Scene8 予兆
あれから1ヶ月程、周りでは何事もなく時間が過ぎていった
・・・例の指名手配犯に関する情報もだが
ところが最近、奇妙なニュースが流れ始めていた
それは、何者かによって、異形の悪魔がさらわれたり、襲われたりしているのだ
襲われた者は大抵瀕死の重傷を負っているというもの
流石にこの状況には各国の警察機関のみならず、国家元首もが頭を抱えていた
最近は度々国家元首同士の会合が行われているらしい
それほどまでに重要な問題なのだ
「まさかとは思うけどさ、何かの拍子に問題がこじれて、戦争とか起こったりしないよな・・・」
と呟くのはジャスミンだ
「うん・・・
まさかで済めばいいけどね」
元々この大陸に国という概念は存在しなかった
最初はサラダボウルの如く、異なる思想を持つもの同士、今では異なる種族同士が混ざり合って生活していたのだ
だが、今で言う上位悪魔や、中位悪魔達の一部から出た不満の火種があっという間に炎となり、この大陸を飲み込んだのだ
結果的にそれぞれの種族当たり3つまで国を作れるが、代わりに各国の政治に関わる者の中に必ず高位悪魔に属する者を1名置く、という条件で独立させた事により、当時大陸全土を巻き込んだ大戦争は終結した
だが、今度は人間から生み出された狂気によって、また火種が燻り始めているのだ
このままでは、というか既にそれは国際問題となり始めている
流石に自国の民を危険に曝したいと思う元首が居るはずもない・・・が、このまま解決しないのではいずれ不満が爆発するのは目に見えている
そうなる前に各国でどう対処できるか
それが目下のところ、注目の的であった
だからといって私達に何かできるわけでもない
重い空気を肩に感じながら学校に向かう
やはり学校もいつも通り、集団、あるいは個人での自衛法の訓練をして、僅かに魔法座学や魔法薬学、その他一般的な知識の為の授業を受けて終わり
この生活サイクルが1月以上続いたある日、帰りに異形の悪魔の群れに出くわした
と言っても数はそう多くない
そう判断した私とジャスミンは、即座に逃げようとする・・・が、その前に、向こうから炎弾が飛んできた
「・・・!!」
咄嗟の判断で横に跳ぶ
すぐさま鎌鼬旋風を叩き込むと、直撃した異形がバラバラに吹き飛んだ
そっちに目もくれずに傀儡岩石を作り出すと、襲いかかってきた異形を纏めて踏み潰す
するとジャスミンの方が先に異変に気が付いた
「アリス! こいつら吹き飛ばした端から再生してるよ!」
「なんですって!?」
よく見ると、先程吹き飛ばした異形の肉塊が既に再生していた
数が増えているのである
「こいつら・・・どうすれば!」
珍しく私の語気も荒くなる
「切り刻まずに一撃で消滅させるしかない!」
「そんな無茶な!」
「私がどうにかする! アリスは自分の身を守ることを最優先にして!」
「分かった! 術符使用守護者の防壁!」
「よし
あんまりこういうことはしたくなかったんだけどな・・・ 地獄業火!!」
ジャスミンが叫んだ瞬間、周囲を凄まじい勢いの炎が包んだ
周りを囲んでいた異形たちはその発動速度から逃れられず、燃えさかる業火に身を灼かれ、灰と化した
「しかし何だったんだあれは
明らかに人を襲うように仕向けられていたようだ」
「そうね・・・あまり安心できないのかも」
そういいつつ、2人はそれぞれの家に辿り着いた
毎回魔法のネーミングセンスがあれなのは許してください