78・Side.ロニ
「おもしろーい」
面白くない。全くもって面白くないっ!
元々、イチイがレンと城下に引っ越したのも嫌だった。
ニトロプリアを本拠地にしている冒険者の存在も気に食わないし、屋台の炎使いも気に食わない。
学校に通い始めてまたライバル増えてるし!
背の高い、イチイと同じ黒髪の男。
あいつの視線はそういう視線だ。
店内にいなかっただけで、他にもいるんじゃないだろうか。
トマの話だとジークフリード侯爵子息とも仲が良いとか。トマと一緒に手伝いをしていた2人も怪しいし、距離がある分不利なんじゃないだろうか。
「あはははは!大丈夫、イチイは誰のことも好きじゃないから!!」
「それはそれで凹むわ!」
俺のことも好きじゃないってことじゃないか!
「兄上最初は嫌われてたんだから、大した進歩なんだし、いいじゃん」
「お前馬鹿にしてるだろ。それに嫌われてない、怒らせてただけだ!」
「似たようなものじゃん、おれは怒らせても嫌われてもないもーん」
いつの間にこんな生意気に育ったんだ。
いやこれはイチイの影響のような気がする・・・。
俺も貴族らしくないが、トマは一層貴族らしくない。
よく街で遊んでいたからだとは思うが。
父上も兄上も領地の仕事で忙しかったからだと思う。
トマの育ての親はいわばナッティ、しかしナッティも一応貴族である。男爵位だが。
「できたよー」
店を閉めたあと、イチイが店で夕食を振舞ってくれた。
打ち上げらしい。
果実酒ももらい、舌鼓をうつ。
イチイは楽しそうに食べ終わったノアと遊んでいる。
トマとスーも加わり、子供組は楽しそうだ。
・・・いや、イチイは子供組に分類される年齢じゃないが。
俺も城下に越して来たい。
学校通いたい。今更すぎるな。
何か城下で働き口を見つけるか・・・。
「あ」
城下には父上の別邸があるし、クエストだけで生活出来るんじゃないか?
可能ならイチイに雇ってもらえば店でも一緒だし。
・・・いいな、それ。
とりあえずイチイに話してみよう!