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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第三章
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春期休暇

さて、あっという間に春期休暇である。

冬期休暇はホルンへ行き、栗拾いと狩りを楽しんだ。

春期は近場のクエストを受けることくらいにしよう。

夏も冬もレンが出掛けられなかったので、春くらいは、と思ったのだ。


レンの仕事中は今夢中になっている空間魔法の練習でもしよう。

後期はずっと練習していたので大分精度があがり、四次元ポケットミニサイズくらいのものならできるようになったし、元があれば空間を広げる(部屋が倍になるとか)ことも、空間を切り離すことも出来るようになった。


2年生になるのだし、復習と予習をするのもよいかも知れない。

特に語学は一年ごと変わるため、今年から外国語だ。予習して損はない。

学校の図書室は休暇中も開放されているため、利用できる。

色んな本を読むのも楽しそうだ。


レンが部屋に籠り切りになってしまったので、おにぎりを置いて図書室に出かけた。

2年からの語学である、隣国ヘーリング王国言語教本と補助魔法の本、商法の本を読むことにした。

補助魔法の本は斜め読みし、応用や知らない魔法だけをピックアップしていく。

語学の本も斜め読みしてみたが、難しすぎる。じっくり読まないと理解できそうもない。

とりあえず後回しにして、商法の本を読む。


イスフェリア王国の商人ギルドから発刊されているようである。


商売をする場合、まず商人ギルドに登録をする。

これは流れでも小売りでも飲食でも仲卸でもとにかくすべての商売とある。


代表者の名前、所在地、業務内容の登録。

税金は売上の2割。

この売上の2割って原価や消耗品の費用はどうなるのだろう?


城下町ならば商人ギルドを通し国へ、そのほか地域は領主に支払う旨が記されている。

領主はそのうち2割を国へ納める。


因みに元の世界でいう住民税は給金の一割となっている。

領主によって違うが、農民は農作物で納めるところもあるようだ。

冒険者は税金の抜かれた報酬が提示されているため、あまり考える必要がない。

依頼主の方が税金を予め抜き、冒険者ギルドに預けるのが一般的だ。



イチイは考える。

イチイの借金は現在300金貨。

手持ち金貨は約130枚。

残りは120枚なので、2年ほどこつこつクエストをこなせば、イチイのレベルならば返せる。


もしも商売を始めたとすると、150金貨稼がなくてはならない。

資本金もいるので、それ以上だ。


「現実的じゃないな」


そもそも飲食店は単価が低い。

安いものだと穴あきが1枚、高くても城下町で平民が食べるような食事など、銀貨1枚というところだ。

学校もあるので毎日夕食の時間と休日2日として、週に金貨1、2枚稼げれば上々だ。

月に4~8枚として、×12、1年間で96枚。2年間で192枚。

2年という月日は同じだが、商売は稼げるという保障がない。

上手くいけば192枚、下手をすればマイナスの可能性もある。

拘束時間も長いので時給換算すると大分違う。


「作るだけ作って売ってもらうとか・・・委託販売はないよな」


菓子工房に菓子の持ち込みなんて出来ないだろう。

人を雇うにしても給金がかかる。

一般的労働者賃金は月に銀貨が10枚程からだ。

物価が安いのもあるが、大抵は家族総出で働くので実際の収入は銀貨20枚程である。

銀貨10枚分以上の純利益が出るならばそれも良いが、商売は蓋を開けてみないとわからない。


「んー・・・」


当たり前だがインターネット販売もないのに、人手の要らない商売などないだろう。

大物売りでガツンと利益を出すか、出資だけしてマージンを頂くか、何かの貸し出し料とか、金貸しとか?

とはいっても資産という資産は持っていない。

金貨はあるが貸して返ってくるかもわからない、というか法律がよくわかってないので難しいだろう。


「お菓子屋さん、やりたいなー・・・」


これに関しては急ぐつもりはなかったが、商法の本など読んでしまい、気持ちが高ぶったのである。


「あ!」


良い事を思いついたイチイは勢いよく立ちあがり、レンのもとへ走った。

商法の本はもちろん忘れずに。







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