第6話 ――2日目:回想(前編)―
時は戻り今から一週間前、つまり桜と出合った次の日のことだった。
その日の物語の初めをきったのは義孝だった。
「なぁ、昨日はいったどうしたんだ? 今日はもう大丈夫か?」
場所は学校、我がクラスの自分の席。義孝は登校してきてすぐに、 座ってるオレの前に来て気楽に話しかけてきた。
「ああ。悪かったな。心配掛けて」
「良いって事よ。付き合い長いしな。……それよりも、俺より朱美が、かなり心配してたぞ。一言ぐらいなんか言ってやれよ」
「ああ。勿論」
義孝は「なら良い」と満足そうにうなずいた。
…………。何だろう? 義孝がいやに朱美の事に対して突っかかってくる。いや、気のせいかもしれないが。
それから、昨日見たテレビ番組やら、今週の雑誌漫画のこれからの進行やらを話ていた。しばらくそんな話をしていると、授業予鈴が鳴り、「じゃーな」と義孝は自分の席に戻っていった。予鈴から本鈴の間には五分間の猶予がある。オレはとりあえず、教室全体を見渡してみた。
クラスは男子二十名、女子二十名の計四十人からなっている。前の中学校からのヤツは義孝、朱美、他二人ぐらいか? 全体合わせれば十五人ぐらいるかもしれない。ちなみにその二人とは、一ノ瀬 奈々恵、神田 翔雷と言うのだが、それはまた別の話。
しかし、オレが探していたのはその三人でも、義孝でもない。朱美だ。一応でも義孝に言った以上、オレは朱美に謝らなければならないだろう。
さて、どこか? と、あっさり見つかったな。オレの列の前の方の席だった。
……フム。まだ三分たらずある。行くか。
オレは席を立ち、朱美の席へ行く。朱美の席の周りには早くも友達が出来たのか、二、三人の女子がいた。
その女子達がオレが近づいてきたことが分かったのか、オレを一瞥して「じゃ−ね。朱美ちゃん」と言って、朱美の席を離れていった。
朱美はオレを見て、「どーしたの? 今日はもう大丈夫?」と言った。
付き合いが長いせいか、義孝と一緒のことを言っている。それとも、昨日のオレが半端なくおかしかったのか。
「まぁ、もう大丈夫だ。悪かったな。心配掛けて」
と簡単に謝った。あんまり深刻に謝ったら、逆に心配されるだろうからだ。
結局のところ、昨日のことは何だったんだろう? とは思うだろうが。
「ううん。謝ることじゃないよ。今日が大丈夫ならいいよ。」
と、はにかんだ。
まったく、ことごとくツボを押さえてくる。……いや、戯言だけどね。
それから、オレ達は義孝と話したような内容を話した。
だが、やっぱり女の子だからなのだろうか? どうも恋愛方面へ行ってしまう。
オレ達と同じ中学からの一ノ瀬と神田が付き合ってるとか、義孝はどうして告白されても
誰とも付き合わないのか? もうすでに本命がいるのではないのか? とか。
そんな他愛の無く、またくだらない話をした。
既に登校していた木下に見られているとは気づかずに――。
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