60・夜の森2
野営地に到着した。
中央に焚き火跡があり、周りには丸太で長椅子が作られている。
「食料は割と取ってあるけど」
麻袋の中身を広げる。
男子が多いので人数分には少ないかもしれない。
「調理はどうする?」
イチイが仕切るとBクラスが反発しそうなので、下手な発言は出来ない。
「別々にしましょう」
マーサ・ラガッツァならそう言うと思った。
だけどこれは実習である。
「私はいいけど・・・ミレイユ先生、減点対象になりますかね?」
「そうね・・・その件に関しては減点しないでおくわ。野営地での食事に関しては、別々に点をつけることにします。ただし、人数の都合もあるので仮眠に関しては協力するように」
そんなわけでBクラスの3人のみ別に調理することになった。
焚き火跡はBクラスに譲り、新しく焚き火を起こす。
大きめの石で囲い、かまど風にする。
「ん~・・・私の好きにやっちゃって良いかな?」
一応許可を取る。
Aクラスは迷いなくOKを出し、ヘレンたちも経験者の言うことを聞く、と賛同してくれた。
まずは焚き火に持参した鍋を置く。
水魔法と熱魔法を使い、湯を張る。時間の短縮だ。
取っておいたむかごをトマに渡す。
「これ、何?」
「むかごっていうんだけど、これを熱魔法で加熱して、皮を剥いてから鍋に入れていってくれる?」
「わかった!」
本当はむかごの下にある山芋も欲しかった。
だけど流石に実習中は無理だと思い、諦めた。
そして今になって気付く。
地魔法、使えば良かったんだと。
「わたくしたちは何をしたら良いかしら?」
「3人くらいは対モンスターの方が良いかな。もうひとりむかごと・・・スーは林檎の芯を取ってくれる?」
「はい!」
その間にイチイは森に入り、獲物を探す。
何故かミレイユがついて来る。
1人離れたのがまずかったのだろうか。
「一人行動は駄目でしょうか」
「あぁ、違うの。面白そうだったからついてきただけよ」
そんな理由で良いのか教職員。
「あちらにはミカルエレファンデ君がいますから」
なるほど、ミカは優秀らしい。
「このグループが戦闘能力で言えば一番心配がないわ」
「戦闘能力で言えば、ですか」
「チームワークが良いとは言えないわね」
「違いありません」
程なく兎を見つけ、仕留めた。
その場で捌く。
「手際が良いわね」
「冒険者ですから」
川もあったので川魚も取る。
あとは帰り道で茸を摘み取る。
兎と茸は下処理をして鍋に入れる。
持参した調味料で味付けし、スープにする。
川魚はそのまま木の枝に挿し塩を振り、焼き魚に。
スーに芯を抜いてもらった林檎には、中心にバターとシナモンを入れ、蒸し焼きする。
主食になるものはないが、スープにむかごが入っているので良いだろう。
火を通している間に、足りない分の食器を作る。
単純に木を削って固定化を掛けるだけだ。
お湯を出し、摘んできたハーブを入れてハーブティにする。
「すごいわ。美味しそう!」
「野営でも夕食が美味しいのって良いわね」
ミレイユも満足そうに頷く。
「ここのグループの夕食が一番美味しいわね」
持ち込み禁止欄に携帯食や小麦などの材料とあったので、調味料の持ち込みも禁止と思ったのか、持ち込んだのは少数だったそうだ。無理もない。
イチイは腹の膨れる食糧ではない、と言い張るつもりで持ってきていたのだ。
「ウサギと魚、デザートまでついた夕食はここだけだもの」
ミレイユの担当以外でいたかもしれないが、この4日間、まともな夕食と摂れていなかったとミレイユが愚痴る。いいのか教職員。