第9話 ――1週間後:証明――
〜桐咲市総合病院〜
オレは桜の両親の連絡を受けて、ここ桐咲市総合病院についた。
桜が倒れたとのことだった。病院のロビーにいくと二人の人がいた。
一人は中年の男性。誠実そうな顔にきっちりした服装。落ち着かずにタバコをすっている。
一人は中年の女性。まだまだ若者には負けないだろう顔立ちに、白いワンピースと言う服装。
悲しい事があったのか、泣いていた。
きっと、桜のお父さんと、お母さんだろう。
二人は病院のロビーの自動ドアが開いた音がして分かったのか、こちらを向き近づいてきた。
「きみが、荒河秀人君か、話は聞いているよ」
中年の男性がオレに言う。
「はぁ。それで、桜はどうなんですか?」
オレは前置きを取らず、いきなり切り込む。
「あなたには、全てを聞く権利があるわ。全てを話しましょう。」
オレの疑問に答えたのは中年の女性の方だった。
「え――」
オレは病室の桜を見た時は愕然とした。
桜の身体にあちこちつながれているチューブ。そのチューブの元には大きな機械。
その中の機械は、よくテレビでみる波形が出るやつだった。
そして、その波形は微塵たりとも波を打っていない。
線。
ただの線。
それは。
それはつまり。
死んでいる。
と言うことなのだろうか?
なぜ?
何故? 今、こんな事になってるんだ?
冗談だろ?
オレを笑わせたいんだろ?
ならもう十分だ。
だから。
もう良いよ。
動いて、オレに笑いかけてくれよ。
あの、はにかんだ笑顔を。
「秀人君。君もこっちへ来てくれ」
愕然としているオレに、桜のお父さんは言ってくれた。
オレは桜の全てを知った。体が子供の頃から悪いこと。今日までしか命が持たないこと。
そして、桜がずっと昔から(小学校の頃から)オレのことを好きで、でも小学校の途中で引っ越してしまって、ずっと合いたくて秋羅河高校に入学したこと。など……
「そういえば、観た事がある子だと思ってたんだ。とても、懐かしい感じがして――そりゃそうだ。昔あったことがあったんだ……」
「いままで、桜を大切にしてくれてありがとう。もう…桜は…起きないから。私がお礼を言おう」
「え……?」
よく観るとご両親は泣いていた。この状況じゃ無かったら
オレも何かの冗談としか思えない。でも――コレが真実なんだ。
「う、うう。うぅぅぅっぅ。うわぁぁぁぁあっぁ!!!!!!」
オレも泣いた。声が枯れるまで叫んだ。神を呪った。自殺までやろうとした。
でも、気づいたんだ。『このままじゃ、だめだ。コレを桜が望んだわけじゃない』そう思うと、元気が出た。
「桜の分まで生きる! オレは。オレは、誰かを救うために生きる!!」