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ロハの町、最後の朝食は豪華だった。
リーアとミィのおとうさんが、最後だからと腕を奮ってくれたのだ。
ふたりとよく遊びに行ったので、そのお礼らしい。
今までここまで遊んでくれた旅人はいない、ということだった。
・・・精神年齢が低いんだろうか。普通に楽しんでたし。
この世界で初の牛肉は外側が焼かれ、中は半生。ローストビーフだった。
付け合わせにマッシュポテト、野菜スープはトマト味、キノコと海老が入っていた。
海老も初だ。ふたり初めて会ったあの池に生息する小さな海老だ。殻ごと食べられるらしい。
主食はいつもの薄焼パンだが蜂蜜のおまけがついていた。
お弁当としてローストビーフサンドと甘辛チキンのサンドまでもらってしまった。
リーアとミィにまた遊びに来るね、今度はお土産も持ってくるからねと約束して出発。
リーアは涙目、ミィは大泣きして大変だった。かわいい。
そして現在、何故か冒険者一行に加わっている。
広場でリーアに声をかけられ、イチイがひとりだと知って合流してくれたのだ。
優しい!親切・・・!
冒険者一行は5名。馬は2頭で、乗るためというよりは荷物運び用らしい。
「そんで、ニトロプリアは麺がウマイ」
その中の1人であるクライスさんと話が弾む。
ガタイの良い20歳くらいのお兄さんで、食べることが大好きらしい。
「麺!どんな麺なんですか?」
イチイは麺好きだ。米もパンも好きだけど。
「細長くて、汁に漬かっている。その汁を飲みながら麺を食べるのがウマイんだ」
細長いというと、ラーメン、ちゃんぽん、そばあたりが浮かぶ。
それともフォー?ビーフン?
汁っていうと何か微妙だ。スープって言って欲しいな。言わないけど。
「原料は?汁の味は?」
「スープは塩と魚介の味だな・・・麺は・・・麦、か?」
曖昧だけど、塩ラーメンに近そうだ。
「あとはなー、薄焼じゃないパンもある。ロハのは一枚ずつ薄く焼いてるけどな、ニトロプリアのは大きい塊を焼いて薄く切るんだ。厚切りもあって食べでがある」
この世界のパンはミルクの入ってないものが主らしい。要するにフランスパン的な。
ただロハのパンはナンに近い感じがした。原料製法はわからないが。
「ついたら麺食おうぜ、一番うまい店に案内するし」
「ぜひ!お願いします!」
「・・・お前ら食い物の話ばっかだなぁ」
年長でありリーダーであるフィンが呆れてため息を吐く。
「食は基本ですから。人が一生で食べられる量は決まってます。それなら美味しいもの食べたいじゃないですか」
「そうですよ!うまいもんくわねぇと元気もでないですって!」
「・・・クライスがふたりいるみてぇだな」
ロハから西。ニトロプリアまで7日の道のり。
ロハはニトロプリアの貴族の領地で、同じ領地だと比較的道は均されている。
モンスターの侵入を防ぐ魔道具はとても高価らしく、よほど金持ちの領地なら街道にもあったりするが、その他は人の住んでいるところだけに利用されているらしい。
ロハ、ニトロプリア間のモンスターは比較的弱いらしく、イチイの訓練のために半分ほど、イチイが戦闘を担当した。
その甲斐あってか、わりと動かせるようになった。
冒険者一行は4人が長剣、1人が弓矢なので教えてもらうのは不可能。
習うより慣れろ、だ。
出現モンスターはスライムがほとんど。スライムは中心にある核を傷つければ溶けていく。
そのあとには大抵穴あきの銅貨が残った。イチイが倒した分はすべてイチイにくれる。ありがたい。
夜は3人ずつ交代で睡眠をとった。5時間ずつ眠る。
夜は夜行性の蝙蝠型モンスターが出現し、銅貨を落とすので割と稼げた。ごくたまに銀貨を落とすのが嬉しい。
飛行型モンスターは槍で攻撃しやすいのも良かった。
そしてこのモンスター、なんと素材を集めることが出来るという。
詳しく判明していないらしいが、死亡後即消滅するモンスターとタイムラグがあるモンスターがいるらしい。
そしてタイムラグがある方のモンスターは牙や爪、羽などを剥ぎ取れるという。此れを集めて売るとお金になる、ということだ。素材は剥ぎ取ると何故か消滅せず、残るらしい。モンハンか。
蝙蝠型は羽と牙がとれる。弱いモンスターなので安価らしいが買い取ってくれる。
クライスがお古の、採取用ナイフとやらをくれた。
慣れると普通のナイフより剥ぎ取りが素早く簡単!らしい。
こうして順調に旅は続く。