7.松坂家の日常 平日編その4
7.松坂家の日常 平日編その4
桂子さんは韓流ドラマにハマっていて、家に居る時は殆どDVDを見てるんだ。最近はひいお婆ちゃんもハマっていて、一度に10枚くらい借りて来るんだ。常に借りられる限度いっぱいになっているみたい。
「私のカードじゃ、もう借りられないからあんたのカード貸してよ」
ひいお婆ちゃんは桂子さんにそう言って、今、借りているものの続きや他のDVDを借りて来よううとする。
「何をそんなに焦ってるの?」
「焦ってないわよ。面白いのはどんどん続きが見たいじゃない」
「だったら、見終わったやつを返しちゃえばいいじゃん」
「だって、あんたはまだ見てないでしょう?」
「そんなにいっぺんに見られるわけがないでしょう!暇じゃないんだから」
毎日のように、ひいお婆ちゃんと桂子さんはこんなやり取りをしている。
夕食の後、大輔さんが居間でテレビを見ていると、隣に座った桂子さんはポータブルDVDプレーヤーで韓流ドラマを見ているんだよね。更に、ひいお婆ちゃんも隣の部屋で違うDVDを見ているの。ひいお婆ちゃんは耳が不自由だから、すごく大きな音で見ているんだよね。音声がごっちゃになって、ボクには何が何だかわからないんだけど、みんな集中力がすごいのかな…。でも、そうでもないみたい。たいていは大輔さんがテレビを消して自分の部屋へ行ってしまう。
「もう寝るの?」
「寝る訳じゃないよ。見たい番組も終わったから、読みかけの本を読もうと思って」
「パパって、本当に本が好きね…。あ!いけない。パパって言っちゃダメだよね。爺ちゃんって言わなきゃ」
そうなんです。桂子さんが大輔さんのことを“パパ”って呼ぶから、空ちゃんも大輔さんのことを“パパ”って呼ぶんですよ。ちなみに桂子さんのことも“ママ”って呼んでるんですけどね。まだ2歳だから仕方ないよね。そのうち、ちゃんと区別が付けられるようになるよ。
そう言えば、大輔さんはボクのことを“ぱるる”って呼ぶんだ。“ぱるる”は女の子の名前なのに!多分、大輔さんは菫ちゃんと一緒でAKB48の島崎遙香ちゃんが好きなんだね。そして、もしかしたら、大輔さんはボクが男の子だって知らないのかな…。