表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/102

選手たちのPR

今回はかなりの短編です。

「明日は奈良とのダービーでぇすっ!」

「是非来てください、お待ちしています!」

 試合前日の朝。JR和歌山駅のバスターミナル付近で、剣崎や西谷がユニフォーム姿でチラシを配っていた。竹内は通学前の女子高生に囲まれながら、鶴岡は遠足と思われる幼稚園児の集団に肩車をせがまれていた。矢神はやや恥ずかしそうにチラシを配る。


 ダービーマッチに少しでも多くの県民に来てもらおうと、選手たちが各ポジションごとにわかれて各地でビラを配っていた。FWはJR和歌山駅、MFは同岩出駅と紀の川市役所前。DFは海南駅、GKと首脳陣は南海和歌山市駅にて配っていた。

 一番盛り上がっていたのはやはり和歌山駅。FWというポジションはゴールに絡みやすく、イコールニュースで取り上げられやすいシーンに顔を出すのでみんなピンときやすいようだ。通学途中の学生や出勤するサラリーマンはもちろん、主婦やお年寄りからも「がんばんなあよ」なんて声をよくかけられていた。

 そうした盛況もあり、FW組が一番先に配り終わり、余った時間で即興のサイン会や撮影会も行われ、チラシ配りは大成功に終わった。

「いやあ面白かったぜ。俺達って結構人気あったんだなあ」

 クラブハウスに戻り、午後からの練習が始まる前に、剣崎は余韻に浸っていた。

「お前ら結構すいすいと配り終えたらしいな。こっちはサイン会開くまでは行かなかったよ。川久保さんが怖くて子供泣いちゃうんだよね」

「大森…、ばらさなくていいだろ」

「俺達キーパーもちょっと寂しかったなあ。友成と監督ばっかに人集まって、俺なんか係員なんて思われてたし」

「はっ。何言ってんすか吉岡さん。主婦にモテモテだったでしょ」

 剣崎だけでなく、選手たちが街中での触れ合いで何かを感じていた。


 実はこのチラシ配りは、バドマン監督の発案だった。ダービーを前に緊張感の高ぶりをほぐすためだ。緊張感が高まることは悪くはないのだが、リミットを超えてしまうと悪影響に繋がりかねないのだ。そしてもう一つの理由が、サポーター以外の声援を感じてもらうためだ。

「我々を応援するのはサポーターだけとは限らない。それを実感することは必ず力になる」

 それがバドマン監督の意図であり、選手には想像以上のプラスに働いたようだった。

「奈良対策の練習をするより、このチラシ配りの方が何倍も力になる」

 バドマン監督はそう言って笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ