8.やっぱり知らなかった!
8.やっぱり知らなかった!
最近、居間にもボクのトイレとご飯のトレーが置かれているんだ。菫ちゃんが出かけた後もずっと居間で放し飼いにされてる。居間はひいお爺ちゃんたちの部屋と台所がつながっているから色々と探検できるんだ。だから、部屋に誰も居なくたって退屈はしないよ。
ひいお爺ちゃんとひいお婆ちゃんの部屋はいつも取り込んだ洗濯物が山積みにされているんだ。ひいお爺ちゃんが片付けをするわけがないから、ひいお婆ちゃんの仕事なんだけど、ひいお婆ちゃんはパチンコに行ってるか韓流ドラマに夢中で片付けをする気なんてなったくないみたい。でも、その洗濯物の山の上がボクのお気に入りなんだ。
けれど、いま、いちばん興味があるのは皆がご飯を食べているテーブルの上。なんだかいい匂いがするんだけど、さすがにテーブルの上までは一っ跳びには飛べないんだ。せめて、椅子が引かれたままだったら、椅子に飛び移ってからテーブルに登れるのに。みんな普段はだらしないところがあるのに、テーブル席の椅子だけはいつもきちんとしまってあるんだな。
大輔さんが帰って来た。早速ご飯を食べ始めたよ。今日は何を食べているんだろう…。僕は大輔さんの足元で指をくわえて見ているだけ。いや、実際に指をくわえてはいないんだけどね。
『ニャア!』
大輔さんが席をっ立ったよ。しかも椅子がそのままだ。これはチャンスだぞ!ボクは大輔さんが座っていた椅子に飛び移った。背伸びをしたらテーブルの上が少しだけ見えたよ。あの色、あの匂い、あれは間違いなくお魚だ。食べたいな…。
気が付いたときにはボクはテーブルの上に飛び乗っていたんだ。そして、今、美味しそうなお魚に手をかけようとした時だった…。
『ウニャアー』
ボクの体が宙ぶらりんになっちゃった。大輔さんがぼくの首を掴んで持ち上げたんだ。“ネコつかみ”こんな風に捕まれるとボクは何にもできなくなっちゃう。
「こらっ!ぱるる、行儀が悪いぞ。女の子のくせに」
あっ!やっぱりだ。大輔さんはボクのことを女の子だと思ってる。きっと、ミーニャさんが女の子だったから同じ感覚なんだなあ…。良く見て!ボクにはちゃんとおちんちんが付いてるんだよ!そんなに大きくはないけれど。そんな僕の声が聞こえるはずもなく、大輔さんはボクのあそこを見ることもせずに、床にそっと降ろしてしまったんだ。
って、言うか、名前だって“ぱるる”じゃないんだからね!