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両チームのミーティング

今回はせりふが多めです

「さてと。まあこっちにはうちの守護神とエースがいるわけだから、力的にはこっち側があるかもしんないね」

 こちらはクラブハウスのトレーニングルーム。Aチームに選ばれた面々がミーティングをしていた。栗栖がペンを片手に、ホワイトボードに自分たちと相手の布陣を書いている。

「ま、俺がいるんだから大丈夫だろ?栗栖か俊也にボール渡してくれりゃ、後は俺がバシッと」

「決めれるなら苦労しねえよバカ」

「んだとぉう!」

 友成のツッコミに、雑魚寝していた剣崎は相変わらずの反応を見せる。

「なるほど。こういう関係か」

「まるで年子の兄弟だな」

 新しく入った沼井と結城には、プロとは思えないやり取りが新鮮だった。

「まあ、剣崎が得点源になるんだろうけど…、俺は中盤の構成がちょっと気になるんだよなあ」

 そう言って、栗栖はホワイトボード上の中盤の五人を大きな丸で囲んだ。

「こういう布陣でいくとさ、最後尾からの攻め上がりでちょっと問題あるんだよな」

 これに同調したのは、3バックの一人の大森だ。

「それ僕も思った。あんまパスうまくないんだよなあ」

「恥ずかしいけど、キックもそんなに飛ばないしね」

 苦笑いしながら江川も頷いた。

「そんでもって、たぶんバドマン監督は俺をボランチで想定してんだろうけど、そんなに守備得意じゃねえんだよな」

 頭を書きながら栗栖がぼやく。同じように竹内もトップ下に配置されているのに違和感があるようだ。

「・・・。ポジション、勝手に変えていいのかな」

 猪口のつぶやきに全員が反応する。それを見て猪口が栗栖に代わってペンをとる。

「僕だったら、栗栖をトップ下、俊也をフォワードにして敦志をボランチにするかな。運動量あるし、玉際強いし」

「それ俺も賛成だぜ。俊也とならクリとのトップ下も合わせてユースのころから慣れてってからよ」

「俺も一票。アツの運動量ならボランチもいけるぜ」

 猪口の意見に賛同したのは剣崎と栗栖。さらに江川も手を挙げた。それに対して桐嶋が反論する。

「いや、太一のは悪くねえと思うけどよ、勝手にポジション代えんのは反則なんじゃねえ?第一、削られるんだったら俺はアツの突っ込むドリブルのほうが嫌だと思うな」

「太一には悪いが、それはなしだ。俺は今年フォワードとしてのプレーにかけてんだ。首脳陣から言われねえ限りはフォワード以外ではプレーしたくねえ」

 そしてユースからの付き合いでもある友成も、猪口の案に否定的だった。

「今回のボランチは、運動量云々の話じゃねえ。確かにそれがあるに越したことはねえが、同時に司令塔並みのパスセンスと視野の広さが無いんじゃ意味がねえ。お世辞にも敦志にはそんなセンスねえし」

「悪かったな」

「あのさあ・・・」

 西谷がすねたところで、結城が手を挙げた。

「俺、今年からお前らとプレーしてるから、雑誌とかテレビとかでしか知らないけど、だったらお前がボランチをやればいいんじゃないかって思うんだけど、どうかな」


 結城の案は満場一致で決まった。







「こっちはお互いの特徴を十分に把握できていないし、言い方は悪いが得点のにおいがあっちよりも薄い。まずはどれだけ守れるか、だな」

 一方こっちはミーティングルームのBチームの面々。

 こちらはすぐにサイドからのクロスの質と、セカンドボール奪取で優位に立てるかと、作戦の目星をつけていた。

「守備においては長山、お前がカギだぞ。桐嶋のスピードは、ベンチとピッチじゃずいぶん印象が違うからな」

「まあ、任せてくださいってチョンさん。こっちは試合に出たくて来たんだし、佐久間を追い出す気概でいますんでね」

「川久保とソノは2トップを頼む。特に川久保。剣崎相手は少々手ごわいぞ」

「少々どころか。正直言って敵に回したくないですよ。俺が勝ててんのはガタイぐらいですからね」

 チョンの指示に、川久保は苦笑して本音を漏らす。味方として1年間、剣崎がどれぐらい只者で無いかは痛いほど実感している。そもそも文字通り「怪物」でなければ、J2とはいえ高卒1年目で得点王なんてなれるものではない。チョンも、「我ながら無茶な指示を出したな」と内心笑っていた。

「攻撃は矢神、お前がキーマンだ。鶴岡とは距離を保て。それからセカンドボール争いでは絶対に負けるな。お前のスピードならやれる」

「う、ウスッ!がんばりますっ!!」

 この紅白戦、矢神は燃えていた。ユースからの昇格した同期の中で唯一起用されていることもそうだが、先輩である剣崎との違いを見せ付けるチャンスだと意気込んでいた。

(俺とあの単純バカとは違うんだ。それを見せ付けてやる)

 そしてチョンは最後に全員に言った。


「あとは全員に言えるのは決して気を抜くなということだ。実力もそうだが、たかだか1年坊主だったあいつらがプロで結果を残したのは、メンタリティーが半端なかったからだ。ビハインドでも落ち込まず、リードを得たら一気に加速する。まずは先制点だ。陣形をコンパクトにして、必ずゴールをこじ開ける。・・・まあ、こじ開けるには骨の折れる守護神がいるがね」

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