第5話 ――1週間後:前編――
【ガヤガヤガヤ カチャカチャ ズルズル】
我が学校の食堂は結構忙しい。人数に合わないほど小さい室内。決して豊富とは言えないメニュー。ごった返す人。オレと桜はそんな中に居た。俺は既に昼食を頼み終わっており、二人分の椅子と机を確保していた。桜のほうは今頼み終わったようで、トレイを持っていて、キョロキョロしていた。
「あ、桜。おーい。こっちこっち」
俺は軽く片手を上げ、桜をこっちに来るように促した。
「はぁはぁ。ごめんね」
「いいよ。ほら、そっちで食べよう」
「うん」
オレ達はあの日以来、一緒に行動するようになった。
この一週間で変わったこと。
席替えで、桜の隣の席になったこと。
やたらと元気になったこと。
勉強が出来るみたいで、おちこぼれ気味のオレの勉強を見るために、遅くまで学校まで残るようになった事。
いつもの3人から、4人へといとも簡単にレベルアップできて、みんなでワイワイ騒ぐ事になったこと。
何もするでもなく、なんとなく二人でいること。
桜へのしゃべり方。
そして……
「あ〜ん。して」
「は、はぁ? なんで? どうして? はずかしいだろ」
「ちぇ〜」
口では悔しそうに言うが、顔はにこやか。オレはと言うと、にこやかと言うよりもニヤケ。自分でも気持ち悪いと思う。だけどにやけてしまう。
この1週間で最も変わった事。それは――
桜と恋人同士になったことだった。
そのときの事を、今回は特別に話そう。――恥ずかしいけどね……。
○ ○ ○ ○ ○ ○