Scene7.X 魔の胎動
とある場所、廃墟のような町の一角の、工場で白衣を着た、やや小太りの男が控えめに、だが高らかに嗤う
「ハハハハッ! 能無し共めが
そもそもこの私を捕らえようとするのが無理な話だったのだ!」
そう言う男の手には試験管が握られ、その中では怪しげな色の液体が沸騰していた
その余韻に浸るように間を置くと
「おい、実験材料はあるか?」
と誰もいないような空間に声をかけた
すると
「勿論、この私がそのような不備を侵すでしょうか」
と、別の男の声が響く
再び小さく笑った後、「よし、ここに出せ」と言うと
「仰せのままに」
の返事とともに動けないように拘束された獣---よく見ると異形をしているが---を抱えた、細く背の高い男が現れた
「口を開けろ」
白衣の男が言うが、抱えられた獣は口を開かない
「全く、手間かけさせやがって」
白衣を着ていない方の男が強引に獣の口を開ける
獣は必死に抵抗するが、それも虚しく、試験管の中身は流し込まれた
やがて暴れていた獣が大人しくなると、白衣の男が
「私が解るか?」と訊くと、獣は頷いた
「ならばよい
これよりお前は私の僕となり、私の研究の邪魔をしたこの国、この大陸に恐怖と絶望をもたらすのだ!」
とまるで演説でもするかのように、語気も荒く叫ぶ
「まずは同族を増やせ
噛みついて薬を流し込めばよい
ただし、そこの男には噛みつくな
奴は私の唯一の同志だ」
そう言うと、僅かに開かれた扉の隙間からその獣は放たれた
「しかし、あれ1匹で大丈夫でしょうか」
痩せ形の男が問うと、白衣の男は
「何のためにわざわざ隠れて研究をしたと思っている?
もともとこれは大量に飲ませねばならん上に大量生産が利かん
そのために改良する時間が欲しかったのだ」
「成る程、で、その改良点とは?」
「簡単な再生能力を付加した
瞬時に消し去らねばいくら絶命させたところで、すぐに回復する」
「それはそれは興味深い
本来の研究の成果ももうすぐ・・・と言ったところでしょうね」
「ああ、これでやっと儂の悲願が・・・」
白衣の男は少し涙ぐみながら言う
これが全ての引き金であるとは、まだ誰も知る由がなかった




