さえずる小鳥ちゃんとおっさんの労働力
橋予定地そばの広場で小麦ちゃんブラッシング。
つやつやとした獣毛がはさりはさりと揺れる。蚤の数はめっきり減ったと思う。
日々のブラッシング大事だよね。んで、抜け毛はまだ減らない。
ブラッシングを終えて、野ねずみ(色違い)数匹と戯れて(ようやく狩れるようになったよ。私、成長早くね?)花をひらひら風に散らす木の下に立つ。
「こんにちは。協力してくれるっておっさんに聞いたわ。ありがとう。これからよろしくね」
とりあえず、挨拶完了!
モクレイって一種妖精さんっぽいから見える存在かどうかもわからないし、あとで本体用に肥料でも用意してみようかなぁ。なんて考えながらその辺に落ちていた木の枝で地面を引っ掻く。
「やっぱり曲がりの多い道がいいな。落とし穴は曲がった二歩目くらいに欲しいし。落とし穴の途中に横穴つけて花園スペース作るのがいいと思うんだよね」
きっと、花園は広めがいい。
まずは入って来にくく安全な地帯にもなり得る場所。もちろん、ノンカンさんやうちの野ねずみ達にとっての安全地帯。
「二歩目って嬢ちゃんのか?」
「おっさんの」
私のでどうする。
おっさんが地面に描き込んだ思いつきの図を覗き込んでいる。
「落とし穴の深さは十メートルぐらいで真ん中に通路入り口だな。即花園か?」
え?
「まさか。位置はそれでいいけど、横穴は一メートルぐらいの高さで立って歩けないくらいが理想。蛇行ルートで五十メートルくらいかなぁ。ところどころに罠を張ってね」
壁に刃を生えさせてるだけでも多少はダメージになるよね。狭い場所だし。
「難しい?」
おっさんデカいもんな。
「いや。設置以外は基礎料金に含まれてる範囲だ」
ホントかよ!?
どんな労働条件だ!?
ただ、私に不利益はないので沈黙だけど。
「刃物の設置は別料金?」
「どっちかつーと刃物の仕入れが別料金だな」
「そっかー。トラップにいいと思ってさ。あと五ヶ月でどこまで集められるかかぁ」
資金。
『刃物なら前回までの侵入者の置き土産があるよ』
「あ、まじ? それ助かる〜。で、設置は料金内なワケ? おっさん」
「おう」
『その程度でしたらわたくしが設置しても良いですわ。ところどころ錆びを落として設置でよろしいのですよね。領主様』
おっさんとノンカンさんがかぶせてきてうまくいく見込みが嬉しい。ん?
置き土産を知ってるって?
きょろり軽い声のでどころを探す。
ノンカンさんは、うん。そこにいる。
『こんにちは』
ノンカンさんの横に緑の小鳥がいた。ノンカンさん、捕食しちゃダメだからね!
緑の小鳥はこのあたりのモクレイ達のリーダーでプティパちゃん。樹齢三百年ほどの若木だと名乗った。
そっかー。三百年の若木かぁ。
この辺りの一番上位木は上にあるフクロウ樹らしい。ただ、フクロウ樹は前任者が移植した余所者らしいけど。
洞窟内に花園エリアを造ったらプティパちゃんが植樹用の苗木を用意してくれるらしい。
プティパちゃんに水場は欲しいと言われて考える前におっさんがあっさり了承していた。うんまぁ作業はおっさんだし。ちょい釈然としないんだけどさ。最低限の高さとか広さの要望は許容範囲だったし、むしろ予定内。おっさん仕事したがってるし。
井戸の水を流すルートは難しくないらしい。
「排水の行き着くところは落とし穴の底を通してもいいよね」
落下の打撲に隙間からしみこむ水。上までは高くて……、水に潜れば先に進めるルートを残しておく?
いいかも知れない。ざかざか落ちてこられて人海戦術で落ちたトコから脱出されても、まぁ時間稼ぎは出来てるからリア獣上司様の部隊来るよね。移動陣からはチャッキーかノンカンさんが案内につくって話はついてるし。
『あら、でしたなら裏の沼に棲息している大蛙でもすまわせますか?』
最近、散策の範囲を広げているノンカンさんが教えてくれる。デートかよだなんて嫉妬はしない。しないったらしない。大蛙。そうか。裏には沼があるんだった。
「蛙肉は喰えるぞ。まぁ騎乗するには小さいがそれなりに大きさはあるしな」
食肉……。
蛙は鶏肉に近いって聞いた気がするけど、こっちじゃどうなのかなぁ。
っていうか、騎乗って……。乗るなら今は小麦ちゃんだけど、いつかマクベアーが乗せてくれるといいなぁ。小麦ちゃん、大き過ぎるのと猫だからか気まぐれさんなんだよね。もちろん、縛りたくもないし。
とりあえず、花園造ってみてからだ!
そこで活躍予定の大地蜂もどんな大きさの蜂なのか知りたいし。通路が使えない場合使える別通路も用意しなきゃだし。ノンカンさんや野ねずみ達で考えてのサイズだしね。
あと刃物がどこにあるか、モノになるかも大事だよね。
一月目にしてはそれなりにいけてるって思うんだよね。
小麦ちゃん食用粉は三段階評価で上位分増えてきたし。クイック・クックはもっと上質を目指せって言ってきたけど。
うん。
そのためにも、そう。そのためにも。質のいいブラッシングブラシを買うんだよ。これ、決定。
ああ。にまつく。嬉しそうに喉を鳴らす小麦ちゃん!
「腹減ってるんなら肉焼くか?」
「食べる!」
まだまだ解決させなきゃいけないことは多いけど、頑張るぞ!