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ドリームクリエイト  作者: 真導霧照
模写せし黄狐
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今までの世界3

今回は結構長いまま投稿しました^-^

「まさかあの子が例の生徒だなんて……」

私には考えられない予想外な人間だった。初日から遅刻して、ここの規則を忘れているなんて、他の生徒ではそうはいないだろう。

「入学式から30分も経っていないのに、人の顔を忘れるなんて、私、人にこんなにも早く忘れられるのは初めてですよ。……あの子のおかげで気が重くなる」

近いうちにまた会う彼のことを考えてしまうと、本当に気が重くなった。

「今は私しかこの学園にいないのに、政府は延期してくれないから困るわ」

政府に文句を言いながら、私は仕事に戻った。



今日は入学式だったのでHRだけだった。その後、ほとんどの生徒は帰りの支度をしていたが、俺はHR中改めて言われたことを考えていた。

「摩導師の等級は上から究極級魔導師、超級魔導師、特級魔導師、上級魔導師、高級魔道師、中級魔道師、下級魔道師、低級魔道師と八つに分けられます。あなたたち高校一年生の平均は下級魔道師ですからまだまだこれからですね。また、教師や軍隊の将は必ず上級魔導師以上であり、尊敬の意も込めて導師と書きます。……」

自分と優那との差がかけ離れていることを改めて実感させられた俺は、その後のHRの内容が頭に入ってこなかった。

「はぁ。何で俺は魔法を使えないんだ」

俺はキーホルダーを握りながら呟く。

「霊也はきっと使えるよ。私が保障する」

「うぉっ」

「ちょっと驚きすぎじゃない」

後ろから声をかけてきたのは優那だった。何だか今日は独り言を口に出し続けている。しかも全部優那に聞かれる始末だ。このままだと、もっと危険な事まで話してしまいそうだ。そんなことを思っている俺とは裏腹に、優那は笑顔で俺を見てくる。

「はぁ、優那か。……それで、なにか用か?」

「そんなの決まっているよ。一緒に帰ろう」

「あぁ。いいぜ」

別に断る理由なんてないし、断ったときの理由もないので、俺は即答する。別に暇なわけではないが、俺には特に急な用事がないだけだ。

「帰りは瞬間移動機使えるんだろ?」

「……霊也、もしかして先生の話聞いていなかったの?」

「まぁな。少し考え事していて」

優那との実力の差について考えていた、とは言えない。いや、そもそも言う気は全くないけど……。

「ふ~ん。とっても簡単に説明すると4月は使えないんだって」

「はあ!」

俺は目玉が飛び出るくらい驚いた。こんなに驚く内容が聞かされていたとは……。考え事は集中しすぎると危険だ。これは俺にとっての今日の教訓だろう。

「っていうことは明日からも徒歩かよ」

「勿論!」

俺は明日からのことを思うと、憂鬱な気分になってしまう。片道40分とか歩きたくない。何で入学早々こんなにも災難が続くのだろうか? 俺はついこう思ってしまうのだ。

「おい、真田霊也。これから仲良くしようぜ」

俺達の会話を遮り、誰かが急に後ろから声を掛けてくる。びっくりして振り返ってみると、知らない坊主が俺をまじまじと見ていた。

「え~と、誰だ?」

「ねぇ、霊也。HRで自己紹介をやったばっかりなのに覚えていないの?」

優那は俺を馬鹿にしてくる。仕方ないだろ、ずっと考え事していたんだ、とは言えない。

「優那。急に耳元で喋るなよ。頼むからこれからはやめてくれ。……というか優那は覚えているのか?」

「…………………」

どうやら優那も覚えてないようだ。分かりやすく目が泳いでいた。どうやら俺達の会話を聞いて名前覚えようとしている、いや、確実にそうだろう。何とも性格の悪い奴だ。

「話を戻すが、改めて自己紹介してくれないか? 俺、記憶力悪い方なんだ」

「霊也、今かなり失礼なこと言っているよね」

自分でも自覚しているところを優那は直ぐに指摘してくる。単に理由が思いつかなかっただけなのだが、それでも理由が酷かった。だが、実際のところ優那も覚えてないだろうから人のこと言えないはずだ。確かに聞き方が悪いのは俺のせいなのは間違えないのだが……。と言いたいのは山々だが、決して口には出さない。理由は勿論、言ったら言ったで面倒臭いからだ。

「いいんだ。俺の名前は野良(やら)(りょう)()。亮次って呼んでくれ。ちなみに炎の下級魔道師だ。趣味は炎のことについて調べることだな。よろしく!」

「おう! よろしく、亮次。お前、炎が好きなんだな。ところで俺もまた自己紹介したほうがいいか?」

「霊也、普通自己紹介させたんだからもう一回やるべきじゃない?」

俺は亮次に訊いたはずなのに何故優那が答えるのだろうか? 別にもう一度自己紹介するぐらいは良い。それよりも俺は自己紹介していたのだろうか? 全く記憶にない。……いやいや、何度も思うが、優那も亮次のこと覚えていなかったはずだ。ならば優那も自己紹介するべきだろう。確かに俺が亮次に自己紹介頼んだのだから、俺だけが自己紹介するだけでいいことなのだが、なんだか不公平ではないか? いや、結局は俺が聞いていなかったのがわるいのだが、それでも今度、俺は優那に仕返ししてやる、と俺は心に決める。

「じゃあもう一度自己紹介するか。俺の名前は真田霊也。まぁ、呼び方は何でもいいぜ。魔法は何が使えるか分からない低級魔道師だ。趣味は昼寝だな。これからよろしく、亮次」

俺達は二度目の自己紹介を済ませた後、俺達は少し雑談をした。―――雑談の終わったころには、教室には俺と亮次、そして優那だけになっていた。

「あれ? そういえば何で永瀬さん教室にまだいるの?」

ふと亮次が優那に訊いた。そういえば優那と帰る約束していたことを完全に忘れていた。俺は優那に後ろめたい気持ちとこの事に関しての優那の仕返しをどうやって回避するかの二つを考える。

「だって私、霊也と帰る約束しているし……」

優那が答えた瞬間、亮次がいきなり俺を引っ張って廊下へ連れ出した。意味が分からない。何で俺が引っ張られて、机の角や椅子にぶつからなければいけないのだろうか? 誰が後で戻すのか全く気にしていない。俺は絶対戻さないでさっさと帰ろう。俺は決意そう決意した。

「おい、真田。どういうことだよ。あんな美少女とどんな関係なんだよ」

「……あのさ、誰が美少女だ? そんな話をするために廊下に引きずり出したのかよ」

「もしかしてお前、永瀬さんのこと美少女だと思っていなかったのか? それにそんな話とはなんだ! 男子であれば気になることだろ!」

亮次は物凄く力強く言い張る。亮次は妙に鼻息が荒い。

「へぇ。そういうものなのか。で、美少女って優那のことか。あいつとは幼稚園からの付き合いだからな。そんなこと一度も考えたことなかった」

「幼馴染……。だから朝から仲良かったのか。まぁ納得だ」

亮次はどうやら納得してくれたらしい。そもそもどこに疑問があったのか全く分からないのだが、まぁ俺にとっては理解しがたいことだ。

「だがしかし、美少女だと思っていなかったなんてありえない。あの瞳の美しさが目に入ったとき、俺は一瞬妖精かと思ったぞ。ちなみにHR後にお前以外の男子でクラス美少女ランキングを付けていたんだが、当然永瀬さんがクラス男子90%の投票率。理由なんて1人1人挙げていたら限がないくらいだ」

「そ、そうか……」

俺は優那が美少女なことは知ってはいるが、心に決めていた女性がいるので興味がない。というわけで、どうやってこの話題から逃げるかを考えることにする。

「ねぇ、早く帰ろうよ」

どう逃げるか考えていると、教室のドアが開き、優那が声を掛けてくる。これならこの場から離脱できる。今の優那は俺にとって手助けしてくれる精霊に見えた。さっきまでは悪魔だったが、そこについては気にしない。

「あぁ、そうだな。じゃまた明日な、亮次」

「くっ、仕方ない……また明日この続きをしてやる! これから男子の恨みには気をつけろよ。俺は恨まないが、他の男子はどうだか分からないからな」

もう結構です。男子の皆さん恨まないで下さい。俺は心の底からそう思う。―――亮次と別れた俺は、優那と朝から全力で走ってきた道を、話しながらのんびりと歩いて帰る。

「なあ、優那って意外にモテるんだな。全然知らなかった」

「私が? ないない。これからもそんなことは起こらないに決まっているよ」

「ふ~ん。でもそんなこと望んでいるわけじゃないんだろ?」

「それは……秘密かな。少なくとも霊也には教えないよ」

「あっそ。別にそこまで知りたいわけじゃないしいいけどさ」

「それはそれで傷つく言い方だよね」

だんだん言い返すのも疲れてくる。俺は普通に会話をしているだけだと思うのだが、何故だかたまにこうなる時がある。明日は今日よりゆっくり過ごすことが出来ることが出来るだろうか? 俺は心からそう思った。そして、俺が怯えていた仕返しは杞憂に終わり、心の底から安堵した。



「お前たち今日のミッションの重大さ分かっているな」

「はっ。必ずや成功してみせます、大将」

大将と呼ばれた男は子分に命令した後、ポケットから写真を取り出す。

「ふふふ。私の出世の道具となってもらうよ、永瀬優那」

男は写真を握りつぶして炎の魔法で焼く。炎はまるで彼女の命の灯のように見える。そしてその炎はだんだんと小さくなり、やがて消えていった……。


次は明日投稿できると思います


次からは1章です^-^

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