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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第四章
58/154

56・客人

「客が来る」


レンの朝一の発言である。

レン宛ての封書が届き、それをテーブルに置いていた。

ふらふらと起きて来てそれに気付いた途端、俊敏な動きになった。驚いた。

いつも届くものは仕事関係で、封書をみただけで俊敏になるということはない。


「客?」


「あぁ・・・今晩だ。果物が好きなひとだ。持て成してくれ・・・」


ほうほう、果物。

何にしようかな。


お客様だなんて、レンと暮らし始めてから初めてだ。

楽しみである。


「1人だけ?」


「いや・・・護衛が一人ついてくる。2人分頼む」


そうと決まれば早速買い出しだ。









客人は身分の高そうな美女とその護衛の女性が一人。

美女はレンと共通の遺伝子が入ってそうだ。つまり、似ている。


「初めましてお嬢さん。貴方はレンと、どういう関係なのかしら?」


「初めまして、イチイ・ディ・プリアレストと申します。弟子兼家政婦をさせて頂いてます」


「そう・・・」


値踏みされるような視線を投げられる。威圧感のある人だ。

ワイングラスを傾ける様は絵になる。さすが美女。


「あら、これ、良いわね。どこのお酒?」


「イチイが漬けた自家製です」


「まぁ・・・」


美女が飲んでいるのは自家製の果実酒である。

近くの森で捥いだ桃を漬けたものだ。

他にも林檎やレモン、梅、葡萄、洋梨なんかもある。


「これも美味しいわ」


前菜は鴨肉とオレンジ果実を使ったサラダとバーニャカウダーである。


「良い腕だわ。料理人なの?」


「料理人というか・・・菓子職人です、ひよっこですが」


学校に行ってなくてもあまり働いてなくても金銭が絡めばプロだと思う。


「そう・・・デザートが楽しみね」


第1の皿はラザニア。

パスタもソースも自家製だ。


「面白い形ね」


味自体は普通の組み合わせだが、ラザニアスタイルはこちらでは見かけない。

薄くて大きいパスタを見かけないといった方が正しいか。


第2の皿は白身魚のグリルである。

これはイタリアンから外れて炭火焼きにした。

ソースには醤油を使って和風なイタリアンだ。


「これも面白い味ね、気に入ったわ」


付け合わせはマッシュポテトマヨネーズ風味と2色のミニトマトのマリネ。


そしてデザートにはフルーツタルトとカカオのお酒だ。

フルーツタルトは土台にアーモンドクリームとカスタードクリームを、盛り付けは新鮮な果物をふんだんに使った。

カカオのお酒も甘味を加えていないので、デザートにぴったりなのだ。





「ふふ・・・ふふふふ・・・・」



突然笑い出したので驚いた。

いくら美女でも不気味だ。



「大変、気に入りました!貴方、レンの嫁にいらっしゃいな!」


「はいぃ!?」


「母上・・・」


「母上ぇ!?」


どうみても30手前な美女が母上?いくつの時に生んだんだ。

いやこの世界ならそれもありなのか?いやムリだろ。



「こんな良い娘がいるから、結婚しなかったのね!良いわ。認めます!」


認められても困るんだが。


「・・・母上、何か用事があったのでは」


「あぁ、そうでした。ロウェナのところに出産祝いを持って行って頂戴」


これよ、と宝石細工を取り出す。


「勿論、夏期休暇に入ってからで良いわ。あの子も貴方に会いたがっているし・・・よろしくね」


「はぁ・・・今度は何を企んでいるんだか」


「そうそう、イチイ、今度わたくしの国に遊びにいらっしゃい。歓迎するわ」


「母上!」


「何ですか、別に良いでしょう?ね、ぜひいらしてね」


「はい・・・機会があれば、是非」


「約束よ!」


イチイにはよくわからないまま、嵐は過ぎ去っていった。





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