不香の花
屋敷の縁側で、吹雪はひらひらと舞う雪を見ていた。屋敷内は、年末ということもあってバタバタしているため、吹雪は邪魔にならないようにこうして一人、雪を眺めているのだ。
(…ひま)
何か面白そうなものは無いのかと、吹雪が辺りをキョロキョロと見回していると、突然名前を呼ばれた。
「吹雪クン、吹雪クン」
声のする方を振り返ると、八つ歳上の八雲が部屋から手招きしているのが見えた。吹雪がトコトコと寄って行くと、八雲の部屋には彼の他に、吹雪より三つ歳上の焔と、朧、五つ歳上の撫子、七つ歳上の霧央、そして、二つ歳下の疾風が居た。どうやら皆、子どもの中で一番最年長の八雲のところへ避難(?)して来ていたようだ。
「八雲兄、どーしたの?」
吹雪が聞くと、八雲は吹雪を膝に座らせて、「そーだねぇ」と呟いた。
「じゃア、僕の出す問題に皆には答えて貰おうかなァ」
八雲がそう言うと、皆が八雲の周りに集まって来て、それぞれ座った。霧央は同じ様に疾風を膝に座らせた。
「じゃア、コレは何だかわかるかい?」
そう言って八雲が取り出したのは、鮮やかな色彩で彩られた花の絵だった。すると、撫子が絵を指差して言った。
「八雲兄、それは撫子だよ」
八雲はニッコリと微笑んで、「正解」と言った。そして、次も綺麗な花の絵を見せた。
「「桔梗!」」
焔と朧が食いつく様に言って、目を輝かせた。八雲は、そんな二人を微笑ましそうに見ながら、「そうだね」と言った。
「八雲兄ちゃん、次は?」
答えられていない疾風が急かす様に言うのを、霧央が頭を撫でて宥めると、八雲は窓の外に目をやった。
「じゃア、最後の問題。不香の花って何のことだと思う?」
疾風は勿論の事、そこにいた皆が首を傾げた。八雲が「不香」の意味を説明してくれたものの、さっぱりわからない。吹雪が必死に頭を悩ませていると、八雲はイタズラっぽく、クスリと笑った。
「ヒントは、吹雪クンだよ」
皆、余計に分からなくなっている様だったが、一人吹雪はヒントの意味に気がついた。
吹雪は口元に手を添えて、八雲に囁いた。
窓の外に沢山の不香の花が舞っていた。
初めまして、 ゆきろ です。
この話を読んで頂いてありがとうございました。これは、自分の幼い頃の出来事です。
力量不足で、文才もないですが、これから頑張って、連載物にも挑戦しようかと思っております。
ありがとうございました。