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強くてニューゲーム!  作者: それいけりょーた
3/11

正直は美しきかな

 正に一息の間に初戦闘が終わってしまった訳だが、これはちょっとやり過ぎたかなぁと思う。

 しかし、狼狽してる間も無いので先程突き飛ばしてしまった女性の元に駆け寄る。

 状況の確認と情報収集が優先だろう。


「先程は驚かせてしまってすみません。私は立花霧雨と言う者ですが、襲われてるのが見えたので助勢に参りました」

「―――あ、あぁ。助太刀、感謝する。しかし、凄まじいな」


 良く見てみると、普通の茶髪だが整った外人顔をしている。美人系だ。

 尻餅をついた状態でフリーズしてしまっていたので再起動を促す。

 俺も色々ツッコミたいが後にしようと努めて冷静に振舞い、彼女を起こしてやる。


「えっと、あちらで倒れてる人は貴女のお連れでしょうか?」

「っっ!? そうだ! リーシャっ!」


 俺の言葉が言い終わるより先に倒れてる人の元へと走っていってしまったので、俺もそれに続く。

 名前から察するに女性だと思うが、女性二人で冒険者の真似事でもしていたのだろうか?


「リーシャ!? リーシャ! しっかりしろ!」


 倒れている女性を起こして肩を揺らしているが目覚める気配は無い。

 見たところ外傷はあまり無いが、頭から軽く血を流している。恐らく、先程の魔物達に吹き飛ばされて頭でも打って気絶しているのだろう。頭を打った人はそっとしておいて自然覚醒を促す方が良いので、取り乱している女性を落ち着けるべく言葉をかける。


「あの、頭を打っているみたいなのでそうやって揺さぶるのは良くないと思います。何処か落ち着ける場所に横にして起きるのを待った方が良いかと」

「あ、あぁ。すまない、取り乱してしまったようだ。落ち着ける場所に心当たりはあるだろうか?」

「それならさっきの小川の辺りが良いんじゃなぁい?」


 イリスからの提案で戦闘前に顔を洗っていた小川へと向かう。

 取り乱していた女性がそのまま倒れている人を運ぼうとしたので慌てて止める。

 絵面的にどうかと思ったので、俺がお嬢様抱っこで運ぶ事にした。

 しかし、気を失っている女性も茶髪のロングで二人共似たような顔をしているので姉妹だろうか? 違いといえば髪の長さと胸ぐらいだ。

 気を失っている方は絶望的な迄に無い。

 大小に貴賎は無いが、姉妹っぽさそうなのにこんなに差が出るなんて女体の神秘は深まるばかりだ。

 そうこう考えている内に小川に辿り着いたので、地面に抱っこしていた女性をゆっくりと寝かせて簡単な手当てを施す。

 元の世界の見様見真似だが、しないよりは良いだろう。


「ふ~、ここなら安全とは言い辛いですが見晴らしは良いので、さっきの場所より幾分かマシだと思いますよ」

「命を救って貰った上にリーシャの手当てまでしてくれるとは……手を煩わせてばかりで本当に申し訳ない」

「いえいえ。多分、そう時間を置かずに目覚めると思いますが、頭を打っているので丁重に扱わないといけないですからね。もし良ければ、起きるまでに色々聞きたいのですが―――」


 見た目、外国顔の人が日本語を流暢に話す事に違和感しか感じないが敢えてスルーする。

 ファンタジーさんにもっと仕事してほしいものである。


 まず彼女の名前だが、アッシュという。

 アッシュの後をちょっと言い淀んでいたので、何か言い辛い事でもあるのだろうが俺が気にしても仕方無い事だ。

 倒れているのはパトリシア=ボーグナンといって、貴族の娘で代々騎士の家系だそうだ。

 ここまで似ているのだから姉妹だろうに、こちらは苗字があってアッシュには無いというのは家出か何かだろうか?

 隠すにしてももっと上手くやって欲しいものである。

 そしてここは、テファレント大陸にあるカーヴァイン王国の領土で、近くにルカンという街があるとの事だ。

 一時間程歩けば着くとの事だが時間の単位がそのまま『~時間』だったので不思議な感覚だったが、過去の転生者が皆、口を揃えてそう言うので定着してしまったらしい。

 つくづくファンタジーをぶち壊しにきているなと嘆息する。

 街に着いて、日本家屋とか電柱があったら―――と想像するだけで憂鬱な気分になる。

 最後に、何故こんな所に来ていたのかを質問した。

 アッシュは冒険者風に、半袖のインナーに胸当てや手袋、ショートパンツに膝上まであるブーツとシンプルな造りの剣。といった動き易そうな格好なのに対して、パトリシアはドレスだ。

 オマケに森だというのに歩き辛いヒールと、TPOという言葉を何処かに置き忘れてきたような格好をしている。

 杖を持っている事から魔法でも使うのだろうが、これが魔法使いのスタンダードだと言われても首を捻らざるを得ない。

 チグハグな印象を受ける二人だが、話しを聞くとどうやらアッシュが冒険者として採取の依頼を受けて森に行こうとしたら無理矢理着いて来たのだと言う。

 そんな無茶苦茶な……と思ってたら今度はこちらが質問された。


 どう答えたものかと思案していると、イリスが代わりに答えてくれた。

 設定としては森の奥で叔父とイリスの二人で暮らしていたが、最近になって叔父が亡くなってしまい、街への買物や魔物の素材や獣の肉の売買が出来なくなったので意を決して街に降りようとしていた所を魔物に襲われてしまい、通りかかった俺に助けられて二人で街に降りようとしたが迷ってしまった。という事になった。

 無理のありそうな設定だがすんなりと信用してくれた。

 俺については普通に転生者として紹介された。何でも、転生者というのは割とありふれているらしく『旅人』と呼ばれていて、その大多数は魔王を討伐してくれる事から街や王都等では大変重用されるのだそうだ。

 俺が旅人だと分かると、かなり畏まられたので魔王を倒すつもりは今のところ無いと言って辞めさせた。

 テンプレに若干惹かれる所はあるものの、俺みたいな存在が他にも居るなら任せてしまおうと思っている。元の世界では労働法なんてぶっちぎって働いていたので、のんびりと物見遊山して周るのもまた乙なものだろう。

 話していると俺の名前が呼びにくそうだったので霧雨で良いと付け足しておいた。


「ぅん……。私は……?」

「リーシャ!? 目を覚ましたか! 具合はどうだ?」

「お姉様……? 私はいったい……。ゴブリン共と戦闘をしていた筈では?」

「あぁ。お前がゴブリンの一撃を受けて気を失ってしまって囲まれたのだが、こちらのキリア殿に助けて頂いたのだ」


 目を覚ましたパトリシアにアッシュが説明する。

 思いきり『お姉様』と言っているが気にした様子は無い。やはり姉妹だったのかと思う反面、アッシュは隠し事が苦手みたいだ。

 だが、話した感じからかなり実直そうな印象も受けたのでそのギャップに微笑ましくなる。

 因みに、アッシュが二十一歳で、妹のパトリシアは十五歳だそうだ。


「初めましてパトリシアさん。私は霧雨という旅人で、こっちはアッシュさんに加勢する前に保護したイリスという子です」

「どうもぉ☆ イリスと言います~」

「べ、別に助けて頂かなくてもあれくらい何とかなりましたわ!」

「リーシャ。恩人に向かってその言い方は無いだろう。三匹は斬って捨てたが十を超えるゴブリンに気を失ったお前と囲まれたのだ、普通ならとうに死んでいる」

「しかしっ!?」


 なおも言葉を重ねようとしてアッシュに窘められているパトリシア嬢だが―――これは"アレ"ではなかろうか?


『金髪幼女』に並ぶ伝説の存在―――『ツンデレ』だ。


 今の所、デレは無いが窮地を救った人に対してこの言いよう。紛う事なきツンである!

 流石異世界、期待を裏切らない。


「まぁた変な事考えてる~」

「いやっ、これくらいは良いだろ」


 顔に出てしまっていたのか。気を付けなければ。


「キリア殿、不肖の妹が申し訳ない。何とお詫びをすれば良いか……」

「いえいえ。気にしていないので平気ですよ」

「しかし……」


 本当に思う所は無い。

 寧ろ大好物が見れて有難いくらいなのだが、謝罪を続けるアッシュを何とか宥める。


 それから街に向かう事になり、途中で先程のゴブリンや狼等の魔物や獣に襲われたのだが全て鎧袖一触だった。

 頻りにアッシュから称賛の声をかけられるが、何となく、どう動けば良いのかやどう攻撃すれば良いかが分かるだけで素直に受け取れない。後でイリスに聞くか。

 しかし、そんな俺より倒したゴブリンからアッシュが耳を削いでいる事の方が驚きだった。


 曰く、討伐証明として魔物の部位が必要との事だ。中には真っ二つになって形容し難い中身が出てしまっている物もあるのに、淡々と削いでいく様は一種のホラーだった。

 グロ耐性はそこそこある方だったが、いざ実物を見ると気後れしてしまう。

 だが、女性で尚且つ精神年齢的に歳下のアッシュにばかり任せるのも忍びないので俺も手伝う。

 パトリシア嬢はハンカチで鼻と口を覆って顔を逸らして離れているが、イリスはその隣で俺を見てニヤニヤしている。何がそんなに楽しいのだろうか?


 戦闘や剥ぎ取りをしながらだったので時間がかかってしまったが、陽が傾く前にはルカンの街に辿り着けた。

 日本家屋や電柱が乱立しているような事は無く、何処か中世っぽい街並みが広がっていて安心したのだが、街に入る時に身分証が必要だったようで止められてしまった。

 アッシュやパトリシア嬢は何の問題も無いのだが、何故かイリスまでも懐から身分証を取り出していたのには驚いた。

 俺については、旅人だという事をアッシュが守衛に説明したらあっさり通された。

 それで良いのかと悶々としていたら、説明はイリスが小声でしてくれた。

 初めて転生者を送った際に、滅びの道を辿るしか無かった人類の旗頭となって魔物をほぼ一掃せしめた事や、その後も上位の存在である魔物に対するカウンターとして無双して見せた事で一種の戦略兵器として重用されて、転生者が初めて街に訪れた際にはある程度思想に危険が無いか数点質問して問題が無ければ入れているという。また、冒険者との同伴の際は殆どスルーだそうだ。


 でも、それでは自分の事を旅人だと偽って街で良からぬ事をしでかす輩も居るのでは? とイリスに問いかけると、転生者は皆一様にこちらの人から見ておかしな格好をしていて黒眼黒髪だから分かりやすいとの事。

 一応、転生者の子孫で同様の特徴を持つ者も居るが、基本、一点物の衣服なので好事家に高く売れるそれを着て悪事を働くくらいなら売ってしまって生計を立てた方が早く、わざわざ身分を偽る者は居ないそうだ。

 確かに俺は何故か学ランを着ている。

 違和感しか感じないが身体は十八歳なので問題ないのだが、コスプレをしているみたいだ。


「私は採取依頼の完了とゴブリン討伐の報告を済ませる為にギルドに行くが、キリア殿はどうする? もし時間があれば一緒に行ってギルドで冒険者登録をするか? 冒険者証があれば身分証にもなるぞ」


 言いながら胸当ての下にあるインナーをたくし上げて隠れていた冒険者証を見せられる。

 見せるのは良いがヘソも見えてますよと言いたくなるが腰のラインが素晴らしかったのでスルーしておく。


「あぁ、それは助かりますね」

「勿論、私も着いて行くわよ~」

「ふむ。出会ったばかりなのに二人は仲が良いのだな」


 はぐれないように繋いだ手を見ながらアッシュが微笑む。

 その微笑みに思わず見惚れそうになるが、ツンデレスキーの俺としてはアッシュがツンデレならと思考が逸れそうになるのを何とか切り替える。それより冒険者登録だ! ここでギルドをざわめかせてギルド長に一目を置かれて~といったテンプレが待っているに違い無い!


「私は家に帰らせて頂きます。お姉様、今日はちゃんと帰ってきて下さいまし」

「そうだな、リーシャの体調も気になるから後で顔を出しに行くよ」


 最早隠す気は皆無なのか、目の前でそんなやり取りを交わしてパトリシア嬢が近くを通りかかった馬車を呼び止めて去っていった。


 さぁ、テンプレを味わいに行こうか!

語彙が欲しいと切実に思います……。

何を読めば増えるんでしょう?

辞典?無い無い。

文学小説かな?でも堅苦しいのって苦手なんですよね~。

ラノベで身につかないかしら?

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