36
テストのあった翌週、上位者が張り出された。
人だかりが出来ていたので、とりあえず後回し、と教室に向かう。
片隅の席でいつものように大人しくしていると、何故か視線が集中する。
何?
視線を追いかけると目を反らされる。
え、なにこれ。いじめ?
受けて立つけど。
クラスのリーダー格っぽい女子が怖い顔してこちらにやってくる。
マジでいじめか。決闘か?
「ちょっとアンタ、どういうこと!?」
「はい?」
お嬢さん、主語をお願いします。
「総合点数、549点よ!?ありえない!!」
549点。
まさかそこまで取れるとは思ってなかったけど、不可能って程ではないような。
「何故、ありえない?」
「だってアンタ、自然魔法補習でしょうが!!」
「まぁ・・・」
やはり補習で50点も貰ってしまったことが悪かったのか。
しかし今更どうしようもないんだが。
「補習でたまたまうまくいって、50点もらえたんだ」
そもそも自然魔法の実技は減点方式である。
ほとんどの生徒が高得点をもらっている筈だ。
その中で50点はそんなに目立たないと思う。
「50点・・・高いわね・・・」
そういう女子生徒は100点らしいが。
自然魔法実技に関しては100点がごろごろいる。
「それにしても!おかしいじゃない!!」
大声を出すからクラス中の注目を浴びている。
「その計算だとアンタ、他の教科ほとんど100点じゃない!!」
「そうだけど?」
それが何かおかしいのだろうか。
中学の最初の中間テスト、高得点500点に近い生徒は半数を占めていた。
最初のテストなんてそんなものだと思う。
「アンタ、もしかして成績表、見てない?」
「見てないよ。人が多すぎて」
「アンタ、1位なのよ」
「は・・・」
1位。
いまちょっとイチイが1位って思った。オヤジギャグに分類されるんだろうか、とちょっと現実逃避をしてみる。
「マジ、で?」
騙されていたら嫌なので成績表を見に行く。
確かに、1位だった。
2位のミカルエレファンデ・フィオ・リオレサーエルくんは548点だったので僅差ではあるが。
「1位・・・」
素直に嬉しい。
内容がどうであれ、クラスの女子との初会話も実は嬉しい。
「アンタ、自然魔法以外は優秀なのね」
「そうみたいだね。これは、嬉しい」
自然に笑顔になるってものだ。
「アンタ、笑えるのね」
「はい?」
「アンタいつも無表情だもの。黒髪だし作りものみたいだったわ」
「はぁ・・・あ。アンタじゃなくて、イチイ。イチイ・ディ・プリアレストっていうんだけど」
「知ってるわよ、有名人!成績表も見たんだから知ってるに決まってるでしょ、イチイ!」
キタ、名前呼び――!!
「私の名前は知らないでしょ。ヘレンよ。ヘレン・アルフレシア」
どうやら「ディ」はついていないらしい。
「子爵の家だからCクラスなのよ」
「いつも一緒にいるブロンドがカトレア、ブルネットがメグよ」
「まぁいいわ。今日一緒にお昼しない?」
入学から一月以上たって、やっと、女子の友達ゲットかもしれない。