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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第四章
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二台目の自販機はまだ稼働したばかりだが、売上はぼちぼち。

生徒はどちらかというと学校内の自販機利用率が高いようだ。

マニア?な生徒やCクラスの生徒は外の自販機も使う。

校内と校外の自販機は同じ焼き菓子でも味や種類が違うのだ。

校外の自販機の焼き菓子はクッキーをメインにしてある。

一つの焼き菓子が入っているものより、小さくても数個入っている方が受け入れやすいのではないかという考えの基だ。

校内の自販機の売上減少が心配だったが、微々たるものだったのでひとまずは安心だ。


二台目の稼働と、魔方陣の自主学習で慌ただしく時間が過ぎた。

魔方陣はようやく、トマと寮部屋とイチイの部屋を繋げた。

但し1回当たりの転移可能な物質量はケーキでいうと1カットである。

足りなければ連続して送れば良いだけであるが。

転移距離が伸びれば伸びるほど便利になるので、日々精進だ。


その二つに夢中になり、尚且つスーとの製造に追われ、気がつけば月末テストである。

家事をお休みさせてもらい言語の勉強に一晩注ぎ込んだので、今回は割と良い点数が取れるのではないだろうか。

他の筆記も体術も手応えありで、自然魔法はいつも通りの補習。

残すところ、実習のみだ。


さてこの実習が憂鬱だ。

前回からやたらとオースティンとマーサが絡んでくるのだ。

オースティンは棒術でライバル視しているのだろう。マーサは・・・何だろう。


「イチイ・ディ・プリアレスト」


「はい、何でしょう?」


「貴殿は来年度、どの武術を選択する気だ?」


「まだ決めていません」


イチイからすると当然だ。今はまだ夏期休暇前、半年以上先の話だ。

もう未経験のものがないので、何を選ぶか迷う。

新しい科目が増えてくれれば良いのだが。


「棒術はもうやらないのか」


「やる予定はないですね。やったことのないものをやってみたいので」


「そうか・・・」


あまりにも残念そうなので、つい。


「試合したのであれば、良いですよ。付き合います」


「本当か!?」


ものすごいテンションの上がり具合に、引いた。




そんな訳で内密に稽古場を借りた。

立会は棒術担当教諭だけ、お互いの友人にも秘密である。

マーサが来るとうざい、と思ってしまったのでフェアに行こうとお互い誰にも言わない、と約束をした。そうでないと試合はナシと脅して。



イチイの構えはどこから来ても受け流せるように、中央を両手で持つ。

相手の方がパワーが上だと、イチイの場合はこの構えがやりやすいのだ。

この世界の棒術の一般的な構えは右手で持ち左手を添える感じなので、イチイの構えは珍しい。

一見隙だらけのように見えるが、スピード重視のイチイにはやりやすいのだ。

どうせすぐ持ち方を変えるので何でも良いとも言えるが。


「始め!」


今回は魔法なしの3分間ルールである。

オースティンが先制。

イチイは手を滑らせながら棒を持ち変える。

それが相手からすれば不思議な動きらしく、惑わされることが多い。

受け流すが、流石、力強いので補助魔法なしだと少々きつい。


早めに終わらせた方が良いか。


隙をついて突く。

何度か同じ距離で突くと、間合いを読んでくる。

オースティンの方がリーチが長いため、ぎりぎりの間合いを取ってくる。


強い人ほど、頭を使うんだよな。


だから逆にやりやすいというか。







「勝者、イチイ!」


ああ、疲れた。


「今のは、何だ」


「いやいや戦術を教えちゃ駄目でしょう。秘密です」


オースティンから見れば棒が伸びたように見えただろう。

話は単純で、最初イチイは棒を短く持って突いていた。

距離を測られたところで持ち手を手前に引いただけだ。

相手が距離を読めないと使えない手なので、逆に素人には使えない。距離が読めないからだ。


「それはそうだ。オースティン君、いい勉強になったな。イチイほど面白い棒使いもいないからな」


これ、褒められてない、よね?




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