10.ぶらぶら行くの!
10.ぶらぶら行くの!
ひいお爺ちゃんとひいお婆ちゃんお部屋には古いタンスがいくつかあるんだ。中に何を仕舞っているのかはわからない。だって、開けているところを一度も見たことが無いんだもん。普段着るものは長押に掛けた物干し竿にぶら下がっているし、洗濯物は洗濯物カゴに放り込まれているから。
その洗濯物カゴなんだけど、すごく居心地がいいんだ。ボクの体がすっぽり入って、おまけにふかふかの洗濯物が敷いてあるから。ここに居るとついつい眠たくなっちゃう。空ちゃんもボクがここに居るのには気が付かないみたいで追い掛け回されることも無い。
空ちゃんは大輔さんがお休みの日は大体、大輔さんと一緒に居ることが多いんだ。
「お外行く!」
「そうか!じゃあ、自転車でぶらぶら行くか?」
「自転車でぶらぶら行く!」
空ちゃんはお外が大好き。ボクはお外に行ったことはないからわからないけど、お外はよっぽど楽しいんだろうな…。
みんなはボクが外に出ないように、出入りするときはボクがそばにいないかどうか確認してからドアを開けるんだ。ボクがそこから出られるのは菫ちゃんが自分のお部屋に連れて行くときだけ。だけど、本当は菫ちゃんのお部屋がある3階じゃなくて、お外へ出るドアがある1階へ降りて行きたいんだけどね。
空ちゃんが出る時はもしかしたらチャンスかもしれないと身構えていたんだけど、大輔さんは空ちゃんを抱っこしてから素早く居間を出て行ったんだ。あー、残念!
誰も居なくなったお家の中で、ボクは退屈だから洗濯物カゴの中でもう一眠りするか。
しばらくすると、外から空ちゃんの声が聞こえてきた。きっと、ぶらぶらから帰って来たんだね。
「おうち入んない!まだぶらぶら行くの!」
「ぶらぶらはもうおしまいだよ。いっぱい遊んだでしょう。おパンツにもおしっこ一杯だよ。交換しないとおちんちんが痛くなっちゃうよ」
「ぶらぶら行くの!」
こうなると空ちゃんは強情なんだ。きっと、眠たくて機嫌が悪いんだと思う。
結局、大輔さんは空ちゃんを抱っこして近所をぶらぶらして寝かせたみたい。