したものを描いてある。あとで食べた時、日誌に味わいも残さないといけないしなー。記録作成めんどくさい。
そして、粉砕後は水分どこいったって最近は思う。
体感三十分も散策すると採集袋はいっぱいになる。いっぱいになった採集袋はマクベアーにつけたおっさん提供の革紐に結びつけ、次の採集袋を手にする。
売り物になる可能性があるなら住まいそばから探索は大事だと信じてる。
先々の希望にかけて!
せめて食生活改善。
フクロウがマクベアーに付けた袋を回収して羽ばたいていく。
気がつけばフクロウは片手の数を超えていた。
ただサイズはアウリーとグリームより小さいがしっかりしている気がする。同じ荷物を運んでも安定が違うんだよね。おっさんの解説は肥料がいいんだろで終わったけどな。
今のところアウリーとグリーム以外には名前をつけていない。
考えてはいるけれど、フクロウたちを粉砕機に突っ込むのは少し悩ましいのだ。
そう、フクロウたちは果実なのだ。
袋葉の影にまるっとした実を複数見つけた時、絶対に間引きするべきだと使命感が芽生えたから。
きっと、目を開けている姿を見たらヤバい。
絶対自分でしめる前に抱きしめて情をわかせて泣く羽目になる。
はぁっと息を吐くとマクベアーがおずおずと寄り添ってくる。押し倒されなくなったのは私に耐性ができはじめたのか、マクベアーが要領を覚えてきたのか……きっと、両方だ!
きっとそうに違いない。
足もとを時々小さなトカゲのような生き物が走り去っていく。
どうもこの住居範囲には大きな生き物は住んでいないようだった。
小麦ちゃんもどこからか通ってきているみたいだし。
吊り橋が復旧してもすぐに侵入者が来るわけでもないし、橋が繋がってもすぐに冬がきて、わざわざ危険度が上がる時期に来ることは少ないらしい。ただ、食糧難だとか、切羽詰まる環境ならその限りではないとおっさん情報。
橋が繋がるまでは向こうのことを知ることはできないのかと思うと不安になる。
あ。
サビ猫ちゃんが来るはず!
そう。サビ猫ちゃん。
野ねずみジャーキーで情報くれるかな?