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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第五章
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3年初の月末テストである。

何故かチガヤ言語は解るので問題なしで、他筆記も全く問題なし。

しかも今回から無詠唱可なので、実技も問題なし、補習なしでイチイは上機嫌だ。

剣術のトーナメントは2位。

因みに1位はオースティンだ。

そういう訳で入学して一番の高得点で、堂々首席である。

今までも首席はあったが、2位を此処まで引き離しての1位はアガる。

因みに今回の2位はミカではなく知らない人だった。



今月の売上も、店の客数が増えたこと、ニトロプリア分の自販機も新設したこともあり、金貨が10枚となった。

あと100枚程度で完済である。



月末テストや商会の集計が終わり、少し落ち着く月初。

その招待はやって来た。


「実はわが主が、イチイ殿をお茶会に招待したいと」


「お茶会・・・ですか?」


茶菓子の準備ではなく、お茶会と。


「えぇ。秘密の仮面茶会でございます。何というか、その、バレバレではありますが、仮面をして正体を隠し、お茶会をするのです」


「へぇ・・・」


とはいっても、イチイには誰が誰、ということはわからないのだが。


「主の趣味でございます。元々この店の菓子を気に入っておられましたが、マカロンを、大層気に入られまして・・・それで是非お話をしてみたい、と」


「なるほど~・・・でも・・・貴族なんですよね?私平民なんですけど、大丈夫なんですか?」


「主は気にしないと申しております」


主は、と言っているところが気になるのだが。

でもまぁ。


「面白そう」


新作菓子のリサーチも兼ねて、招待を受けることにした。







城下町で一番大きくて綺麗な別邸で、その茶会は開かれるという。

仮面はヘレンの話を参考に自作。

イメージはオペラ座の怪人のファントムだ。


フォードに茶菓子の半分を注文されていたのでそれと、手土産に飴細工を用意した。

貴族の茶会の手土産は、茶葉やアルコール、布地や花などの観賞物らしい。

なので鑑賞用飴細工の青いバラだ。湿気防止のために空間魔法を掛けた透明の箱にいれてある。



事前にこの茶会では名を伏せ、通り名を使うと聞いていた。

しかし参加者は皆顔見知り、姿形・声で明らかに誰だかわかるので、通り名に愛称を使うのが常なのだそう。

イチイの名は短いので愛称がない。よってヒツジと名乗ることにした。


テーブルの上には盛り沢山の菓子。

イチイの作ったものと違うものが半々で並んでいる。

参加者はそれらを思い思い摘まんでいる。

傍らに茶器を乗せたワゴン、侍女が数人。

カップが空になると空かさず茶が注ぎ足される。

素早い。


「本日のお菓子も美味しゅうございますわ」


「えぇ、本当に。トゥレ様は本当にお目が高いですわ」


トゥレ様というのが、主の通り名らしい。

イチイには貴族の話題がわからないので、とりあえず様子見である。


お家自慢だったり今流行りらしいドレス職人の話だったり。

貴族の名前も碌に知らないイチイにはイマイチだ。


イチイはとりあえず、自分の作ったものではない菓子を口に運ぶ。

取り立てて珍しいものはない。

ただ上質な菓子ではあるので、味は悪くない。

マドレーヌやフィナンシェといったバターケーキ系の焼き菓子とスポンジにクリームとフルーツを添えたもの、ブラックベリーのタルト。

参加者を観察しているとどうやらタルトが人気の様子。

うちの店でもタルトものを増やしてみようか。


「ヒツジ様はお口に合いまして?」


「はい、美味しいです。・・・ところで、皆様はどんなタルトを好まれるのですか?」


「わたくしは、以前頂いたチーズのタルトが好きですわ」


「それは・・・ありがとうございます」


「チーズのタルト!?そんなものが?」


チーズをお菓子に使うのはまだ一般的ではないらしく、知らない参加者もいるようだった。

そこからチーズのお菓子の話になり、タルトの話は流されてしまった。

リサーチ失敗。


「ふふ、さすがヒツジ様。また次回のお茶会もぜひいらしてくださいね?」


どうやらトゥレに気に入られたようである。

こうして一回目のお茶会は何事もなく終了した。



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