今までの世界1
これは前に書いていた小説です。
至らぬ点がたくさんあると思いますので、ご指導よろしくお願いします。
「霊也。お前は魔法とはどのようなものか分かるか?」
「う~ん。えっと魔法って……」
昔、俺が魔法を手に入れた時、父さんに問われた。だが俺は、その時何と言ったのか覚えていない。いや、もしかしたら答えられなかったかもしれないと思うほどに。
「そ、そうか。霊也はそんなことを思っているのか。ふふ、面白いな。さすが俺の息子だ」
でも、あの時の父さんは少し驚いた顔をしていた気がする。どうせ変なことを言ったんだろう。
「だけどな、霊也。これだけは忘れるな。魔法使いは……」
鶯の鳴き声がする。俺はその音色で目が覚めた。
「父さん。俺はあの時なんて言ったんだ……」
俺は不意に呟く。
「多分、ありがとうって言ったんだよ」
すると、ドアの方から俺の呟きに1人の少女が答えてくる。
「意味が分からない……って、なんでお前が俺の部屋にいるんだ?」
「それは、遅刻しないように起こしにきたんだよ」
3秒ほど思考が止まった。それもそうだろう。先週まで霊也が起こしに行かなければ起きないという、朝が超弱い本人が俺を起こしに来ているのだから。俺はまだ夢から覚めていないのかと思い、自分顔を全力で殴ってみる。
「痛って~。ここって本当に現実?」
「霊也。何処か打った? 病院行ったら?」
変な意味で心配する彼女を放っておいて、俺は落ち着きを取り戻すために思考を一旦シャットダウンさせる。一方、俺が無視した彼女は笑顔で見てくる。
「……よし! とりあえず質問いいか優那?」
「うん。いいけど」
俺は深呼吸をしてから落ち着いて質問する。
「お前何時も誰に起こしてもらっているのかな?」
「え~と、真田霊也という人物ですけど……」
「それは俺のことだろ!」
俺は即座に優那の耳元で言い返した。何時もならここで『鼓膜が~』とか喚くのだが、何故か今日は何事もなかったかのように立っている。俺はこの状況に、自分はまだ夢の中なのではないかと思ってしまう。だが、先程自身で殴った頬の痛みが残っているので、現実だと認識できる。それほど、の前にいる彼女の対応が、何時もとは一味も二味も違うのだ。
「ふふふ。こんな展開になる可能性も考えて、霊也が深呼吸をしているうちに耳の中に水の魔法で障壁を作っておいたんだ♪」
満面の笑みでこちらを見てくる彼女、永瀬優那は、今までの俺の知識ではかなりだらしない幼馴染である。良いところは元気なところぐらいだろう。だが、先ほどまでの行動を見ていると、前者はまるで別人に思えてしまう。
「朝ご飯作っておいたから早く食べようよ」
「……お前本当に優那なのか? 俺の知っている優那はかなりだらしなくて、料理なんて1人でいる時、それも極たまにしかやらないのに」
俺の言ったことに反応した優那が口を尖らせて睨んできた。俺はただ事実を述べただけであるのだから、何も睨むことはないだろう。だが、それと同時に俺は何故か胃に危険を感じる。
「そんなこと言うなら食べさせないよ」
「すみません。もう言いません。食べさせてください。というか食べてみたいです」
俺は思わず即答してしまう。そういえば、優那のご飯は今までに食べたことがない。というよりも、優那自身、他の誰にも食べさせたことがないのではないだろうか?
「仕方ない、許してあげよう。ということで、早く朝ご飯を食べようよ。……あ、その前に学園の支度しておいた方がいいかも。今日は入学式だし遅れないようにしないと。じゃあ、先にリビングで待っているから」
先ほどまで不機嫌だった優那は急に機嫌を直して俺の部屋から出て行った。何時ものことなのだが、優那の心境の変化には付いていけない。今日は雪でも降るかと思いながら、俺は急いで学園の支度をして一階のリビングに向かった。―――その後、俺は優那が作ってくれた朝飯を完食して、優那と一緒に学園行きの瞬間移動機のある場所に向かう。ちなみに優那のご飯は意外にも美味しかった。
次回の投稿は2,3日後かと思います^-^