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Forgotten Story ~ 幻想奇忘譚  作者: 生涯迷い人
平々凡々な魔法使い
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02.転入生

翌朝、支度をして徒歩で学校に向かい、教室に到着すると、何やら教室が騒がしい


---この歳くらいであれば騒がしくても何の不思議もないのだが、今日は特に騒がしい


適当にそこらのクラスメートを捕まえて訊けばいい話だが、そんな気がアリスに

起ころうはずもなく


故に聞き耳を立てる程度にしておいたのである


話を聞く限りではとある生徒が職員室に入っていく見慣れない顔の、しかし本校の学校章を付けた生徒が入っていったこと、その生徒が現在の第2学年の色の校章を付けていたこと、他のクラスには空席が用意されてないこと・・・などが大体の概要のようである


・・・確かに、教室に入った時に机と椅子が1セット増えていると思ったが、まさかこの時期に転入生とは


だが、そもそもあまり他人に興味のない彼女はそんなことはどうでもいいと思い、忘れることにした



やがて、朝のSHRの開始の鐘が鳴り、担任と、見慣れない少女が入ってきた


少女は黒いショートヘアに暗い紅色の眼という、珍しいを通り越えて、見たことがない容姿をしていた


やはり教室内は一時騒がしくなるが、担任の「静かに」の一言で収まる


それに続けるようにして「自己紹介を」と小さな声で担任が促すと、少女が口を開いた


(わたくし)はエーデン・アルバ・イーリィと申します

家庭の都合により、隣国のグラツェード王立学園から参りました

よろしくお願い致します」


簡潔な挨拶が終わると同時に小さく拍手が起こる


やがて、担任が空席を指し、「君の席はあそこだ」と言う

因みに、(アリス)の席から1つ挟んだ後ろの席である



---少女、エーデンは席に着くなり、僅かに思考の海に入る

(潜入成功・・・といったところでしょうね

まあ、観察対象(ターゲット)2の内、片方は既に気付いたようですが、幸いにももう一人は気付いてませんし、その気付いてない方のほぼ背後というのも有り難いですね)

と、自分の任務(しごと)に忠実な考えを巡らす


その間にもSHRは進み、短い休憩の後、すぐに1限目が始まる


・・・尤も、他の生徒は兎も角、エーデンにとってはそもそも受ける必要のない授業なのだが


(何せ知識は教わらなくとも知っていますし、魔法に関しては『こちら側』にくる前に一通り覚えましたからね・・・せいぜい、真面目に授業を受けているふりでもしてましょうかね)


そんなことを考えつつも授業は真面目に受けている内、食事時間も兼ねた長い休み時間に入る


ここでは昼は基本的に学校内に設けられた食堂にて昼食をとる形になる


食堂に向かいつつもクラスメートによる質問攻めを適当にいなす


そうこうしているうちに食堂につき、メニューを選んで受け取り、席に向かう


・・・案の定、観察対象は同じ席で固まっており、他に阻む者は居なさそうであった



「ここ、いいですか?」とかけられた声にアリスが振り向くと、転入生---エーデンといったか---が食器の乗ったトレイを持ってすぐ脇にいた


「ええ、構いませんが」

「では、お言葉に甘えて」

「・・・・・・」

先ほどからジャスミンが半ば睨むような目つきで見ているのだが、何かあったのだろうか

「ジャスミン?」と小さく声をかけると、何事もなかったかのように食事を再開した


「お二方はいつもこんな感じで食事をなされているのですか?」

「ええ、他に友達らしい友達もいませんし、あまり関わろうとも思わないので」

「というか、お前、私らと一緒にいていいのか?

見てれば嫌でも気付くが、殆ど嫌われ者のグループだぜ?」

「構いませんよ

それに、他は席が空いてなさそうですし、わざわざ見ず知らずの他人が入っていくような場所でもないでしょうし」

「・・・変わり者だな

普通は大きいグループに入って行くもんだろうし、席なら他にもいくつか空いてる

転入生なら話も聞きたいから大歓迎だと思うが」

「ええ、私は変わり者ですよ

『貴女方と同じように』ね」

「お前・・・!」とジャスミンが珍しく声を荒げかけるが、「ジャスミン、流石に言い過ぎよ」と窘めると、渋々といった表情で食い下がるのをやめた


エーデンも流石に挑発に乗ろうと思わなかったのか、それ以降は大人しく食事をとっていた


やがて教室に戻ると、案の定エーデンは質問攻めに遭っていた

「前の学校はどうだった?」とか、「この学校についてどう思う?」とか、「どれ位魔法が使えるの?」とか


正直、キリがない


アリスは

「エーデンと何かあったの?」と訊く

だが、返答は何もないの一点張り


これでは埒があかないと判断したアリスはそれ以上の質問を控えた


やがて、午後の授業が始まる


普通なら眠くなる時間だが、少なくともそれはここの生徒たちには通用しない常識のようである


なにより、食後の最初の授業は基本的に魔法実践と呼ばれる授業---則ち、座学ではない


魔法実践は唯一と言っていい、魔法を自由に放つことが出来る時間なのだ


なぜ普段から自由に魔法が使えないのかというと、成人しない内は技量の個人差が大きく、無理をしようものなら魔法が暴発する危険性がある


故に法律(ルール)で未成年者の無許可での魔法の行使は制限されており、身に危険が迫った際の護身用以外にはほぼ使えない


これで生徒たちが睡魔に襲われる訳が無かった


勿論、魔法実践には専用の場所があるのだが、先に移動させると何をしでかすか解らない、と言う理由で鐘が鳴った後、教科担任の指示のもと、場所を移動する


・・・と言っても、廊下をわざわざ歩くわけではない

魔法実践専用の講堂(というか体育館のような場所だが)には緊急用の出口しかついていない

そのため、範囲指定型の転移魔法を用いるのだ


教科担任が小声でぶつぶつと呪文を唱えると、瞬時に景色が入れ替わり、講堂に到着する


すると、教科担任は

「よし、今日は久々にチームを組んで模擬戦闘をしてもらう

1チームは3~4人、チーム対抗戦だ」


・・・えっ

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