初めての月末テスト2
名前を呼ばれ、教室に入る。
Aクラス担当教諭・セルゲイ、Bクラス担当教諭・サイモン、Cクラス担当教諭・ミレイユと3人が待ち構えていた。
緊張する。
「まずは火種から」
呪文を唱えるが、やはり火種は現れない。
「次は水」
呪文を唱えるが、やはり水は現れない。
6つ系統全部の呪文を唱えるが、結局魔法は成功しなかった。
補習である。
泣きそう。
「・・・魔法を使えもせずによくこの学校に入ったね。魔力は高いようだが・・・」
「セルゲイ先生!」
咎めるようなサイモン視線に、セルゲイは肩を竦めた。
「その・・・呪文が苦手で・・・でも魔道具と魔方陣、どうしても覚えたくて」
「魔道具と魔方陣は呪文要らないからなんとかなるよ!」
サイモンのフォローが痛い。あれデジャヴュ?
「イチイは他科目は優秀ですし・・・それに授業中、呪文、頑張ってますし」
ミレイユもフォローしてくれるが、セルゲイの視線は冷たい。
「まぁ良い。しかし補習のしようもないんじゃないか。どうする」
確かに補習と言えば時間いっぱい出来るまで練習、プリントなんだがこの場合はどうするのだろう。
「それなんですが・・・」
ミレイユが言いかけたところで教室のドアが開いた。
「遅くなりました、申し訳ない」
レンが、何で。
「僕も補習に参加する。というか、」
レンが教室空間を隔離する。
外部からの侵入、防音などの効果がある。
「さて、教諭方。こちらの生徒・イチイは僕の弟子です」
いきなりのカミングアウトに教諭はもちろん、イチイも絶句した。
「貴方の弟子、この落ちこぼれが!?」
セルゲイの言葉にレンの眉間がぴくりと動いた。
怖い。
「落ちこぼれ、ね。僕に対する愚弄かな・・・」
ぽつりと呟いたレンにセルゲイの顔色は真っ青になった。
カワイソウに。
「イチイ、セルゲイ教諭に攻撃魔法を放ちなさい」
「は!?」
「良いですよね、セルゲイ教諭。落ちこぼれの生徒の攻撃魔法くらい、勿論防げますよね?」
「イチイ、問題ない、やりなさい」
「は、い・・・」
「僕が防ぎます、7割の力で」
「はい・・・」
教師を攻撃とか良いのだろうか。
まぁしかし言われた通りにしよう、だって補習だから。
さて。
イチイは掌を天井に向けた。
教室の天井は、高い。
魔法の練習をするので当たり前なのだが。
イメージする。
室内なのでいつもより小型。
炎と氷、2匹の龍。
攻撃しにくいので、セルゲイの周りをくるくる回らせよう。
「来い」
その圧倒的な魔力に肌がビリビリする。
教室の隅に逃げたサイモンとミレイユはそう思った。
セルゲイは情けないことに気絶しているし、レンはうすら笑っていて怖いことこの上ない。
こうして、補習は終了した。
因みに補習は補習なので点数は半分、50点でした。
補習にしては良すぎる点数である。