95 ハロンの山周辺
ただいまロハの町に来ています。
約束通り、夏期休暇、レンと一緒。
「久しぶりだね、変わりない?はい、これ、お土産」
リーアに紙袋を渡す。
ヒツジ商会のお菓子がぱんぱんにつまっている。
「わ!ありがと!」
「あるがとう!」
ふたりはさっそくがさがさと紙袋を鳴らす。
「あ、これ好き!コヅにぃが前にくれたやつ!」
「コヅさん?」
「うん!コヅにぃ、秋にねぇちゃんと結婚すんの!」
「へぇ」
そういえば宿の長女が美人だ好みだと言っていたな、とイチイは思い出す。
「秋に村で結婚式やって、そのあと冬に城下に越して結婚式すんだって」
「結婚式」
こちらの結婚式ってどんなものなんだろう。
「だから冬に城下で遊ぶんだ!イチイの店にも行ってみたい!」
「いいね、おいで。お菓子たくさん用意しておくよ」
「やったぁ!」
「わーい!」
ミィの頭を撫でながら、考える。
ウェディングケーキ、なんてどうだろうか。
宿で一泊し、翌朝、ハロンの山を上る。
目的は宝石箱と魔方陣と、水場、それを超えて下り、チガヤ王国へ行くのだ。
「これは・・・見事だな」
「綺麗だよね」
「あぁ・・・すべて魔石だな。此処に住みこめば確かに魔力が上がる。イチイの魔力の源はこれだろう」
「へぇ」
ここで召喚?されたことが良かったのか。
「魔方陣は・・・うん、やはり移転の応用だな。発表されてないものだが、良く出来ている。名うての魔法使いだろう。王国図書館で調べてみよう。イスフェリアにないならチガヤにあるかもしれない」
あまり調べることはせず、水場に向かう。
「良い水だ。魔力を帯びた癒しの水。この山自体が魔力を帯びてる様だな」
レンの考察を聞いていると突然影が差した。
見上げると。
キタ。
「・・・レン」
「・・・・・・・・なんだ」
「・・・・・・・・・・・ヤバイ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・わからん」
「えーと、どうしたら良い?」
「攻撃は却下だ」
「ラジャー」
ゆっくりと旋回し、巨大生物が降り立つ。
キラキラと輝く青い鱗。ぎょろりとした目。鋭い爪。牙。
ドラゴンは頭を垂れ、啼いた。
音量でかっ!こわっ!
『ようやく・・・ようやくお会い出来た・・・!』
『ご主人様!』
「・・・・・・・・・レン?」
「いやイチイだろう」