第2話 ――1日目:序章――
オレの名は、荒河 秀人。
今日、秋羅河高校に入学する、高校1年生。
そしてここは秋羅河高校に行く途中のバスの中だ。
「入学式って何時からだっけ」
「9時からだろ。確か」
こいつの名は、古巳 義孝オレの親友にして悪友。
さらに腐れ縁。ルックス良し、運動神経良し、頭良しの完璧超人。こんな人間いてたまるか! と思うときもある。告白されたことも多々あるらしい(当たり前らしい)。なんでこんな人間がオレの親友(悪友)なんだろうと、思うときがある。
考えると果てし無いので、ここ最近はあまり考えないようにしている。まあ、そんな人間。
「今は何時だ?」
「八時三十六分DEATH」
「ヤッベーじゃん」
「じゃかぁーしぃーわ。お前の寝坊が悪いんだろ」
「Ok。行きまショウ」
オレは「アハハハハ」と無機質に笑い、さっさとバスを降りてしまう。
「あ! こら、まて」
義孝も追いかけて、秋羅河高校前のバス停で降りた。
学校に着くと、校門前の校舎のガラス扉に、入学式についての案内紙が貼り付けてあった。
「入学式をやる体育館こっちだよな」
「だな。行こうぜ」
そう言って、体育館へ行こうとした時に「あー」と言う、大声が聞こえた。
振り向くと昔からの見知った顔がいた。
「……? 朱実か? お前もここなのか!?」
「う、うん。秀人たちもここなの?」
「まあ、そうだな」
「へー。高校でもよろしくね」
そう言って、朱美かわいらしくはにかんだ。
朱美のフルネームは、春日井 朱実と言う。
オレたちと同じ中学校出身の女の子だ。
黒のショートヘアが似合う、今時の高校生の見本と言う感じ。
ちなみに、朱実・オレ・義孝は幼稚園からの幼馴染だ。
朱美と義孝との詳しい出会いと、エピソードについては自粛。色々あったのだ。
ふと、校庭に咲いてある桜の木が目にとまった。
「桜ってさ、いつもはなんとも思わないのにこうゆう時は、綺麗に見えるのな」
「おー。詩人だな」
「カァクイー」
「うっせ」
オレは風に舞う桜の花びらや、桜の木自体が一つの意思でいるように感じた。
自分でも、こんなに詩人だったけ? と、思った。
「やべ。おい、時間ねぇぞ」
「ほら、秀人」
「あ、ああ」
ふと、桜の木がこっちを見ている気がした。いや、気のせいだろ。
オレはそう決め付けて二人の後を追った。