夢を創造する魔法5
手直ししてないのでかなり駄目だと思います(今までのも含めて)
「どうだった?」
私が屋上から教室へ戻るときに聞かれた。
「政府の方ですか? とりあえず、今の段階では高級魔道師でしたよ。あの程度なら沢山いますね」
「ということは、まだまだ発展途上ということですか」
学園の制服を着ている少年は何やら楽しそうに微笑んでいた。
「まさか霊也がこの程度で終わるとは思っていませんから。僕と戦えるくらいまでは成長してもらえると嬉しいな」
「真田君の知り合いですか?」
「幼馴染ですよ。もう何年も会っていませんけどね」
そう言って少年は立ち去った。いや、正確には瞬間移動したようだ。
「学園に変化が訪れてきているようね。一般生徒に被害を出さないようにしないと」
私は教室に行くのをやめて、仕事場に戻った。
放課後。俺は永瀬姉妹とは一緒に帰らずに1人でトボトボと歩いていた。
「やばい。今日だけでいろいろありすぎた。もう頭が混乱しているわ」
はぁ。俺の生活が優妃を生き返らせただけでこれほど変わるなんて思わなかった。でも、今日のような日も気持ちがいいな。
《こんにちは。創造の王》
俺は頭の中に直接響いてくる声を聞いた。
「はぁ。誰だよ、あんた。俺は今日色々あって疲れているんだ」
《そうか。……分かった。せっかく君の魔法と生き返った彼女のことについて教えてあげようかと思ったんだが仕方ない》
俺の魔法と優妃のこと。この声のやつは知っているというのだろうか? だけど、姿すら見せない相手に会うのは危険ではないか? ……でも知りたい。俺の知らない俺自身のことを。そして何より優妃のことを。
《どうだ? 話を聴くか?》
「ああ。その話聴かせてくれ」
俺が返事をした途端、瞬間移動機を使った時に揺さぶられる感覚を覚える。そして知らないうちに見たこともない物に乗っていた。―――数秒揺さぶられていると周りが木で覆われている場所に着いた。
「ここは……どこだ?」
こんな場所は、町の周辺にはない。ということは、どうやら他の地域に飛ばされてしまったらしい。
「ここは世界の中枢だ。ようこそ創造の王、真田霊也」
先ほど俺の頭へ直接通信した声が、後ろの方から聞こえた。振り向くと、そこには17歳ほどの男が立っていた。だが何故だろうか? 見た目の年齢では醸し出せない強い威圧感をこの男には感じる。
「あんたは誰なんだ? 世界の中枢ってなんだよ?」
「じゃあまずは一つ目の質問に答えよう。私はこの世の中枢を管理するもの、観察者だ。名前は……今は教えられない。そうだな、観察者とでも呼んでくれ。」
「俺の質問の答えになっているのか?」
「半分は答えたと思うが。……では二つ目だ。これもほとんど話すことは出来ないのだが、とりあえずこの場所は世間一般で言う神の世界」
「じゃああんたは神なのか?」
「そうとも言えるし、そうでないとも言える。私の方は答え終わった。では本題に入ろう。君は自分の魔法についてどこまで知っている?」
俺が質問したことが解決したようには感じられないが、ここは仕方なく従っておく。
「俺の魔法は夢を創造する魔法。夢に出てきた物を現実に召喚できる。そして、相手の魔法を見ると大体のことが分かる。あとは、一度に召喚できるのは三つまで。これくらいだな」
「そうだな……半分ぐらいは分かっているらしいな。君が今話したことは全て本当だ。そして、これから話すことは、これからのことで重要なことになるだろう」
観察者は少し間を開けて話し出した。
「まず一つ目、君が生き返らせた彼女は不完全だ。彼女は自発的に魔力を回復することまでは出来るが、これから成長することは出来ない。そして彼女の魂は、おそらく2年が限界だと思ってくれ」
「限界ってどういう意味だよ」
「そのままの意味だよ。この世の生物は肉体に限界があるのは一般常識だ。そしてその常識は魂にも通じる。魂にもこの世に残れる限界があるんだよ」
「限界になったら……どうなるんだ」
俺は予想しつつも観察者に訊く。
「彼女は完全に消滅し、君の記憶から消えて無くなる」
だが、観察者から聞いたことは、俺の予想を上回るものだった。
「ちょっと待てよ。何で優妃が消えたら俺の記憶も無くなるんだよ」
「そう。それが二つ目の問題だ。君の魔法は発動し、それを解除すると君の記憶から抹消される。勿論彼女も君の魔法の産物だ。例外などはない」
観察者の言葉に、俺は覚えがあった。確かに晴香さんとの戦いで使った魔法を覚えていないのだ。
「そんな……そんなの酷過ぎるだろ」
「もう、一度魔法を使って実感しているはずだ。そればかりは仕方のないことなんだ。そして三つ目。魂のある者を召喚する場合、君自身の近くに魂を持っていた者の残留思念がなければ発動できない。おそらく彼女は君の周りに残留思念として残っていたのだろう。これが君の魔法だ。何か彼女が蘇ってから無くなった物はないか?」
俺は身の回りの物をとりあえず探ってみる。
「……あ、優妃に貰ったキーホルダーがない」
あれは優妃が死ぬ1ヵ月前に、優妃から貰ったものだった。確かあの時、優妃は『死ぬまで持っていて』と俺に言って渡してきたのだ。確かに優妃の残留思念が残っているのも納得がいく。
「おそらくそれが彼女の媒体になった物だ。後は君の記憶を使って出来ている」
「……ということは、実際に存在していて、もうこの世にいない者は、残留思念と記憶さえあれば蘇らせられるってことか」
俺が簡単に要約すると、観察者は首を横に振った。
「少し違うな。君の魔法はそもそも夢の中、もしくは想い出にあるが、この世にはいない者にしか発動できない。つまり、実際に会っていて、想い出が多く残っており、その者の残留思念が君の周りになければならない」
「なんか、ものすごく制限あるんだな」
「生命の創造や生命の復活はそれだけ重いものなんだ。軽々しく使えば、災厄を齎すもこともある。君はそれだけのものを手にしてしまったんだ」
俺の軽々しい発言に観察者はかなり重みのあることを言ってくる。まるで昔、同じようなことが起こったかのような篤い言葉に感じる。
「何か他に訊きたいことはあるか? ないのであれば元の場所へ返そう」
「あ! そういえば前に優妃が俺の考えていることが分かっていたんだけど、あれは何でなんだ?」
「あぁ。それは君と彼女を繋ぐ線だと思ってくれていい。今はもう切っているようだね。もう知っているかもしれないけど、入り切りは君にしか出来ない。線を切っている状態だと、君と彼女はお互いのことを感じ取れなくなる。つまり普通の人と人になる。たとえどちらかがどこかで死んだとしても、決して気づくことが無くなる」
「要するに戦闘時とかは繋げた方がいいのか」
「そうだな。別に繋げても繋げなくてもどちらでもいい。必要と思えば繋げればいい。……他に聞きたいことはもうないか?」
俺は、さっきから思っていたことについて問う。
「どうしたら、どうしたら優妃は生き返らせることが出来るか教えてくれ」
俺の発言に観察者は少し黙り込む。
「……本当に君は生き返らせようとしているのか?」
「あぁ。俺のせいで死んでしまった優妃を、俺は生き返らせられる義務がある。だから、生き返るのならどんなこともする。俺は償わなくちゃいけないんだ」
「それだけか? それだけの感情か?」
観察者の言葉に俺は忘れようとしていた感情を思い起こす。
「いや、それだけじゃない。俺は優妃のことが好きだ。世界中のどんな人よりも」
「彼女には何故伝えていないんだ? 伝えればいいものの」
「そんなの無理に決まっているだろ。……俺のせいで死んだんだぞ。俺には優妃と幸せになる権利はない」
俺が言ったことに観察者は小さなため息を漏らす。
「それだけの思いがあるなら教えてあげてもいい。でも俺はあまり進めないぞ、人をもう一度蘇らせることは。それに私も本当に可能かどうか把握していない。信用できるか分からないものだぞ」
観察者は忠告するが、俺はそんなことどうでもよくなっていた。
「知るか! 俺はどんなに足掻いてでも絶対に成し遂げる。どんなことをしてでも」
「では、一つだけ条件を呑め。条件はこの世界で最強の存在になること。これを守れないのならば教えはしない」
最強になるって、すでに俺は究極級魔導師らしいから叶っているのではないか? この際どんな条件だろうとどうでもいい。
「分かった。この世で最強になってやる」
「よし。なら教えよう。実はこの世界には、特殊な玉がある。それは望みを叶える魔法の玉、望魔水晶というものだ」
「望魔水晶。それさえあれば本当に優妃を蘇らせられるんだな!」
俺は観察者に迫りながら訊いた。
「そう焦るな。望魔水晶を手に入れるためには、そのパーツである八つの古代の文献を見つけて、そして封印されている守護者を倒さなければならない。当然、守護者を倒したものが文献の所有者となる。守護者は創造者が封印した使い魔だ」
「ふぅん。それで、その古代の文献ってどこにあるんだ?」
「まだ二つしか分かっていない。一つは国際連合の倉庫。この倉庫の守り主が究極級魔導師の1人、ヴェルガー・ユナイトだからか誰も近づいていない。そしてもう一つは君の通っている封付学園だ」
どうやら運が良いらしい。まさか、学園に置いているとは思わなかった。
「学園のはまだ封印解いていないのか?」
「勿論だ。君はあの学園のことを知らないのか? 何故あの学園が封付学園という名前なのか」
確かに封付って何か意味深な言葉だ。今頃思うなんてびっくりするほど不思議だ。
「知らないようだから教えよう。封付学園は国際連合直属の高校で、大学までエスカレーター式の学園だ。まぁ大学に行くには上位20人だけらしいが。……もう分かったか?」
「ああ。封付学園は未来有望な存在を育成する学園。そんなところに保管させているものをそう簡単に持ち去ることは難しい」
そうか。だから高校生を厳選して一学年60人なのか。……でもなんで俺はあの学園に受かったのだろうか? 学園に入る前にした検査が関わっているのか?
「どうやって判断しているか分からないようだね。君たちは入学前の検査でこれからの成長率を測定されていたのだよ。そこで伸びがいい人材を合格にしているんだ。……では話を戻すよ。何故封付学園という名前なのかは、古代の文献開封の研究施設があの学園にあるからだ」
「そうか。だからあえて反対の意味である封付か。なんだかそんなことで名前を付けるって下らないな」
まるで小学生の考えのようだ。俺がそう思っていると、観察者は否定してきた。
「いや、下らなくはないのだよ。何故なら封付学園は国際連合直属の学園だからね。言わば世界が古代の文献を開封しようとしているんだ。そんな危険なことをしているのが判明しないようにするには、この方法は必須だ」
「それで封付と付けておけば研究を秘密裏にすることが出来るからそういう名前にしたのか」
これはすごいことを知ってしまった。こんなことが一般人にばれたら混乱するだろう。
「でもなんで高校にしたんだ? 大学の方が安全だろ」
「それは土地の問題だ。大学は都会にある。そんなところで封印を解こうだなんて考えないだろ。だから高校に研究施設を作ったんだよ。それに、文献を覆う魔法は巨大だから土地が必要なんだよ。そして、あの魔法を破ることは至難の技だ」
「確かに都会での研究はしないかもな。……だから田舎に研究施設、か」
「分かっただろう。今見つかっている二つを手に入れることは難しい。だが、近頃学園の文献を狙っている者がいるらしい。そいつを走らせておけば文献を手に入れられるだろう」
それなら、しばらくはそいつが出るまで静かにしておこう。
「もう一つ疑問があるんだけどいいか?」
「ああ、それでどんな内容だい?」
「どうやって古代の文献を開けばいいんだよ。これが分からないと守護者とも戦えないじゃないかよ」
俺が聞くと、観察者は『あっ』と、まるで忘れていたかのようなことを言う。
「教えるのを忘れていたか? これは危ないところだった」
「おいおい、それは最も忘れちゃいけないところだと思うぞ」
本当に忘れていたのか? 意外と忘れがちの人間? 俺に似ているようだ。俺は魔法の副作用だが。
「古代の文献を開ける方法は簡単なものだよ。そもそも古代の文献の中に封印されている守護者は、どうやって閉じ込められていると思う?」
「そんなの魔法で封印しているんだろ。というかそれ以外じゃ封印できないだろ」
「そうだ。だから封印を解除する方法は、封印された時の魔力より大きな魔力を与える。たったそれだけで封印は解除される」
「じゃあ大量の魔力を文献に向かって放てばいいんだな。意外と楽勝だな」
「確かにこれだけなら容易いものだ。しかし、封印を解いた直後から守護者は攻撃をしてくる。ただでさえ大量の魔力を使って封印を解除するんだ。直ぐに戦える状況になるのはかなり難しい」
「要するに、他のやつに文献へ魔力を放ってもらう必要があるってことか。しかも、放った奴はいきなり危険な状況に陥る。……確かに厄介だな。下手したらそれだけで1人死ぬってことだろ」
さすがにそんな役を望む奴はなかなか見つからないだろう。
「……でも、魔法で召喚したものが魔力を放てば問題なく解除出来るよな」
「そう。それはつまり、君なら危険な目に合わず解除できる。そういうことだよ」
さすが反則、いや、この場合はご都合主義の魔法だ。本当に何でも有りの魔法だ。
「……おっと、もう時間切れだ。また何時か会おう、創造の王、真田霊也。健闘を祈っているよ」
そう聞いた直後に再び瞬間移動機に似た物に揺さぶられる。そういえばこの魔法について訊くのを忘れていた。もう一度会えた時に訊いてみるとしよう。
目を開くとそこには自宅ではなく、帰り道のど真ん中だった。
「……あの野郎。別に家の前まで送ってくれたっていいじゃねえかよ。確かに元の場所に戻っているけどさ。……もう今日は疲れる日だわ」
勿論肉体的にも、精神的にも。今日は帰ったらベッドへダイブだ。やっぱりこんな毎日は御免だ。月に一度で十分な出来事だ。
明日投稿します~^-^