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クリスマスだ。
イチイの気分的に、であるが。
元の世界ならば今月は12月にあたる。
半ばの今頃になれば日本中がクリスマス一色。
ご近所さんの庭はクリスマスイルミネーションで彩られ、街を歩けばツリーだらけ。
さてイチイが何故それを思い出したかというと、目の前にクロカンブッシュがあるからである。
今日は初めてスーにシューの作り方を教えた。
一緒に作った分はカスターを詰め、イートイン用と試食用に回した。
ではスーが一人で作ってみよう、となったのだが・・・。
簡単な話、あまり膨らまなかったり、へしゃげていたりと使えなかったのである。
シューが大好きなスーは半泣きで頑張った。
頑張ったがしかしなかなか出来ず、何度も作り直した結果、膨大な量のシューになったのだ。
形は悪いが食べられないわけでもない。
そこで思いついたのがクロカンブッシュである。
飴でシューを積み重ねてツリー型にする。
本来ウェディングケーキであるはずなのだが、見た目からはクリスマスが連想される。
初めてするシューのツリーにスーとトマは喜んだ。
・・・子供は好きそうだ。
考えた結果、固定魔法をかけ、ディスプレイにすることにした。
ついでなのでイートインはシュークリームフェアだ。
カスタードシュー、エクレア、白鳥の形のシーニュ、苺入りのパリブレストなどである。
どうせなら、もっとクリスマスにしてしまおうか。
苺のデコレーションケーキ、ブッシュ・ド・ノエル、クッキーで作るお菓子の家、メレンゲ細工でサンタクロースやトナカイ、ツリー。
「うん、クリスマスっぽい」
「クリスマス?」
「そう、クリスマス。私の故郷ではクリスマスってイベントがあったんだ」
日本ではキリストの誕生日っていうかもうイベントだよね。
家族とか恋人の一大イベント。
「ツリーを飾ってケーキ食べて、プレゼント貰って」
サンタという名の両親からのプレゼントは小学校のとき、椿がサンタの存在を信じなくなってから終わったが。
「ケーキ」
「そう、こういうの」
苺のデコレーションケーキとブッシュ・ド・ノエル。
小学校の時はデコレーションケーキだったが、中学からは椿の希望でブッシュ・ド・ノエルだった。
クリスマスには小さなブッシュ・ド・ノエルをイートインメニューに加えようか。
「次はスポンジを焼いてみようか」
「はい!」
嬉しそうなスーの頭をぐりぐりと撫でる。
11歳のときってこんな小さかったっけ。
いや、私はすでに150オーバーだったな、とイチイは思った。
たぶんスーは140ないぞ。
「どうせならモミの木とか柊とかリースとか・・・クリスマスするか」