夏期休暇明け
夏期休暇明け、初日。
日本で言えば9月1日のようなものだが、夏休みが2ヶ月あったのでどちらかと言えば大学、10月1日になる。
こちらでは始業式といったものはないらしい。
午前午後ともに自然魔法の授業で、夏期休暇での成長振りを見たり復習したりするようだ。
相変わらずのイチイは、教室の片隅でぶつぶつと呪文を唱える。
ほぼ全員、前期で各系統の基礎は終えているため、後期は補助魔法に移る。
呪文を使うと補助魔法も使えないのだが、レンが補助魔法にそこまで精通していないため、きっと知らない魔法を習えるだろう。楽しみである。
放課後はヘレンたちとカフェでお喋りに誘われた。
「色気より食気よね」
と言われ、お土産にそれぞれの出身地の名産品を頂いた。
イチイ以外には食べ物ではなく髪飾りや栞や布で、女子同士のお土産とはこういうものなのかと知ることが出来た。
対してイチイの彼女らへのお土産は手作りジャムと茶葉なので、何というか、少々恥ずかしい。
色気より食気ですいません。
最初は夏期休暇の避暑の話だったり、今若い女性の間で人気のある髪飾りの話だったり。
やはり年頃の女の子、学校のどの男の子がかっこいい、という話にも発展する。
正直イチイには興味がない。
というか顔をしっかり覚えるまで、ほとんど同じ人に見えるのだ。
わかりずらい、西洋人風。
残念ながらトマの名前はあがらなかった。
まだ子供なので仕方がないのかもしれない。
この年頃の女の子は年上好きが多い。
どうやら学校で一番人気のあるのは3年生の先輩で(名前が長すぎてわからなかった)次が2年のケイトだという。たぶんだけど。
ジークフリード先輩と言っていたのでおそらくケイトだろう。
自分たちの学年ではミカも人気がある。
年齢はイチイより一つ下ではあるがしっかりしているし、何よりこの学年はイチイより年下が多い。
年齢は10代であれば良いとのことだったが、1年生の半数はイチイの一つ下のようだった。
ヘレンたちもイチイの一つ下だ。
意外なところでレンの名前も挙がった。
レンの授業は厳しいことで有名なのに、不思議だ。
1年は受け持ってないからかもしれない。
それにしても友達が少ないとはいえ、殆どの名前が上がるなんて、美形率高いんだな、と思う。
トマはまだ幼いだけで、成長すれば人気も出るだろう。
プリアレスト伯爵家の兄たちは、皆かっこいいと市井で噂されていた。
「イチイは誰が好き?」
これほど困る質問はない。
「特には・・・」
「じゃあどんな人が好みなの?」
と、どんどん掘り下げられていく。
最終的にはイエスノーになっていて、包み隠さず、といった感じだ。
実際気にしたこともないことばかりだったので、自分でもそうだったのか、と思うことが多々あった。
元の世界で彼氏がいたこともあったが、短い付き合いだったし、よくわからない。
でもとりあえず。
「食べることが好きじゃないと気が合わない」
それだけは確実だ。