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どうやら世界が繋がったらしい  作者: 天城 在禾
3/16

 

 


 

少女は宮田を見て眉をひそめた。


「…あーあ、どうしてこうタイミングが悪いかねぇ…」


少女な大鎌を地面へ放り、宮田の側にしゃがみこんだ。


「腕…は、喰われたな。…いいか、絶対、誰にも、話すなよ」

「へ…?」


少女はそう言うと、宮田の左肩に手を添えた。


「…くっ…うぁぁぁ…」


急に宮田が悲鳴を上げた。

松井は少女を引き剥がそうと駆け寄る。

が、寸でのところで止めた。

宮田の左腕が、再生していた。

一瞬の話だった。

少女は宮田の肩から手を離すと、大きくため息を吐いた。


「…え、あ、れ?腕が…」

「戻してやったんだよ。感謝しろ。それできんの一万人に一人なんだからな。あーあ、つーか死にそう。もーだめだ。眠い。私その車ん中で寝てるから、あんたらの仲間が全員帰ってきたら教えて。…あぁ、全員は無理か。きっと何人かは死んでるもんな…まぁ、生きてる奴揃ったら起こして」


少女はそう言うと、軍用車の中へ入って行った。

松井と宮田は呆然としていたが、子供の泣き声にはっと我に返る。

松井はとりあえず宮田に声をかけた。


「おい、大丈夫か?」

「…あ、はい、大丈夫です。…腕、も、違和感ないです」

「…そうか。とりあえずその子供を車に入れておけ。二人で見張りをしよう」

「はい…」


宮田は子供を車に乗せ、松井の隣に並んだ。


「…あの女の子、何者なんでしょうか…」

「…敵じゃないのは確かだろ。お前の腕も治したんだから」

「…そうですけど…」

「とりあえず、他のやつらが帰るのを待とう」


不安そうな宮田に松井は柔らかく笑ってみせた。

松井も、不安だった。

だが、それを部下の前で悟らせるわけにはいかない。

拳銃から、機関銃に持ち替え、松井と宮田は仲間の帰りを待った。






結局、帰って来たのは松井と宮田の他に2人だった。

2人は子供と女性をそれぞれ助けていて、宮田の助けた子供を含め、3人救出できた。

…だが、本来なら、15人いた仲間を失ったのは大きかった。

子供と女性を車に乗せ、松井は少女を起こした。


「おい」

「んー…ああ、どれだけ帰ってきた?」


少女は起きるなりそう言った。

そして車の中を見渡し、「…2人か」と呟いた。


「…私が見てくる。もしかしたら生き残りがいるかもしれねぇし、な。それまであんたらはここを守っててくれないか?私も連れてってほしいんでね」

「何言ってるんだ!君みたいな女の子が…」


帰ってきた2人が声を上げたが、松井が制した。


「わかった。君が帰るまで待とう。くれぐれも気をつけてくれ」

「ん。あぁ、そうだ。あの化け物どもには核ってのがあって、それを壊さないと死なない。場所はそれぞれ異なるが、大体頭か心臓部分だ。稀に2つ以上持つやつがいるから気をつけろ」


少女はそう言って車を降りて言った。


「松井さん!何考えてるんですか!あんな女の子を…」

「そうですよ!」

「落ち着け。お前ら、あの子の言ったことを聞いてたか?」

「え?はい…っ!!」


2人は顔を真っ青にした。

当然だ。

核?そんな話、聞いたこともない。

なぜそんな話を知っているのか。


「…それに、俺と宮田はあの子に助けられた」

「…そうっす。子供に扮装してた怪物を一撃で殺しました」

「一撃…」

「じ、じゃあ、あの女の子は一体…」

「…わからん。ただ、敵じゃないのは確かだろ」


2人は口を開かないまま、座り込んだ。

何が一体どうなっているのか。

松井と宮田は、2人の肩を叩いて励まし、2人を車に乗せて見張りを続けた。

少女は直ぐに帰ってきた。

その肩には2人の男が背負われ、女3人と子供2人が後ろをついてきていた。


「生存者発見ー。よかったな、もう平気だぞお前ら」


少女は後ろをついてきている子供に明るい声でそう告げた。

少女は乱雑に背負った男を車に乗せ、泣き出した子供の頭を撫でてやっている。

女性たちは何度も少女に頭を下げている、


「お待たせ。まぁ、この町にいるのはこれだけだろ。ほら、早く乗りな」


少女は女性と子供を車に乗せ、扉を閉めた。


「ふぅ…じゃ、行きましょーか。私は車の上にいるから、運転よろしく」

「待て」


車に飛び乗ろうとした少女を呼び止める。

少女は不思議そうに首を傾げた。


「…君は、何者だ」

「…あー…確かに。怪しいよな。けど、何度も説明するの面倒だし、あんたらの基地に着いてからでいいかな?とりあえず名前だけは名乗るよ。勾槻恭禍。女に使う字面じゃないってことだけは言っとくよ」


少女はそれだけ言って、車の上に飛び乗った。

松井と宮田は目を合わせ、何も言わずに車に乗り込んだ。








車の上は風が強く、全く以て気持ちのいい場所じゃない。

だが、異形の中には空を飛ぶものもいる。

それなのに車の中で待機していることなど出来はしない。

幸い、空からの襲撃はなかった。

1、2時間か、揺られていると、突然車が急停止した。

その反動で恭禍は落ちそうになる。

前を向けば、なぜ車が急停止したのかよく分かった。


鉄の網は食いちぎられ、目の前の建物は悲惨な状況をしている。

一言で表すのなら、崩壊。

そう表現してもいいんじゃないだろうか。


天井は半分無くなり、入り口を守っていたと思われる人は食いちぎられていた。


車の中を見れば、運転していた若い男と隊長らしき男が絶望に顔を歪ませていた。

その2人に、恭禍は声をかける。


「車で中まで行ってくれる?入り口からどーんと入っちゃっていいし」

「なっ…」


若い男が絶句したが、隊長らしき男は何故かと聞いてきた。


「人間の気配がするからだよ。よかったな。多分外見はこんなんだが中身はそこそこ無事なんだろう」


恭禍がそういうと、隊長らしき男は目を伏せため息を吐き、若い男に恭禍の言葉通り指示を出した。

恭禍はアルクスを取り出して、長い詠唱を開始した。

本日2度目の活躍に、アルクスはテンションを上げっぱなしだった。

その様子にサクレとクローディアは苦笑いしているらしい。

なぜか知らないが、この武器たちには意志がある。

まぁ、どうでもいいからいいのだけど。

3つとも仲がいいので構わないのだ。

これで喧嘩したならぶっ壊してたんだがなぁ。

そう考えたのが伝わったのか、背中のサクレとクローディアがぶるりと震えた。




 

 


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