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どうやら世界が繋がったらしい  作者: 天城 在禾
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アルクスは輝いた。

今度は目を開けていられる。

というより、そうなるように目に魔法をかけておいた。

車の運転席から悲鳴が聞こえたが、無視する。


「突っ込め」


隊長らしき男が若い男にそう言ったのが聞こえた。

ふーん、中々、隊長らしき男とは仲良くなれそうだ。

アルクスの光が異形を一掃したのを確認し、私は目の前に迫る建物を一瞥した。





車は建物に入って止まった。

確かに、これ以上車で進むのは無理そうだ。

恭禍は車の上から飛び降り、一応クローディアを用意する。

陸自の人間が、恭禍が背負ってきた男たちを担いでいる。

子供は女性と手を繋がせた。

恭禍は彼女たちに軽く魔除けの呪いを施し、隊長らしき男に駆け寄る。


「私はここの構造は知らん。だけど気配からして地下にいると思う。あんたが先導してくれ」

「地下?…ここに地下なんかあったか?」

「シェルターとかあるんだろ。きっと。まぁ奥まで進めばいい。気配はもっと奥からだ」


恭禍が示した先は、壊れかけの灯りが僅かに残った道だった。

先導するのは隊長らしき男で、後ろは若い男が努めるらしい。

恭禍は真ん中に入ることにした。

この範囲なら、クローディアが前にも後ろにも届く。

流石に彼らの懸念の大きさも分かったので、恭禍は自分について話すことにした。


「信じるも信じないもあんたらの自由だ。私はかつて、6つの別の世界に行ったことがあるんだ」


子供が訝しげに見てきた。


「だから、信じるも信じないも自由だって。そこで私はいろんなことを体験してきた。戦争もああいう化け物どもの退治もな。だから私はあいつらについて知ってるし、対処法も分かる。この武器たちはその世界のものなんだ。で、私が予想するに、その世界たちとこの世界が繋がったんだと思うわけだ」


より一層子供の目が厳しくなった。

…いやさぁ、そこまで変な奴見る目されても…


「…ちっ…あーあ、まだ生き残りがいたか…ちょっと下がってろ」


恭禍は子供や女性、隊長らしき男を押しのけ、前に出た。

その時、前から猿に似た異形が突っ込んでくる。

クローディアはちょっと長いため、素早くサクレを抜いて異形を切り捨てた。

異形は灰になって消える。

その後に残された赤い石を拾い、手の中で弄ぶ。


「そういえばさ、私は名乗ったけどあんたらの名前知らないんだよな。よかったら教えてくれない?」


恭禍が唐突にそう言うと、隊長らしき男が不機嫌そうな顔をした。


「…松井だ」

「…あ、宮田、です」


他の2人も名乗り、女性と子供も名乗った。

そういえば彼らには名乗っていなかったので、恭禍は改めた名乗る。

先程と同じ隊列になり、奥を目指した。

何度か異形が出てきたが、松井が撃ち殺して行く。

宮田はオドオドとしていたが、なかなか見所のある人で、慌てながらも背後から来る異形を撃ち殺していった。

まぁ、宮田はさっきも子供助けてたから、腕を戻してあげたのだが。


「…止まって」


恭禍は少し広くなった場所で隊を止めた。

ここのどこかから、空気が流れている。

恭禍は地面を眺めた。


「…はぁ。ちょっと松井さん、叫んで。陸自の松井だーって」

「はぁ?待て、本当にここに地下なんかあるのか?」

「あるある。ほら、叫んで」


松井はぐっと息を詰めたあと、ヤケクソのように叫んだ。

それに、気配が動く。


「…んー、なるほど。警戒してんのね、よしよし」


松井の呼び掛けに、天井に付けられたら監視カメラが動き、恭禍たちを写す。

それに気配が動き、ゴゴゴ…と地面が揺れた。

地面が動き、ポッカリと廊下に穴が開いた。

そこから、数人が走り出てくる。


「松井!」

「…櫻井!!」


どうやら松井の知り合いらしく、2人は再会を純粋に喜んだ。

それから恭禍たちは地下に招かれ、また音を立てて地面…天井は元に戻った。


「まずは君たちの無事な帰還を喜ぶよ。ここは上層部が隠していた地下シェルターでね。この非常事態に解禁されたんだ。…全く、さっさと解禁して貰いたいものだよ。私は自衛隊武器研究部の櫻井だ」


櫻井は地下シェルターを先導しながら簡単に状況を話してくれた。

他国との連絡は殆どできないらしい。

唯一、イギリスと連絡が取れたという。

頼みの綱であったアメリカが一番被害が大きいらしく、日本は日本で自衛するしかないようだ。

内閣の要人は半分ほど死んだらしいが、なんとか総理大臣は生き残り、この非常事態の指揮を取っている。

この地下シェルターが絶対に安全とは言えないが、暫く体を休めることは出来るだろう。

櫻井は安心させるように微笑み、非戦闘員である女性や子供たちと気絶している男性たちを連れて行くよう、他の人に指示を出した。

恭禍はそれを他人事のように眺め、櫻井に向き直る。


「悪いがイギリスと連絡を取らせてくれ」


明らかに非戦闘員である少女の物言いに櫻井は固まった。

何を言われたか分からなくなったらしい。


「…えっと、君は…」

「説明が面倒だ。早くして。ジュリアスに用がある」


恭禍は櫻井の横を通り過ぎ、勝手に先へ進んだ。

櫻井は慌てて恭禍を止めに入る。


「待ちたまえ!この先は関係者以外は…」

「何の関係者だよ。この事態のか?なら全ての人間が関係者だろ」

「違う、自衛隊関係者で…」


櫻井の制止など知らん顔で、恭禍はどんどん進んで行く。

松井と宮田もそれに続いた。

恭禍はかつて科学の発達した世界へ行ったことがある。

その構造とここの構造は何となく似ていた。

人が考えることは大体一緒なのか、それとも向こうの世界から人が来ていたのか。

まぁどちらでも構わない。

恭禍は通信室と書かれた部屋の扉を開け、中に入る。

そこにいた者たちにポカンとした顔をされたが恭禍は無視して機械を操作した。

目の前の小さな画面に砂嵐が現れ、それからどこかの部屋を写す。


「ジュリアス」


そう恭禍が言うと、画面の向こうでガタガタ、と音がして、金髪の美丈夫が現れた。


『キョーカ!!』

「よかった、ジュリアス!怪我は無さそうだね」

『ハイ。リョート、リョート、キョーカから連絡が来たヨ』

『何!?無事だったか…!』


電話で話した男性の声がして、画面に黒髪の男性が現れた。

この人が電話で話した人だろう。


「今日ぶりですね」

『あぁ…無事でよかった。ジュリアスからあなたの話は聞いていましたが心配で…無事政府と合流できたんですね』

「まぁ…とは言っても今さっきの話ですけどね。そちらは?」

『見ての通り無事合流しました。今はジュリアスの結界で事なきを得ています』


二人の無事な姿を確認し、恭禍は安堵した。

ジュリアスは結界の話を褒めて欲しそうな顔をしていたため、恭禍は苦笑してそれを褒めた。

ジュリアスは結界を張ったり、治癒魔法などが苦手で、よく恭禍に怒られていたのだ。


『詳しくは分かっていないのですが、向こうの世界から人が来ている可能性が有ります。彼らは良い戦力になると思います。見つけたら説得をして欲しい。…生憎、あなたとジュリアスしか彼らの言葉が分からないので』

「あー…多分、ジュリアスにも説得できない人がいると思います。私の予想ですが、私の行ったことのある6つの世界と繋がっているようなんです。ジュリアス、見たことない化け物いたよね?」

『ハイ。居ました。でも、弱点は一緒』

「まぁそうなんだけど。というわけで、説得は私に任せて下さい。見つけたらとりあえず報告お願いします」

『そうですか…分かりました。でも、今はゆっくり休んで下さい』

「ありがとうございます」


恭禍はゆっくりと微笑んだ。

  



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