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ヒツジ商会の売上、初月金貨1枚。
次月なんと、金貨3枚也。
因みにこの額は2割の税金を支払ったあとである。
厳密にいうと原材料費を引いていないので、利益自体はもう少し低いのであるが。
そんなわけでヒツジ商会は順調です。
学校長の許可をもらい、城下町の菓子屋が自販機の偵察に来たりしていましたが。
何か茫然としていましたが。
そんでもって、何故かの賄賂?やって来ました。
金銭送るよりよっぽど効果的な賄賂だな。
そう、カカオが送られてきたのです。
カカオといっても、カカオ豆そのものではない。
要するに製菓用のスイートチョコレートである。
リリスフィアの特産品で、そちらの方ではカカオという名で流通しているらしい。
レンがカカオというのでイチイもカカオと言っているだけである。
「嬉しいけど、これ、どうしたの?」
「ヒツジ商会のファンで、弟子入り志望だそうだ」
「弟子・・・入り・・・?」
「雇えば良いんじゃないか?」
正直なところ、雇う余裕はない。
というより必要がない。
お菓子のストックは週に何度か大量に作り、保存魔法をかけている。
同じものを大量に作るのは、数回に分けて作るより、かなり楽なのだ。
魔法万歳。
今のところ売り上げが何倍かになっても余裕がある。
どうせ人手が増えるなら、もっと事業を大きくしたい。
だけど1人増えたくらいじゃなぁ・・・。
「ん~・・・」
長い目で見れば人を育てるのは良いことだが、その人がどういうつもりなのかわからないと何ともいえない。
とにかく。
「会ってみよう」
「あれ、イチイ。どうしたの?」
「トマ。あのさ、えーと・・・あー・・・スーってコ、いる?」
長い名前は忘れました。
「スー?えー?」
「はい!スーです!」
トマとイチイの間に、突然ちびっこが現れた。
「あ、この前の」
「!王子さま」
「王子様?えっと、君がスー?」
「はい!王子さま、スーに用事?」
「うん、用事。ちょっと良いかな?」
「良いです」
その様子を黙ってみていたミカとトマも付いてくると言い出し、皆でイチイの昼寝スポットへ行く。
「ではまずこちら。どうぞ」
スーにカカオのシフォンケーキを渡す。
「カカオ、ありがとう」
「どういたしまして!王子さま、ヒツジ?スー、弟子入り、良い?」
「そのことなんだけど・・・弟子入りって、お菓子の作り方が知りたいってことかな?」
「知りたい。ヒツジで働く、ずっと」
「ずっと?」
黙っていたトマとミカだったが、埒が明かないと思ったのか、ミカとスーがイチイの知らない言語で話し出す。きっとリリスフィア語なのだろう。
再来年はこの言語を勉強しないとならない。難しそうだ。
「魔法学校卒業後、ヒツジ商会で働きたいらしい。カカオは弟子入り料だから、弟子入りさせてくれるなら定期的に送ってもらう、と」
「弟子入りと働くは別モノってこと?」
「お菓子は作ったこともないから、きっとまともに働けないので、在学中に少しずつ教わりたいと。これが弟子入りだな。それで卒業後、ヒツジ商会で働きたい、と」
「ん~・・・ヒツジ商会、いつまであるかわからないんだよね。まぁ私が辞めるとき引き継いでもらえばいっか」
意外と簡単に決まってしまった。
在学中は弟子入りということで菓子の作り方を教える。
カカオは定期的に貰える。
卒業後、ヒツジ商会で働いてもらう。
その時にカカオは取引を結べば良いだろう。
卒業を目途に事業を拡大するのもよいかも知れない。
イチイが元の世界に帰るとき、スーに引き継いで貰えば良い。
もしスーが独立するならそれでも良いし。