第8話 ――1週間後:回想終了〜異変――
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それが、一週間前の話だった。
それから、それぞれの名称やら何やらがあったが、まぁそこは語らなくて良いだろう。
気づけばオレたちはクラス公認のカップルにされ、暗黙の了解とされていた。朱美のがそれ以来よそよそしくなったのは、彼女の前で女の陰がちらつくのが悪いと思っての行動だったのだろうか?
……まぁ。満更でもないんですがね。
ふと時計を見る。5時限目のまでの時間が無かった。
「ほら、早く食えよ。時間ねぇぞ」
オレは桜に早く食べるように促す。桜はそれに反応して、一気に口に駆け込んだ。
「まってよ…んぐっ…、ごちそうさま」
桜は行儀よく手をパンパンと合わせ、そう言った。
「ほら、食器もっててやるよ」
「やっさし〜。じゃ、おねがい」
「おう。先教室戻っててくれ」
「うん」
簡単な挨拶と共に、桜は食堂を後にした。
× × × × × ×
〜廊下〜
桜は食堂を出て、教室へ向う。
ふと、桜は貧血気味の様にふらついた。
「おっとと。ふらついちゃった。…もう、時間が…ないのかなぁ……」
桜は誰にも無くつぶやいた。
悲痛な表情を浮かべ、空を仰いだ。この青い空が見られるのは何時までなんだろうか。と思いながら――
× × × × × ×
〜放課後〜
午後の授業が無事に終わり、各生徒がこれからの暇をどうつぶすかを話している時、オレは桜と共に帰ろうと、桜に話しかけた。
「なー、今日はもうかえろーぜー」
すると桜は「ごめん。これから用があるの。かえっていーよ」と返した。
「うん? めずらしいな。わかった。また明日な」
「うん。また明日」
オレは、どうしてそこで桜の不自然な笑顔に気がつかったのだろう。
どうして、桜について行こうと思わなかったんだろうか。
どうして、ドアを閉める時にチラリと見えた悲痛の表情を汲み取ってやらなかったのだろうか――
× × × × × ×
〜繁華街〜
桜はふらつきながら繁華街を歩いている。と言っても、普通に歩行しているのではなく、まるで幽霊のようにふらふらとゆらついている。
お腹が痛いのだろうか。腹部を押さえながらの歩行。
さながら、病院から逃げ出してきた重傷者のようにも見える。そのぐらいの怪しさがあった。
「痛っ。…もうだめかぁ……。楽しかった一週間だったなぁ…。ありがとう。秀人」
桜はそう言って、地面の上のアスファルトに倒れた。
女の人の『キャー』と叫ぶ声や、男の人の『キミ、大丈夫かい?』などの声がする。
だが、桜の意識はとうに切れていた―――